ちょっとした訓練で誰でも物語が作れるようになる「プロットツイスト」を知っていますか?

soreyuke_logo13こくぼしんじです。
人様の悪口なんて一言も書いてないのに、なぜかたびたびツッコまれまくって炎上する謎連載「それゆけ!ライターズ」の時間が今週もやってまいりました。
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【構成編】の第3回は「プロットツイスト」。さっそく行ってみましょう。
これまでのそれいけ!ライターズはこちら

一体どのぐらいのレベルで「プロ」って呼べる?

連載も第13回になるんですけど、今回の本題に入る前に1つ。けっこう大事なことを伝え忘れていました。
過去、受講者さんからよく聞かれた質問に、
「一体どのぐらいのレベルでプロって言えるんですか?」ってのがあって。
まあ、文学作品は一応「芸術」ですから。別に面白さの物差しは1つじゃないし、最終的に読んでみて面白ければ体裁なんかどうでもいい……そういう意見もあるでしょう。それはそれで正しいかと。
しかしながら一方で、読者さんからお金をもらう以上、せめてコレぐらいはできていないと……という暗黙のラインが「ある」と言えばあります。それは何か。ズバリ行きましょう。
(1)魅力的な主人公や脇役がいて、なおかつ作中で彼らの魅力を引き出せている
(2)設定や登場人物の心の動きに違和感や破綻がない
(3)プロットツイスト(※)がある

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……というのは極論ですけど、要は「どんでん返し」。
「Aだと思わせておいて実はB(読者の予想と正反対だった)」、「a(小文字)だと思っていたらA(大文字)だった(読者の思いもよらぬ追加情報が明かされる)」といったように、読者の予想を良い意味で裏切る展開の妙を指します。
基本、新人賞などの上位審査では、この3つが重点的に見られています。

「物語の構成」を学ぶのは何のため?

で、上に紹介した3つのうち、(1)と(2)については第10回までの講義、および2冊のKindle本でほぼ全て語り終えています。
(1)は構成とは別に存在するキャラ設定と演出技法の話ですし、(2)はそもそも論として、主人公の気持ちから物語を生むクセを付ければ、起こり得ないミスですから。
したがって、残る最大の問題は(3)のプロットツイストです。
このプロットツイストだけは、キャラを設定し、動かしているだけではなかなか作れません。読者より1つ上の視点、つまり物語全体を俯瞰する「神の視点」で仕込まないと、なかなか作れないんです。
せっかく構成を学ぶのなら、ぜひプロットツイストをモノにしましょう。

初心者でも作りやすい「プロットツイスト」基本3パターン

実際のところプロットツイストというのは、オレが身につけてきたマンガの作劇ではあまり詳細に解説されていません。
そもそもマンガというのは、作る際にもあまり先のことを考えず、毎週必ず見せ場を作ってなんぼというか、悪く言えば極めて場当たり的に物語を構築していくジャンルですから。
逆にプロットツイストの技術や理論がもっとも発達しているのは、何と言ってもミステリー。そもそもがプロットツイストの面白さを楽しむ(?)ジャンルですからね。
とはいえ、プロットツイストの巧みさというのは1つの「センス」「才能」でもあるので、誰でもカンタンに身につけられるモノではありません。実際問題、オレはあんまり得意じゃないです(笑)。
こう言うと、得意じゃないのに書くなよ! と怒られそうですが。
それでも方法論として書くのはなぜかというと……仕事上のしがらみで、あるいは面倒だけどやらなきゃいけないという事情から、すごく簡単なプロットツイストの作り方を覚えてしまったからです。
そこで紹介したいのが、以下3種類の基本プロットツイスト。これだけなら、ちょっとした訓練次第で誰でも作れるようになります。

(1)最初、嫌なヤツだと思っていた相手が、実はいい人だった or その逆

例1:キツいことばかり言ってくる皮肉屋で嫌なヤツかと思ったら、実は彼なりに自分のコトを心配してくれていた。見えないところではフォローするなど、いろいろ気遣ってくれていた。
例2:一見していい人に見えるが、実は悪人だった。上の逆。

(2)主人公が良かれと思って行動した結果が裏目に出る or その逆

例1:好きな女の子がヤンキーっぽいので、努力してファッションなどを合わせようとしたら、逆に「真面目なトコが良かったのに」と嫌われてしまった。
例2-1:ダサいと思われるのを覚悟でガムシャラにがんばったら、その姿が一番カッコイイと言われた。
例2-2いくら手を尽くしても上手くいかず、最後、もうどうなってもいいやと半ばヤケクソで講じた一計が正解だった。

(3)調子に乗ってブイブイ言わせていたところで、弱点が明らかになる or その逆

例1-1:無敵の特殊能力を身につけて調子に乗っていたら、それは引き換えに術者の寿命を縮めるモノだった。
例2:どうしようもない欠点(弱点)を、逆に利用して事態を好転させる。たとえば感受性や男女の機微に疎い唐変木であるがゆえに、上司に何度怒られてもへこたれずに目的を達成できた、など。

3×2パターンで合計6つ! この程度の引き出しを持っていれば、プロットツイストの巧みさで勝負するミステリー作家を目指すのでもない限り十分です。
これ以上のプロットツイストを仕込みたいなら、もう小説や映画に数千、万という単位で触れてくださいというコトになってしまいます。

プロットツイストはどこに仕込む?

誰が言ったかは存じませんが、物語の本質をよく言い当てたこんな言葉があります。
「物語には2種類しかない。+が−になる物語と、−が+になる物語だ」
この2種類のうち、多くの読者に愛されるのは、やっぱり後者。「−が+になる物語」です。つまりハッピーエンド。そりゃあ、誰だって好き好んでフィクションに触れて落ち込みたくないですからね。落ち込むような展開は実人生だけで十分です。うん。

何が「うん」なのか自分でもわかりませんけど、続いて逆のパターン——
「+が−になる物語」が許されるのは、物語のテーマにお客様に対しての教訓やメッセージが含まれている場合だけ
例を出すなら、童話の『アリとキリギリス』。日頃からコツコツ頑張ってない奴は、いざって時に痛い目を見るんだぞ! みたいな教訓を語ることが目的になっている場合です。
そう考えると、上述したプロットツイストを仕込める場所は、そのパターンによってある程度決まってしまいます。

+が−になるプロットツイスト

物語のラストを「−」にはできないので、このタイプは途中に仕込みます。具体的には「承」と「転」の間。物語のちょうど真ん中あたりです。第11回で紹介した「承」から「転」への移行にあたるのが、まさしくプロットツイスト。順調だった努力が裏目に出て逆境へ転じ、その後、主人公たちはさらに追い込まれていく……という風に使うのが王道でしょう。

−が+になるプロットツイスト

良い方向「+」に転じていくプロットツイストは、物語の方向を結論づけるので、仕込むなら終盤のクライマックスに配置するのが王道。そのままハッピーエンドできるので。
ただし例外もあります。たとえば映画『プライベートライアン』など。
序盤からひたすら陰惨かつやってられない展開が続く同作品では、中盤のプロットツイストでとても救われた気持ちになれます。もっとも、その後は再び主人公たちが大ピンチに陥るのですが。
……とまあ、よくあるパターンや挿入方法などは説明できるのですが、プロットツイストを本気で身につけようと思うと、1つだけ、避けられない本質的問題にブチ当たります。

日頃から「人間を記憶する」クセを付けるのが、プロットツイスト上達のコツ

プロットツイストを上手く作るために、読者があっと驚くようなアイデアや超展開を用意する必要はまったくありません。それが出来る人はアイデアを用意すればいいし、出来ないならできないで、プロットツイストの使用は基本レベルにとどめ、あとはキャラ設定やセリフの魅力で勝負するというやり方も当然アリです。
とはいえ、最低限のプロットツイストを用意するためでも——たとえば良い人に見えた人物が実は悪い人だった……という描写をするだけでも、以下がイメージできなくてはいけないワケです。
「善人を装う悪人というのは、いったいどんな言動をするのか?」
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そこがイメージできなかったら、善人を装う悪人なんて描きようがないですよね。
また、「弱点を逆利用する」というプロットツイストを作る際であれば、作者には、弱点すらも別の角度から良い面として捉え直すような柔軟な志向が求められます。
要するに、日頃から人間の二面性やら物事の多面性に着目して、さまざまなパターンをストックしていないと、プロットツイストを作るのは難しいというコト。
たとえば友達を観察するなら……
・仲良く話している相手が、ケンカした時にはどう変貌するのか。殴りかかってくるのか? それとも一切口を聞いてくれなくなるのか?
・自分といる時と、恋人や家族といるときには表情や言動がどう変わるのか。デレデレなのか? 内弁慶なのか?
・何を好み、何を嫌うのか。
・どこを褒められると喜ぶのか。あるいは逆に、どこをけなされるとキレるのか(笑)。
・成功する時はどういう一面が前に出て成功するのか。失敗する時はその人のどんな部分が裏目に出て失敗するのか。
特に最後の、成功と失敗を分けるその人の「潜在的本質」を見抜けると、プロットツイスト作りに応用できます
たとえば、仕事では超夢中、休日にも働きまくっているという人は、一面ではスーパービジネスマンですけど、裏を返してプライベートに目を向ければ「常に家族を放ったらかしている」というコト。よって、もうすぐ成功を掴むという直前で妻や子供に見限られてピンチに陥るかも……といったように、その人の長所と短所が織りなす展開を想像するだけで、プロットツイストの効いた物語になってしまうワケです。
しかしながら、人間観察を作劇を応用するためにもっとも大切なのは、分析や洞察ではありません。むしろ、主観(情熱的な生き方)と客観(洞察、分析的視点)の使い分けであり、その両者をつなぐ「記憶」という作業です。
具体的にはこんな感じになります。

人前にいるとき——主観ベース

とにかく目の前の会話を楽しんでください。自分を突き放したりカッコ付けたりをなるべくせず、自分の人生の主人公然として楽しむ。意識してバカになりましょう。
結局はその方が、他人の感情や面白いリアクションを引き出せます。あなたがバカを丸出しにすれば、周囲も安心(油断)して感情を出してきますから。だいたい、自分からアクションを起こさずに他人の感情を盗み見ようなんて考えが甘い。自分を出さない限り、他人を覗くこともできないんです。
ただし、バカ丸出しでいいんですけど、1つだけ忘れてはいけないこと。それが「記憶しておくこと」です。表情やセリフ、声色などを、可能な限り。

1人になったとき——客観ベース

1人になったときにはぜひ「賢者モード」に入ってください。友達と別れたあとの電車の中、あるいは自分の部屋などで思い出しながら、友達の発言や表情にはどういう意味があったのか、じっくりじっくり分析する。
その上で、友達をキャラに見立ててシミュレーション(第10回参照)してもいいでしょう。あの友だちは、こういう状況に置かれたらどんな言葉をしゃべるかな? どういう反応をするかな? いろいろ友達の「キャラ」を転がして楽しむようにすることで、キャラクターの造形技術も上がります。
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ちなみに、作家が友人や知人をモデルにした登場人物を作る場合、ほぼ間違いなく、友達を使ってこういうシミュレーションをしているようです。少なくとも、オレの少ない作家仲間同士では「そうそう」「やってるやってる」って感じかな。
というか高校時代には「お前でマンガ描いたから、読んで」と言われたコトも。

唯一オススメできる「心理学本」はコレだ!

暴力から逃れるための15章
ギャヴィン ディー‐ベッカー (著), Gavin De Becker (原著), 武者 圭子 (翻訳)
評価:★★★★★,3件のレビュー

ストーカー、レイプ、家庭内暴力…。暴力や犯罪は突然ふりかかるのではない。誰にでも暴力を事前に予知し回避する能力がある。被害者の具体的なケースから、危険を未然に察知する能力について解説する。

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もはやプレミア本なんで、amazonで買うにはハードル高すぎかもしれないけど……図書館で見つけてでも読んでほしい一冊。心理学というよりは危機管理の入門書なんですが、DVにさらされて育ってきた作者が、ストーカーや殺人鬼の思考回路をこれでもかと紹介しています。
これぞ最強の「生きた心理学」。読めば間違いなく、人間を描く際の幅が広がることでしょう。

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)
1974.10.12.うまれ。
東京都台東区の山谷地区出身。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、専門学校や声優養成所の事務員として働きながら漫画原作者に師事し、シナリオライターに。コンビニ向けのペーパーバック漫画やゲームのシナリオライターとして活動する。現在は通常のライター業も請けつつ、KDPでオリジナル作品を発表中。他に、自分と同じKDP作家を支援する活動も行なっています。
→『きんぷれ!』(http://kin-pre.com
Kindle本「DISTANCE (がんばれ!アクターズ戯曲シリーズ)」好評発売中

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