よくわかるストーリー構成の作り方「基本編」起承転結の承ってなんじゃい!!

soreyuke_logo11こくぼしんじです。
アニメじゃないんですけど、「第2期」といったところでしょうか。今回からしばらくは「構成編」として、キャラクターを使ったストーリー作りの話をします。
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まあ、先日発売した本ブログの総集編(&加筆修正版)『それゆけ!ライターズ』Vol.01【設定編】で、「ストーリーなんて後でいい!!」とバッチリ書いてしまったんですが。
そんないい加減な考えの男が語るストーリー論でよければ、今後ともよろしくお願いいたします。「狙いはいい加減だけど、なぜか的は外さない」を目指してますんで。では行きましょう!
これまでのそれいけ!ライターズはこちら

起承転結の「承」が何も分からなくて……夏。

シナリオの作法が書かれた本などに必ず登場するのが『起承転結』。
しかしながら、オレ、自分がバカであることを隠しませんけども、これらの『起承転結』の説明を読んで、まともに理解できた試しがありません。
起承転結の起、転、結は分かるんですよ。読んで字のごとくですし。でも、「承」はシナリオライターになった以降も、ホントに長らくの間、分からなかった。
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……とそこ、怒らない(笑)もちろん、今は理解しているつもりです。ただ、分かったのはシナリオ入門書のおかけではないということ。
今まで培ったシナリオの技術を自分で再編集する中で、近年ようやく説明できるようになったのです。たとえば、どの本もだいたい、こんな感じで説明されてますよね。Wikipediaではこう。

承 → 「承」は「受ける」を表し、「起」で提起した事柄を受け、さらに進めて理解を促し、物語の導入である「起」から、物語の核となる「転」へつなぐ役目を果たす部分。
ここは単純に「起」で紹介した物語を進めるだけで、次に続く「転回」または「展開」が誤解されることがないように備えておくものであまり大きな展開はないのが普通。

WikipediaをDisったところで何も始まりませんけど、オレは言いたい。
この説明、ホントに分かって書いているのかと。
「つなぐ役目」っていったい何でございますかと。

こんな感じで、『承』の部分を「『転』に向けて盛り上げていく箇所」とか説明してあると、いつも自分のバカさを棚に上げて、著者を殴りたくなったモンです(笑)。
その「盛り上げ方」を知りてえんじゃねえか!! と。

「正しい起承転結」を教えようじゃないか!

でまあ、これだけあれば一応の起承転結をなすというところを、できるだけカンタンに説明します。
【起】
お客さまが物語の世界に入るために必要な情報を提供する箇所。
・舞台は現実世界なのか? それとも過去未来、あるいは特殊な異世界なのか?
・主人公はどんなヤツなのか? 周囲にはどんな脇役がいるのか?
・どんな状況の中で、何をしたい、どうありたいと思っているのか??
そして、起の最後では主人公が行動を開始するきっかけが設けられる。
(例えば、敵のギャングに大事な妻子を殺され、復讐するしかねえ! とか)

【承】
起で紹介した主人公の意志(ハリウッド式で言うと「劇的欲求」)に基づいて、誰もが納得するであろう最初の「当たり前な解決行動」をとっていく箇所。
『起』でセットアップしたのが「スキな女の子を落とす」ことなら、プレゼントを買うためにアルバイトを始めたり、通学路を合わせたりするのがここ。
「天変地異から家族と共に何としても生き延びる」ことが目的なら、まず救援隊に連絡を取ろうと試みるのがここ。
「金を返さない業突く張りから貸金を回収する」のが目的なら、まず事務所に押し掛けて念書を書かせたり、法務局へ行って担保物件の謄本を洗ったりするのがここです。

【転】
「承」で主人公が善かれと思ってやってきた行動が、裏目に出る。この「承でやった努力が裏目に出る」というのが「転」の特徴です。
簡単な例で言えば、犯人と思って懸命に追っていた相手は無実で、その間に真犯人は別人に変装して逃亡してしまった、とか。
オー・ヘンリーの名作『賢者の贈り物』で言うなら、彼氏が彼女に自慢の長い髪をとかすクシを買うために懐中時計を売って金を作ったら、一方の彼女はその髪をバッサリ切って売って、代わりに彼の懐中時計用の鎖を買っていた、とか。

もがけばもがくほど悪循環に陥り、ここで最大のピンチを迎えるのですが、主人公の諦めない姿勢によって別の解決策が生まれます。
【結】
見事に問題が解決し、エンディングへ。なお、エンディングの扱いはマンガと他メディアで多少異なります。
映画や一般的なストーリー小説だと、ストーリー開始当初の(主人公の)欲求が、より人間的かつ普遍的な満足に変わったりします。
最初はとにかく「金を儲けたい!」と思っていたのが、一連のすったもんだを経て、エンディングでは「家族の大事さ」を再認識するとか。ずーっと派手な美人を追いかけていたけど、最後には、いつもそばに居てくれた幼馴染の大切さに気付くとか。
ハリウッド系の用語では、これを「WANTSがNEEDSに変わる」と言います。

マンガのエンディングだけが例外になる理由

一方、マンガの場合だけは、物語を経て主人公の考えが変わるコトってあんまりなく、大体は主人公が初志を貫徹、当初の目的を達成して「めでたしめでたし」で終わります。
コレには理由があって。
特に連載マンガの場合、主人公の目標をエンディングで変わるようなモノ(人としてちょっと首をかしげちゃうような目標)に設定すると、連載序盤で読者から適切な応援を受けられず、容赦なく打ち切られてしまうんですね。
よって、マンガの場合だけは主人公が最初から最後まで変わらないコトが多いです。むしろ逆に、ネガティブだった周囲を主人公が変えていくなど、周りに影響を与えていきます。
「このまま終わると思ってたクソッタレの人生を、○○(主人公)、お前が変えてくれたんだ」とか。「お前(主人公)がいたから、ここまで来られたんだ!」とか。あるいは主人公が最後の決戦で致命傷を負ってしまい、みんなでその回復を待つとか。
以上、マンガだけはどこまで行っても、脇役みんなで主役を「おみこし」して終わるって話です。
※演出技法「おみこし」については、第4回第6回で詳しく解説しています。

結局、「承」って何なのさ?

おそらく上で行った【承】の説明でも、まだそんなにしっくり来ないと思います。何しろ「承」の「承」たるゆえん、肝心な部分をまだ話してないですから(笑)。
「承」でもっとも大事なのは、そこ(承)で主人公たちがとる行動の数々を、「転」ですべて裏目に出るように組み立てるコト
のちのち「転」で全て裏目に出ることが約束された、数々の問題解決行動やトライアンドエラー……つまりは、これらを描くのが起承転結の「承」なんです。
もっと言うなら、それらの問題解決行動が、(承の時点では)読者にとっても主人公にとっても「これしかない!」と思える内容であればベストです。
たとえば、スピルバーグの代表作の1つ『プライベートライアン』では、物語途中で捕虜としたドイツ兵を1人、主人公があえて殺さずに逃します。人情深い主人公的にも、観客的にも、それが最善の策ですけど……ラスト直前、この兵士に主人公は殺されちゃうんですね。
まあ、映画や小説に沢山触れていて、目が肥えている人には、何をどう作ったとて先の展開をある程度は読まれちゃうんですけど。これだけフィクションに対する読者(視聴者)側のリテラシーが上がっている時代に、大事なのは「読者に読ませない」ことより、分かっていても納得できてしまうコトです。
『ドラえもん』で言うなら……ドラえもんからひみつ道具を借りて調子に乗ってるのび太があとで痛い目を見るなんてコト、誰だって分かってるワケです。でも、のび太は冒頭で困っているから、ドラえもんとしては解決策としてひみつ道具を出すしかありません。のび太もまだ子供ですから、ひみつ道具を持てばつい調子に乗っていろいろやらかしてしまう。でも、その展開に対して読者(視聴者)がおかしい! と言うコトはないってコトですね。
人物の気持ちの流れにおかしな点さえなければ、読者(視聴者)は分かっていても楽しめます。
逆に「読者に先を読ませない」ことばかりを重視しすぎた挙句、「起」で登場していない(会話の中に人物名すら出てきてない)人物を途中から出し、これが最後の敵(ミステリーなら真犯人)だ!! なんてやったら、興ざめもいいトコですからね。
そういうのは「先が読めない展開」とは言わず、単なる「後付け」と言います(笑)。

童話『太陽と北風』に学ぶ、シンプルな起承転結

さて、いよいよ理想的な「起承転結」の解説になりますが、ここでは電子書籍などあらゆるジャンルに応用できるよう、マンガや映画ではなく、もっとシンプルな童話を使って説明しましょう。
個人的には、イソップ物語の『太陽と北風』がベストだと思ってます。

【起】
太陽くんと北風くんが、歩いている旅人のコートをどっちが脱がせられるか競う。
(目的の設定→太陽と北風がそれぞれのやり方で旅人のコートを脱がす!)

【承】
「コートを脱がすのなんてワケないさ」と北風くん。コートを風で吹き飛ばしてやればいいということで、旅人にビュービューと北風を送りつける。
(まずは北風ががんばってみる)

【転】
だが、どんなに北風がこれでもかと風を送っても、旅人はコートを飛ばされまいとしっかり押さえるだけで、一向に脱ぐ気配はない。
(北風の行動は旅人に対して完全に裏目に出てしまった)

そこで太陽くんは、旅人にポカポカと暖かい日光を浴びせた。
(そこで太陽の解決策)
【結】
あれだけ北風を浴びせてもコートを脱がなかった旅人が、「熱いなあ」ということでカンタンにコートを脱いでしまった。
人ってモンは頭ごなしに無理して使おうとするよりも、『そうしたくなる』ように仕向ける方が上手く動かせるんだね……というお話。

特に、「承」以降を上手く書くためには

これ、逆説的なんですけど、やっぱり「起」が上手く書けていないとダメです。「承」はあとで裏目に出るにせよ、結局のところ「主人公の問題解決行動」に他なりません。
つまり、「起」で主人公が何をしたがっているのか、そして当面の問題は何なのか、最低限その2つは定義できていないと、「承」も書きようがないんです。
なぜなら、何をしたいか分からない人から、目的意識に基づいた発想や行動は基本的に出ませんからね。そうなると当然、偶発的に何かが起こらないと物語が進みません。そして偶発的な展開や行動には意図が生まれないため、後でひっくり返るような「裏目」も何も作れないんです。
よって「起」がアバウトだと、目的がハッキリしないまま物語を進めざるを得なくなります。すると、「承」以降は川の流れのように、次々と偶発的な事態が発生し、主人公はその水面をプカプカと進むだけ。「転」でも偶発的に大きなトラブルが起こるだけになってしまいます。
悪く言えば、ストーリーラインが「ベルトコンベアーの上を黙って進むだけ」になってしまうんです。
よく、新人賞のコンテストなどで、審査員は最初の数行(良くて数ページ)しか読まないと言われますけど……要するに「起」の巧緻だけで、あとの巧緻も知れてしまうってコト。
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※これはあくまで「TV局」の脚本コンクールの話ね。出版の世界ではこれほどあからさまな証言を得ていません(笑)。
まあ、電子書籍の世界などでは、そうした既存のノウハウに従っているかどうかがが全てではないとも、一方では思ってますけどね。
次回は、手っ取り早く使える具体的な「ストーリーのひな形」をいくつか紹介したいと思います。ではまた!

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)
1974.10.12.うまれ。
東京都台東区の山谷地区出身。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、専門学校や声優養成所の事務員として働きながら漫画原作者に師事し、シナリオライターに。コンビニ向けのペーパーバック漫画やゲームのシナリオライターとして活動する。現在は通常のライター業も請けつつ、KDPでオリジナル作品を発表中。他に、自分と同じKDP作家を支援する活動も行なっています。
→『きんぷれ!』(http://kin-pre.com
Kindle本「DISTANCE (がんばれ!アクターズ戯曲シリーズ)」好評発売中

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