これがウケる物語を作る二次関数だっ!主人公を動かす「縦の線」と「横の線」

soreyuke_logo09こくぼしんじです。いよいよ9回目。
これ、プリキュアで言えば「ふたりは」から始まって、もうスマイル(9作目)まで来たってコトなんですよね。……珍しくこのところ忙しくて、少々アタマがおかしくなってますけど。
今回は物語を進めるための主人公の行動を『縦の線』『横の線』という軸で語ります。縦の線は「目的に一直線に向かう」こと。横の線は「目的とは関係のない行動」。この2つの使い方です。作劇の話はマジメにやりますんで。行きましょう!

これまでのそれいけ!ライターズはこちら

主人公を示す縦の線、横の線とは?

まずタイトルの『縦の線』『横の線』というのは、 主人公の意識を表す「ベクトルのようなモノ」です。以下の画像をご参照あれ。
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要は、スタート地点から最終目的に向かってまっすぐ上に伸びているのが『縦の線』
一方、縦の線から枝のように横にそれていくのが『横の線』です。

主人公の「縦の線」とは?

たとえば主人公の目的が 「ボクシングの世界チャンピオンになること!」だったら....『縦の線』というのは、 まさにその目標への最短の一本道
つまり、ジムに入門したり、 初めてのスパーリングで打ちのめされたり、 デビュー戦を行ったり、 首尾良く勝って次は新人王を争ったり....といった具合に、まっすぐチャンピオンを目指していく。
目的達成のために必ず通らなくてはならないマイルストーンは、みんなこの『縦の線』の上に置かれています。
また、これがジャンプ漫画になると、上の図よりもさらに横方向へのブレがない、縦の一直線に近くなります。いわゆる「勝負→特訓→勝負(以下リピート)」の田楽刺しってヤツですね。

目的を外れた「横の線」

一方、ジムに入門したものの、会長の一人娘に一目惚れしたとか、 減量があまりにも苦しくてこっそり抜けだし ラーメンを食いに行って見つかったとか、 あとは忘れちゃいけない「同じ年頃のライバルの様子に一喜一憂」とか。
こういうのが『横の線』になるワケです。
主人公がチャンピオンになるための道筋から横にズレていくと、図1の線も中心軸(縦の線)をはずれて横にうねり出します。まあ、普通の物語は、主人公がときどき横道にそれながらも、ここぞという時には縦の線へと戻り、目的に近づくワケですが。
うーん……最近の若い人にはボクシングで例えるより、いっそドラクエなどのRPGで例える方が分かりやすいですかね。
世界を平和にするという目的で、モンスターと戦ってレベルを上げたり、物語を進めるための中ボスやラスボスに挑むというのは『縦の線』。
けど、世界中に散らばった小さなメダルを集めたり、はぐれメタルを仲間にするためダンジョンにこもったり、海チョコボを育成したりというのは、『横の線』なのね

こう考えると、必ずしも「横の線」がムダではないワケです。むしろこういう「遊び要素」が全くないと味気ないことも、何となく分かるんじゃないかと。

今後を期待させるのに必要な「縦の線」

ジャンルに限らず、まずは基本的なお話から。
だいたい、長編の第1話(章)や読み切り短編においては「縦の線」の存在が重要です。
最初に名前も分からない人物が登場し、 そのあと何をしたいのか分からないまま話が淡々と続いてしまうようでは 読者も先を読み進める意味や理由を失ってしまいます。
読者に最後まで読んでもらうためには、まず主人公が何をしたいのかという 「目的」や「企画の魅力」を序盤で明示する必要があるワケです。
第7回第8回でも触れましたが「主人公が何をしたがっているか明かす」ってのは、読者の感情移入を誘う上での基本。いわば、序盤で明かされた主人公の思いに賛成できるか否かで、読者は続きを読むかどうか判断するワケですからね。
もちろん、いつまでもハッキリしない主人公は、タイムオーバーで読者に見捨てられます。
「行き先の書いてないバスや電車になんて、怖くて乗れない」じゃないですけど、読者にとって、ゴールや目標がいつまでも見えないってのは本質的に不快ですから。
特に、短編や読み切り作品ではページ数や分量の都合がありますから、主人公が横道にそれている余裕もそんなにありません
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もしモラトリアムの男が『マネーの虎』に出演したら?(略称:もしモラ)

「縦の線」の重要さを理解してほしいので、ここで例えを1つ。
以下、例えが漫画じゃなくて、なおかつちょっと古いテレビ番組ですけど、 『マネーの虎』を例に考えれば、すごく分かりやすいと思ってます。

※『マネーの虎』
『マネーの虎』(マネーのとら)は、2001年(平成13年)10月から2004年(平成16年)3月まで、日本テレビで放送されたリアリティ番組である。一般人である起業家が事業計画をプレゼンテーションし、投資家たる審査員らが出資の可否を決定するという内容だった。(Wikipediaより抜粋)

この番組で、出演者が初めて会った金持ち(虎)に向かって、自分の事業にカネを出してくれとプレゼンする際に……自分がどんなビジネスでどう儲けるつもりかという「縦の線」をちっとも話さなかったら?
例えば、就活をどうしようか悩んでる、彼女と結婚しようか悩んでる、最近はちょっと糖尿病気味で……とか。相手の出資者はどう思うでしょうか(笑)。答えから言えば、そんな世間話をいくらしたってしょうがないですよね。
こんなんじゃマネー成立はおろか、「やる気あんのか!」と怒鳴られるか、「キミ、ビジネスの才能ないから」って説教されるのがオチでしょう。
やっぱりゼロから他人の理解や共感を得ようと思ったら、 最初に出すべき情報は日常的なお話ではなくて 「これから何をしたいか」「何を目的にしているか」の部分。そこがないと、伸るか反るかの判断すらできません。

愛着を持たせるのに必要な「横の線」

逆に「横の線」というのは、本来の目的への道筋とは別にどうしても存在する、主人公の「日常性」を表す線のこと。
この「横の線」が全くないと、今度は読者が架空の登場人物たちを等身大で感じたり、彼らに親しみを持ったりしづらいんです。
特に長期連載や、少女向けコンテンツにおいては、キャラの日常の様子や志向、好物、異性の好みといったプライベートな部分も晒していく必要もあるんです。
キャラへ向けられた読者の純粋な興味に応えるために。
あるいは、物語全体にリアリティを出すためにも。

……!!
この連載9回目にして、ついに「女子向けコンテンツ」の話が登場です(笑)。

女子を共感させるのに必要なストーリーとは?

一概には言えない話ですから、どうしても大雑把な話になってしまうのは勘弁してほしいんですけど……。どうやら男と女では、ストーリーの「どこ」を楽しむかが違うみたいなんです。
簡単に言うとこんな感じ。
【男性向けストーリー】
目標に向かって猪突猛進する主人公の挫折や克服を楽しむ。
【女性向けストーリー】
目標はあるものの、目標達成よりも途中の「寄り道」を楽しむ。
以下、ちょっとアダルトにならないように注意が必要な話ですけど……
要するに、男女のデートで言えばですよ。
男性は結局のところ、ラブホに入ってすべきことをいたせたか否かが最大の感心事ですよね。でも女性はそっち(Hうんぬん)よりも、途中途中でいい雰囲気になれたかどうかが肝心……とか、そういうコトです。
実際、少女漫画の場合は「横の線」がないと物語そのものが作れません。
例えば「クラスの気になる男の子と結ばれたい」ってのが主題だったとして……
これ、縦の線だけで話を進めたら「よっしゃ! 告る!」ってだけで終わりです。
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また、多くの女子がこういった「目的一直線!」な姿に共感するかといったら、多分しないでしょう。その「一直線」ができれば苦労しない……ってのが、女子の女子たるゆえんでしょうから(笑)。
なので、人知れずダイエットに挑戦したり、オシャレに悩んだり、ライバルの女子と三角関係に悩んだりする……。
女子向けコンテンツの場合、主人公が「横の線」を見せながら少しずつ目的に向かうことで、読者もそこに「人間ぽさ」や「共感」を覚えることができるワケです。
必然的に、上で紹介した「物語を図示したグラフ」も、男性向けと女性向けでは、こんな感じで変わります。
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右の女性向けは、左の男性向けよりも物語の進み方が横軸にブレる……
つまり、「横の線」を強めに出すのがコツって感じですね。

マンガやラノベは『架空人物の伝記』と思って描け!

上の「縦の線」と「横の線」を踏まえて、どう物語を作っていくかという話。
まず、マンガのタイトルというのは、圧倒的に主人公キャラ名を冠することが多いですよね。(ラノベはそうでもありませんが)
『ドラえもん』しかり、『鉄腕アトム』しかり、『キャプテン翼』しかり、『るろうに剣心』しかり、『カイジ』しかり……。
これ、要するにマンガの内容というのがみんな、広い意味で言うならば……
『ドラえもん』なら「ドラえもんの伝記」
『鉄腕アトム』なら「鉄腕アトムの伝記」
『サラリーマン金太郎』なら「矢島金太郎の伝記」
『キャプテン翼』なら「大空翼の伝記」
『課長 島耕作』なら「島耕作の伝記」

……だったりするワケです。もちろん、生まれてから死ぬまでを、ただ時系列に並べているワケじゃありませんけど。いずれにせよマンガやキャラクター小説というのは、広い意味での伝記や偉人伝の類なんだと思えば、まず間違いないと思います。
ただ実在の人物の伝記と違って『オリジナルでスゴイ奴をでっち上げる』ところに、難しさと面白さが同居しているワけですね。
そんな伝記や偉人伝になってしまうような魅力的なキャラに、読者を惚れさせて(=感情移入させて)、その活躍や生き様をずっと追いかけさせるところに、人気を掴むための真髄があると。
つまらないヤツの伝記なんて誰も読みたくないですよね?
だからマンガやキャラクター小説では、伝記のネタに成り得るような『キャラ』が重要なんです。

困ったときは「伝説になる選択」を取る!

そして、マンガやキャラクター小説は伝記なんだと考えると、もう1つ、見えてくるものがあって。
それは……作者が(特に主人公)キャラをどう動かすか迷ったとき、明確な指針が立つということ
キャラが何か苦境やら決断を求められる場に落ちたとき、単に損得や常識、社会通念で考えるのではなく、「1人の人間の選択として面白いかどうか」「伝説になるか否か」という尺度で考えればいいワケです(※)。
間違っても「ストーリーの整合性に合うのは?」という尺度で主人公を動かしてはいけません。それをやると「ご都合主義」になります
要するに、伝記に残るような選択、あるいは人様の語り草になるような選択を常に出来るのが、『魅力的なキャラ』なんですね。
読者の皆さんに『あなたも江頭2:50になれ!』とは言いませんが(言ってますがw)……実際、彼のように「笑いのためなら死ねる!」というところまで突き抜けた人生を歩むと、魅力的な主人公を作る上での悩みがなくなるのは確かです。

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