「説明」から「描写」へ!キャラを上手に使って読者を物語りの世界へと引き込む6つのテクニック

この記事はKindle作家”八幡謙介”さんからゲストポストいただきました
1304153こんばんわ、ギター講師兼作家の八幡謙介です。
今回は、小説の中で人物や設定の「説明」を回避し、その説明すべき情報を自然に物語の中に組み込む方法をお話ししたいと思います。
説明セリフや解説の文章は書き手としてはラクなのでつい使いがちですが、ここを意識して改善するだけで読者がスムーズに物語の世界に入れるようになります。そこで使えるテクニックとして主にキャラを使った描写の仕方について説明していきます。
こちらもどうぞ:長編小説にありがちな「この人誰だっけ?」を防ぐ。キャラクターに個性を生み出すプロの書き方

「説明」を避けるべき理由

小説では、できるだけ「説明」を避けるべきだとされています。なぜでしょうか?
「説明」だとイメージが湧かないからです。また、「説明」のために地の文が続くことで、物語が停滞し、読者が興味を失ってしまう可能性があります。かといって、何の説明もなしに、いきなり特種な世界で誰だか分からない人物が動いていくと、読者は置いてけぼりを喰らいます。では、「説明」を回避するために、具体的にどうすればいいのでしょうか?

「説明」を「描写」に転換する

冒頭でどうしても読者に知っておいてもらいたい情報があるとします。それを「説明」にならずに読者に提示するには、その情報が出てくるシーンを構築し、やや間接的に「描写」すればいいのです。例えば、「主人公Aは社会人一年生、今日が入社式、遅れないように早めに電車に乗る」という情報を伝えたいとします。それをこう書いたらどうでしょうか。
【Aは、社会人一年生のサラリーマンである。今日は入社式。Aは時間に遅れないように、早めの電車に乗って会社に向かった。】
いかにも「説明」臭い文章ですよね。これだと、おそらくさらっと読み流されるだけで、頭には入らないと思います。これを、
【Aは、まだ皺ひとつついていないスーツの袖をまくり、入社祝いに父からプレゼントされたSEIKOで時間を確認した。スマートフォンを時計代わりにする癖は、ここ数日で矯正した。顔を上げ、もう一度ホームの掲示板を見る。『よし、大丈夫』この位置なら次の電車に確実に乗れる。事故さえなければ、入社式には絶対に遅れることはないはずだ。】
こうすると、「説明」にならずに必要な情報を読者に提示することができます。彼が社会人一年生であることは、【まだ皺ひとつついていないスーツ】と、【入社祝いに父からプレゼントされたSEIKO】から分かります。後半はまあ多少直接的ではありますが、説明臭くはないと思います。

さらに、これが冬のシーンであれば、【吐く息が白い】とか、【マフラーが派手だったかもしれないと気になってきた】とか、【手袋は母親からのプレゼントだ】といった描写を足せば、読者には十分伝わります。
私はある種、こういった描写を練るのが楽しくて創作をしているのですが、これをめんどくさがって「説明」で済ませてしまったり、あるいは「説明」を簡潔な文体であると勘違いしてしまうと、読者の読書意欲を削いでしまうので、十分気をつけたいところです。

描写+解説キャラでイメージを伝える

とはいえ、上記の例はごくごく簡単な情報だからできることです。もっと複雑な設定や専門知識、人物の相関関係などは、ちょっと描写するだけでは理解してもらえません。そういった場合は、「解説キャラ」を登場させます。
小説や漫画で、主要人物でもない、一見どうでもいいようなキャラクターが時々出てくることがありますよね。場合によっては、一シーンでしか出てこないキャラクターもいます。では、彼/彼女らは、意味のないキャラクターなのでしょうか? 作者の気まぐれや、未熟さから生まれたもの、あるいは字数(コマ)を埋めるためだけの存在なのでしょうか?
ほとんどの場合、そうではありません。よくよく注意して読むと、例え一回しか登場しなくても、そのキャラクターは、プロットを進める上で重要な役割を持っていることが分かります。
小説とは不思議なもので、作者がどれだけ筆を尽くして説明しても一向に読者に届かないものが、作中の人物に語らせるだけで驚くほどすんなりと理解してもらえたりします。そういった小説の性質をうまく使って、要所要所で「説明」のための「解説キャラ」を登場させる技術を身につければ、作品はもっと読みやすくなるはずです。
では具体的な「解説キャラ」の使い方を見ていきましょう。

1.捨てキャラと主人公

基本情報をさらっと解説したいときには、「捨てキャラ」を造ります。例えば、主人公が到着した村、得体の知れない住民たち、途方に暮れる主人公、彼を見かねた男が「あんた、よそ者かね?」と、主人公を物陰に引っ張って、この村がどういう村かを主人公に説明する。わりとありがちなシーンです。これは、村人の男が主人公に村の説明しているという体で、実は読者に村の説明をしているのです。そして、用が済んだらこの村人の男は捨てておいても構いません。もちろん、使っても構いませんが。
こうすることで、村について地の文で延々と説明することを回避できます。

2.複数の捨てキャラでプロットを動かす

主人公が酒場に入り、とりあえず一杯飲みます。隣の席では、見知らぬ男たちがなにやらただならぬ雰囲気で話しています。「今度の生け贄は、地主様の娘だと」「出すわけねえだろう、あの頑固爺いが」「それじゃあおめえ村の掟が立たねえじゃねえか、それに、龍神さまを怒らせたらどうなるか」「そうだなあ、あの洪水からもう十年か……」
そこで主人公が「もしよければ、その話詳しく教えてもらえませんか?」
これだけで世界がぐっと広がって、ストーリーが一気に進みそうな気配がしますよね。複数の捨てキャラに話しをさせ、そこに主人公を絡ませることで、地の文での説明的なナレーションを回避しつつ、プロットを自然に前進させることができるのです。
さらにこんなこともできます。例えば、捨てキャラたちが「あの祠には魔物が住む」と噂をしているシーンを描きます。主人公はそれを聞いていません。そして、主人公が何も知らずにその祠へと向かっていきます。読者はその祠がヤバいことを既に知っているので、主人公の身に絶対何かが起こる、何が起こるんだろう? とハラハラドキドキして読み進めます。

3.一人称で、主人公の自己紹介のための捨てキャラ

一人称体で、結構難しいのが、主人公の紹介です。ここを特に工夫せず、いきなり冒頭で【僕は○○、今年大学に入ったばっかりだ。】
と、読者に向かって自己紹介しているものが結構ありますが、これは読者としては興ざめです。また、そうやって簡単に自己紹介されても、読者はすぐに主人公をイメージできません。ではどうすればいいのか、ここは僭越ながら、拙著「セームセーム・バット・ディッファレン」を例にご説明したいと思います。

例:セームセーム・バット・ディッファレン
本作は、二十歳の大学生ユウがカンボジアを一人旅するお話です。読者には、できるだけ早い段階で以下の情報を提示したい。
名前、年齢、基本的な性格、カンボジアに一人旅に行くこと、大まかな旅の動機、しかし、主人公から読者への自己紹介はしたくない。
そこで私が考えたのが、冒頭で主人公が誰かと出会い、急速に仲良くなってお互いに自己紹介する、というシーン。私はここで、メイという捨てキャラを造りました。
冒頭はいきなり飛行機の中、ちょっとしたアクシデントから、ユウは隣に座っているメイと接触します。急速に距離が縮まった二人は、お互いに自己紹介し、ユウはこれからカンボジアに向かうということを彼女に説明します。もちろん、彼女に説明するという体裁で、読者に提示するのが本当の狙いですが。そして、メイはこのためだけに作った捨てキャラなので、これ以降、一切登場しません。こちらはサンプルで読めますのでKindleからどうぞ。

4.バカキャラと解説キャラ

専門知識を駆使した小説や、独自の世界設定を盛り込んだファンタジー小説などの場合、ちょっとした会話程度でそれらを読者に理解させるのは困難です。かといって、延々と地の文でナレーションするのも避けたい。そこで、「バカキャラ」を造ります。そう、バカなキャラです。
『え? ものごとを説明するのなら、賢いキャラの方がいいんじゃないの?』
確かにそうなのですが、それだとどうしても「説明する側」つまり、作者目線になってしまい、読者をおいてけぼりにする可能性が出ます。そうではなく、「説明される側」つまり読者目線のキャラを出すことが重要なのです。
読者はこれから解説する知識や設定について、何も知りません。それと同じで、何も知らないキャラを出し、彼/彼女から誰かに、どんどん質問をさせます。これは、バカキャラから誰かへの質問という体裁で、実は読者から作者への質問です。こういったシーンをちゃんと書くことができれば、『いつの間にか、世界に引き込まれる』ような小説が書けているはずです。

ここで気をつけないといけないのが、バカキャラを、本当のバカにしないということです。本当のバカなんぞ誰も相手にしたくありませんし、読者に『自分はこいつと同じか』と思わせるのも損(というか、失礼)です。バカキャラはもう少しこう、愛すべきバカ、憎めないバカにしておく、そうすると、彼/彼女に愛情を持って何かを教えるという、感情のこもったシーンになり、結果、「説明」が「物語」の一幕に昇華されます。さらにもう一ひねり、バカキャラに萌えの要素を足したり、逆に解説キャラをツンデレにしたりと、キャラを立てることで、冷たくなりがちな解説シーンがもっと華やかになります。

5.重要キャラによる説得力のある解説

今度は、物語にしっかりと登場する「重要キャラ」を使った解説の方法です。
重要キャラを使うメリットは、人物や設定について、より深い情報を読者に提示できるということです。往年の名作漫画「魁!!男塾」で見てみましょう。
中盤以降、武術大会で、謎のベールに包まれた敵Aが姿を現します。だいたいの流れとして、富樫、虎丸がまず「なんじゃありゃー!」と驚いて、読者の注意を引きます。すると、男塾塾生の誰か(それも、かなりの主要メンバー)が「あ、あれはもしや・・・」と、敵について解説し始めます。「自分も噂にしか聞いたことのない幻の武術」「○○大会では一人で敵を皆殺しにした」「あまりにも過酷な修行法で、習得できるのは何万人に一人」などと、Aについてのおどろおどろしいエピソードを真顔で語ります。それだけで、相手の恐ろしさが十分伝わってきますよね。
このように、人物Aの「強さ」を読者に伝えたいなら、主要人物の中から「強さ」に定評のある人に語らせる、そうすることで間接的にAの「強さ」を読者に印象付けることができるのです。
物語とは不思議なもので、「Aは強い」という直接的な表現は、いくら筆を尽くしてもあまり効果が出ません。しかし、上記のような回りくどい方法を取ることで、途端にAの強さが引き立ってくるのです。

6.過去の重要キャラを捨てキャラに 「修羅の国方式」

「北斗の拳」で、かつてケンシロウと互角に戦ったファルコが、「修羅の国」に渡った際、名もなき修羅(要するに雑魚キャラ)になぶりものにされる。私はこれを少年ジャンプでリアルタイムで読んでいたのですが、未だに脳裏に焼き付いているので(資料なしでも一瞬で思い出しました)、相当インパクトが強かったのでしょう。つまり、それだけ有効な手法だということです。
さて、これはどういうことかというと、全ては「修羅の国」の層の厚さを読者に伝えるための演出です。「修羅の国とはこれこれこういう土地で、こんなに強い拳法家がいて云々」とナレーションするのではなく、かつての主要人物が、この土地の雑魚キャラにこてんぱんにやられるというシーンをきっちり書く。しかもやられるキャラは、主人公と互角に戦ったライバルです。読者も少なからず感情移入しているはず、その人物をあっさりと敗北させるというところがミソでしょう。
土地土地を渡り歩く冒険ものなんかでは、ぜひ取り入れたい手法です。

さて、今回は以上です。使いやすいものが多いと思います。ぜひご自身の作品に気軽に取り入れてください。ではまた、次回コラムをお楽しみに!
ツイッター限定、ちょっと作品を見て欲しいなぁとか、第三者の意見を聞きたいなぁという方ご連絡ください。拝見いたします。がっつりはしんどいけど、さらっと読んでさらっと感想を述べるだけ。見返りは要求しません。興味のある方は、作品をupしたページへのリンクを張ってDMしてください。

この記事を書いた人

八幡謙介(やはたけんすけ) Twitter @kensukeyahata
京都生まれ、ギター講師兼作家。中学生の頃よりギターと本に親しむ。
2003年バークリー音楽大学卒業。アメリカ東海岸での音楽活動を経て、渡欧。ハンブルク、アムステルダムなどに滞在し、音楽修行の後、2004年帰国。滋賀県でギター教室を営む傍ら、演奏活動を行う。2009年より、これまでにない斬新な視点のギター教則本を次々と発表。2011年、横浜に移住し、八幡謙介ギター教室を開講。2012年より小説の執筆を開始。
ブログ「自作解題」 http://k-yahata.hatenablog.com/
「肯定的文学論」 http://yahata-book.hatenablog.com/

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