わたしがいかにして『アニウッド大通り』にハマり、そしてサブカルチャーへの純情な愛情に心を撃ちぬかれたのか

記伊孝『アニウッド大通り』応援企画!ラノベ作家『じんたね』さんから書評を頂きました
1501292dこんにちは! 仕事終わりに、夜な夜なライトノベルを書いている、じんたねです。
80年代の熱いアニメ創作漫画『アニウッド大通り』の作者・記伊孝さんAmazonでのインタビュー掲載を記念して、まだ本作を知らない方、興味はあったけど読んだことのない方に、その溢れんばかりの魅力をお伝えします。おかたんがエロすぎるぞ!
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わたしがいかにして『アニウッド大通り』にハマり、そしてサブカルチャーへの純情な愛情に心を撃ち抜かれたのか

最近、ネットで公開された作品が、あとから書籍化されるムーブメントが起きています。ブログや投稿サイトにアップされていたマンガや小説などが、いつの間にか紙媒体へと変わっている。そのままでは見逃してしまうかもしれない隠れた名作が、こうやって注目される機会を得ています
でも、元々無料で公開されていた作品って、ちょっとクオリティが心配だし……。
そんな風に感じておられる方々は、少なくないことでしょう。だから逆に、ネット発の作品には手を出さないという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、そんな疑いを一気に吹き飛ばす、熱くて面白いマンガが、実はあるんです。温かくてほんわかしていて、でも強烈で刺激的で心揺さぶられる、素晴らしいマンガが。
それこそ、私が自信を持ってオススメする、記伊孝先生の『アニウッド大通り』なのです。

アニウッド大通り 1: アニメ監督一家物語
記伊孝 (著)
価格:149円 ★★★★★ 16件のレビュー

13年の2月から某漫画投稿サイトにて連載開始し、4ヶ月で11万再生の話題作。 マニアックなアニメネタ、80年代カルチャーてんこ盛りのほのぼの漫画。 2015年「このWEB漫画がスゴイ」にて紹介されました。 あとがきには、作者が、宮崎駿監督の元で演出を勉強した 「東小金井村塾物語 巨匠と過ごした夏」もたっぷり加筆! ほかにも未発表4コマもたくさん収録されています。 全142p


こんなすごい作品がタダで読めていいの!?

私が初めて記伊孝先生の『アニウッド大通り』を読んだとき、まず感じたことでした。とある某イラスト投稿サイトで何気なくクリックして、画面に表示された懐かしい風景とキャラクターたち。どこか昔の話のはずなのに新しい。そんな未体験の感情に襲われては、何もせずにはおれません。すぐさま公開されている作品を一気に読み漁ったことを、今でも鮮明に憶えています。
それからKindle版そして紙媒体へと、あれよあれよという間に『アニウッド大通り』は、多くの人の目に触れるようになって行きました。あのクオリティがタダだったのは、やっぱり変なことだったのだなぁ、なんて思いました。SNS等でも好意的に言及されることも増えてきて、1人でこっそり、にんまり微笑んでしまう私。

ほらご覧。私の言った通りじゃないか。

1501292e『アニウッド大通り』を見つけて、勝手に盛り上がっていた私の偽らざる感想。一体、いつどこの誰に向けて、私が何を「言った」のかは、深く指摘しないでいただきたいのですけれども……とっ、とにかく、一ファンとして、こんなに嬉しいことはありませんでした。
これからもっともっと注目されて、もっともっともっと売れて、日本国民全員が読むようになればいいのに。そんな風に未来を想像しつつ、先生のご活躍を祈念しています。
さて、そんな大好きな『アニウッド大通り』なのですが、その魅力を語ろうとすると、はたと立ち止まってしまいます。もちろん、その魅力はページのいたるところに溢れています。どこを読んでも記伊孝先生の思いの丈がつまった、まるで一冊の思想書のように、濃密な知識量と情熱が、読み手を撃ちぬくのですから。
ぱらぱらと『アニウッド大通り』(kindle版)の第1巻第1話を紐解いて見ても、ジャポニカやロボットアニメ、はたまた魔法少女から西洋絵画まで、それらの虜になった大人と子どもの躍動感あふれる姿が、生き生きと描かれている。それらがノスタルジーを誘い、アニメやマンガに熱中しながら幼少期を過ごした人間の心臓を鷲づかみにする。
あるいはシリアスなストーリー展開を迎える後半部分(2015年1月25日現在)には、「人の批判しかできねぇ」「人の批判してるだけで自分が偉くなったって勘違いする奴」の作った、「刺激刺激刺激のオンパレード」作品が評価されてしまう風潮が指摘されています。『アニウッド大通り』の、あえてどこか古さを残した作風は、この流れへのアンチテーゼとしても読める深みを持っている。創作と呼ばれる行為をしたことのある人間、しかも商業という戦場フィールドを経た者であればなおさら、ここを涙なしに読み進めることはできないでしょう

サービスシーンがてんこ盛りの美人妻。本当によく脱ぎます

1501292b実は私、『アニウッド大通り』には、もっと隠された主題があって、それこそが最大の魅力じゃないかという直感を抱いています。それは「教育」というキーワードを補助線にすることで浮かび上がってくるんじゃないか。そう睨んでいます。
なので、多くの方が感じられているものとは別の、ちょっと気づきにくいけど素晴らしい『アニウッド大通り』の魅力を、ここで指摘できればと思っています。
この作品は、真駒家という家族を中心として進みます。家族の長である父親は、アニメ制作に携わるプロフェッショナル。そして息子、娘のいずれも、イラストやマンガの才能の片鱗をうかがわせるキャラクターとして描かれている。母親は美人の専業主婦。サービスシーンがてんこ盛りの美人妻。本当によく脱ぎますし、しかも父親にぞっこんという全国民が拍手喝采を惜しまない設定になっていて、しかもしかも父親と母親は初体験が――――いえ、この話は止めましょう。

理想的な「教育」のカタチが哲学として見える

具体的なシーンは、ぜひ、『アニウッド大通り』を手にとって確認して欲しいのですが、ことあるごとに父親は、息子に対して自身の作品を見せようとしています。息子に強制することなく、彼の興味が向かうに任せたまま、父親は自分の背中を見せ続ける。父親の態度はぶれません。その時々、置かれた状況において全力で生み出したものが、すべてを語るという哲学を実践しているかのようです。そんな父親の姿を手本にして、息子が日本のサブカルチャーに馴染んでいく姿が描かれているのです。
たとえば、父親が企画打ち合わせを自宅でするというシーンがあります。打ち合わせが終了すると、息子はとある未来像を空想します。自分が企画のプレゼンを行い、それに仲の良いクラスメイトたちが耳を傾ける。声優として活躍している男の子や、クラスのツンデレな助言女子、そして妹がいる。そして「お兄ちゃん あたしっ! この企画っ 好きっ!!」という言葉を向けられて、その空想は終わります。
まさに父親の創作に向けられた愛情が、真駒家という場をきっかけにして、周囲に広がっているのです。ここに、子どもを強制するでもない、かといってその自由奔放に任せるでもない、理想的な「教育」のカタチが描かれていると指摘するのは、さほど的外れではないように思います。
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自然の営みとして『創作』を真正面から取り扱う

『アニウッド大通り』が創作をテーマにしていることは、論をまたないでしょう。何かを創るということは、どういうことなのか。それを真正面から扱っている。キャラクターの多くが、消費者ではなく創作者として登場していることは、示唆的ではないでしょうか。真駒家の父親のみならず、息子や娘まで。キャラクターの多くが、創作に情熱を注いでいますし、そうではないキャラクターも、その姿を応援しています。
では、創作とは何なのか。『アニウッド大通り』における答えの1つが、「教育」なのだろうと私は考えています。すなわち、今私たちが創りだしたものが、次世代へと受け継がれる。そうやって受け継がれたものを軸に、次世代の人間がまた創作に取り組む。そんな人間の当然の営みこそが創作なんだ、と。
これは逆から言えば、分かりやすいかもしれません。創作とは、次世代に引き継がれる内在的価値を有したものであって、次世代に見せても恥ずかしくないように創られるべきなのだ、と言い換えられます。創作の覚悟あるいは倫理と表現してもいいかもしれません
事実『アニウッド大通り』には、ほのぼのとした情景とは裏腹に、時として、鋭い批判の言葉が出てきます。「刺激刺激刺激のオンパレード」作品を、決してよしとしない真駒家の父親は、あるときこんな台詞をこぼしています。
「刺激がありゃウケるとか思ってんじゃねぇよバーカ!! こんなのうちのチビ共の手前 格好悪くてやらなかっただけだもんね!!」

子どもが継承するであろう創作への愛情

彼が、どういった基準で創作に取り組んでいるのかが、一目瞭然でしょう。チビ共、すなわち自分の息子娘に見せても恥ずかしくないもの。彼らが継承するに相応しいもの。それが創作なのだと言っています。
1501292また別の場面で、父親は仕事を干されてしまうのですが、そんな失意の底にある彼にむけて、父親の無二の親友が、こんな言葉をぶつけています。
「真駒よいいか!? 一回の勝負で決着がついちまうほど!! 人生はそんな簡単なもんじゃねぇんだぞ!!」
不本意なものであっても、創作を続けなければ生きていけない。そして続けていれば、いつか必ず、次につながる。その「次」というのは、父親の仕事であり、その仕事によって養う家族とのかけがえのない時間であり、そしてそんな時間によって育まれる、子どもが継承するであろう創作への愛情なのです

30代が知らないはずの『昭和』が懐かしい不思議

『アニウッド大通り』が「教育」というキーワードを補助線として読み解けることが分かれば、そのノスタルジックな時代設定は、別の姿を見せてくれます。時代設定は、おそらく昭和を念頭におけば妥当でしょうか。日本が戦後復興を果たし経済成長を続けていた頃の、これから未来は明るくなっていくのだという雰囲気が、そこかしこに漂っている。
現在のように、アニメやマンガが溢れておらず、まだまだお金のある家庭だけがオモチャを買い求めることができる時代。あまり裕福ではない家庭は、ダンボールで自作のオモチャを作るなど創意工夫を凝らすような状況です。ちなみに真駒家は裕福ではありません。
よく考えてみると、この時代への憧憬を抱くことのできる世代は限られています。私――じんたねは昭和生まれですが、すでに昭和は平成へと向かい始めている時期でした。義務教育段階で、バブル経済は終焉を迎え、明るい経済成長など訪れないと思い知らされていました。昭和のノスタルジックな雰囲気は、もうあまり残っていない。『アニウッド大通り』に描かれている情景は、すでに失われてしまっている頃に、私は生まれている。
読者の多くが、私と同じように20代から30代の人たちであると仮定すると――ここはじんたねの独断と偏見によります――おかしいことになる。だって、誰もあの昭和を知らないのだから。

受け継がれた『サブカル』の伝統が心に響く

もちろん、現実と追想は異なります。過去の辛い出来事が、のちのち振り返っていい思い出になることがあるように、現実としての昭和をしらないからこそ、それを懐古的に振り返ることができる面は、多分にあるでしょう。その意味で、『アニウッド大通り』が美しいのは、むしろ当然だとも言えます。
とはいえ、ここは食い下がりたいのですが、空き地で遊ぶ彼らたちに、あるいはキン肉マンを読み耽る息子に、魔法少女ごっこに没頭する妹に、どうやって私達は感情移入することができたのか。リアルの興奮を知っている人ならいざ知らず、そうでない人間にとって、あの姿を追体験することが可能なのか。
実はその可能性、「教育」によって切り開かれていると、私は主張したい
『アニウッド大通り』に登場するノスタルジックな小道具たち。それらは実は、今の私たちに連綿と受け継がれてきたことなのだ、と。あの頃と同じように、あのキャラクターたちと同じように、アニメやマンガを楽しんだことは、たしかにない。でも、ふとしたきっかけでみたアニメやマンガに心奪われ、それにひたすら没頭し、それを真似して創作したり、誰かに話をしたり。そんな当たり前といえば当たり前にすぎるサブカルチャー受容の営みを、私たちは先行世代から受け継いできた。

創作の「これまで」と「これから」を橋渡しする

もちろんここにはフィクションがあります。真駒家のように、家族ぐるみでサブカルチャーを肯定してくれるような場所は、あまりなかったでしょう。むしろ教育の専門家から、発育上好ましくないとして、アニメやマンガは退けられてきた歴史があります。だからこそ真駒家のフィクションは美しく、読む者の心に訴えるのでしょう。
話を戻します。『アニウッド大通り』にノスタルジーを感じるとき、それは紛れもなく私たちが「教育」によってサブカルチャーへの愛情を受け継いできたからに他なりません。それは先行世代の創作に向けた愛情を源流として、脈々と、今にまで生き続けているからではないでしょうか。その意味で、『アニウッド大通り』とは、創作の「これまで」と「これから」を橋渡しする使命を背負った、まさに「教育」書なのです。
まだ『アニウッド大通り』を読まれてないみなさま、あるいはすでにお読みの方々。ぜひ、一度だけでも(あるいは何度でも)読んでみてください。こんなにも教育愛にあふれた作品を知らずにいるのは、もったいない。読めば『アニウッド大通り』だけじゃなくて、他の作品も大好きになれること間違いなしです。

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アニウッド大通り 1: アニメ監督一家物語
記伊孝 (著)
価格:149円 ★★★★★ 16件のレビュー

13年の2月から某漫画投稿サイトにて連載開始し、4ヶ月で11万再生の話題作。 マニアックなアニメネタ、80年代カルチャーてんこ盛りのほのぼの漫画。 2015年「このWEB漫画がスゴイ」にて紹介されました。 あとがきには、作者が、宮崎駿監督の元で演出を勉強した 「東小金井村塾物語 巨匠と過ごした夏」もたっぷり加筆! ほかにも未発表4コマもたくさん収録されています。 全142p


この記事を書いた人:じんたね

さそり座の女。夜な夜な、ライトノベルを書いている、冴えないもの書き志望です。現在、『佐々木家は順調に病み続けます』(Kindle電子書籍)、『キミ、色、トウメイ』(ぽにきゃんBOOKS)を販売中。

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