【書評】雨之森散策(著)「フリーズドライ」ひきこもりの少年に弱さを認める意味を教えてもらえた by カウフィールド

この記事はきんどう読者の”カウフィールド”さんからゲストポストいただきました
1307141はじめまして、カウフィールドと申します。
きんどるどうでしょうで紹介されていたこの本の表紙を見て、まず最初に色合いがきれいだと思いました。表紙と同じで話の内容もきれいです。言葉の選び方が自然で、無駄がなく読みやすい話です。この本の表紙を見てピンと来たあなたにこの本をオススメします。きっと面白く読めるでしょう。
フリーズドライ
雨之森散策 (著), たかだのぶゆき (イラスト)
価格:100円
評価:★★★★☆ 1件のレビュー
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内容紹介

そう感じる。――いつの時も、それが僕の大問題。
18歳の祥平は中学生の時に受けた傷をきっかけに無気力のかたまりとなったひきこもり。そんな彼をなかば強引に外へ連れ出したのは『拝み屋』の伯父だった。オカルト性ゼロの青春小説。長さは400字詰め原稿用紙で80枚程度です。


『フリーズドライ』書評 by カウフィールド

ひきこもり×コミュ障の青春ストーリー

現在日本におけるひきこもりの人数は約300万人。そのうちの半数近くが準引きこもりといって、自分の用事では外出できるがその先で労働や社会活動には参加しない(できない)人達だ。
今作の主人公祥平(しょうへい)もそういった一人で外出はできるけれど社会的な行動ができないひきこもりだ。
やさしい両親はひきこもっている事に対して口うるさく言わないので、干渉されず穏やかなひきこもり生活を続けていた祥平ですが、ある日『拝み屋』をしている叔父が半日3千円で仕事の手伝いをしないかと強引に持ちかける。
『拝み屋』の仕事とは祥平の父が言うには『人の不安を種にするような仕事』
叔父本人は『色んな家を回ってお経を上げるだけだ』と言い、具体的に何をするかはよく分かりません。
よく分からないまま押し切られるように叔父の手伝いを始める祥平ですが、その手伝いとは『人の不安を種にするような仕事』でもなく『色んな家を回ってお経を上げる』ことでもなくて叔父の次男、祥平にとってはいとこにあたる晶(あきら)の面倒を見ることでした
晶は足が弱く、発達障害で極度の人見知り、他人とコミュニケーションが取れないという、ある意味祥平と同じように社会とのつながりが無い子です。彼は祥平の理解できない一方通行なコミュニケーションばかりします。

心理変化の描き方が見事!

この小説では『拝み屋』でトラブルが起こったりしないし、晶との友情が芽生えたりもしなければ、主人公の祥平はずっとひきこもりです。
じゃあ何が面白いのかというと、主人公祥平の心理変化の描き方です。
祥平は中学生時代に同級生二人からいじめられていたのですが、自分がいじめられるはずがないと否定し、誰にも助けを求めずいじめに一人で耐え続ける。何故一人で耐え続けたのかというと、いじめられているのは恥ずかしいという思いもあったからだ。
しかし、ある日誰かの告げ口でいじめが発覚、それからいじめはなくなった。いじめがなくなったのは良いことだけれど、知られたくなかった自分がいじめられていたという事実が公になってしまう

自分の弱さを知ることができた

それを知られた恥ずかしさで祥平の心が駄目になり、ひきこもりになっていくなり行きに同情した。もっとも祥平は同情されたくない、かわいそうな奴と思われたくないと思って、いじめを隠していたのだからそう思うのはやめて欲しいだろうけれど。
現在ひきこもりの問題は解決されずにその問題は先送りされています。祥平もひきこもりを脱出する事はできません。しかし、自分がひきこもりの社会不適合者であることを認められる程度に強くなります.この物語はある意味ひきこもりの成長物語である。

この記事を書いた人

カウフィールド Twitter @mahsameetsboy25
1985年生まれ 徳島県出身 好きな事:本屋巡り、得意な事:本棚を作ること、好きな本のタイプ:歴史解説書、歴史小説(北方謙三)


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