Amazonドラマ『高い城の男』1〜3話ダイジェスト

フィリップ・K・ディックの傑作時代SFをアマゾンが予算をかけて実写ドラマ化したAmazonプライムビデオ独占作品『高い城の男(原題:The Man in the High Castle)』を今から見ませんか?というご提案企画。

もしも第二次世界大戦をドイツ・日本が勝利したら世界は……というif世界を描いた作品。制作発表から高い期待を集めましたが……映像のクオリティはとても素晴らしいのですけれど……。さて、そんな『高い城の男』の見所をライター@shachiさんから1〜3話を導入編として語っていただきます。

もう見た人、諦めた人、頑張って見たからさらに視聴者を引き込みたい方!みなさんの本作のコメントをTwitterで集めつつ8月2日19時よりネタバレありで『高い城の男』の魅力を語り尽くすネタバレ記事を公開します。

また、AmazonUK公式がYoutubeでトレイラーを公開してますのでご紹介。番組そのものはプライム会員ならAmazonプライムビデオで全話視聴できます。***きんどうここまで

Amazonビデオ『高い城の男』シーズン1

はじめに:『もしもの世界』は好きだろうか? 歴史改変の世界は好きだろうか?

if(もし)……、○○が、○○だったら……
そして、その世界を自分が好きな作家が書いてくれるとしたら、あなたは読みたいと思うだろうか?

これは、そんなもしもの世界を、アメリカのSFトップ作家の一人であるフィリップ・K・ディックが描いた作品であり、その作品初めての映像化作品である。フィリップ・K・ディックの名前を知らなくとも「ブレードランナー」「トータルリコール」「マイノリティリポート」の作者、と言えば判るだろうか?

時は1960年代のアメリカ。世界の半分をナチスドイツ、世界の半分を日本が支配するそんな世界の中のアメリカのお話です。原作小説は、1962年に発表され、翌年の1963年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞しました。

日本では1965年にハヤカワSFシリーズから出ており、再翻訳版も1984年にハヤカワ文庫から出ている……つまり最新の翻訳版でも優に30年以上前の作品ですが、Kindleでも出ているので入手性は悪くはありません。

それが実写ドラマ化し、2015年11月にアメリカのAmazonプライムビデオにおいて配信開始され、遅れて日本でも2016年12月13日にシーズン1が配信開始されました。

この作品のタイトルは「高い城の男」で、原題は「The Man in the High Castle」……ほぼ直訳ですね。

第二次世界大戦は枢軸国の勝利に終わり、大日本帝国およびナチス・ドイツによって世界は占領された世界。その中でも西と東に大きく分断化された元アメリカが舞台のヒューマンドラマ。

『もしもの世界』の中では珍しくない設定ですが、作品内で「もしも連合国が枢軸国に勝っていたら」という歴史改変小説、歴史改変フィルムが流行しており、現実との夢遊病感を楽しめる。そしてそれがある『キー』になって物語が動きます。

作品内では基本「ナチス」というのが敵国であり、あまり日本を感じる部分は少ないです。あと枢軸国といえばイタリアもそうですが、ナチスに比べるとあまり表には出てこないのです。ちなみに海外ドラマなので字幕版と吹き替え版がありますが、個人的には字幕版を推します(理由は後述)

見て欲しいポイント1:ちょっと不思議な「世界観」

まず見て欲しいのは、なんといってもちょっと不思議な「世界観」。

この世界では易経が流行していて複数の人物がそれを指針にして行動しています。八卦とか風水と言われるものであり、かなりの中国感が強いですね。哲学の基礎を易という部分を強めることによって「アジア感」を出そうとしているというのは見て取れます。

その部分においてだけでも、ディック作品にありがちなプロットの破綻が無いと、西欧圏では高い評価を得ました。でも、日本人からすればちょっと違和感がありそうです。日本と世界が半分って言ってるのに中国なの? と感じるかもしれません。

さらに、日本の占領下であるはずなのに、ドイツ軍がよく使っていたであろう車がそのままバージョンアップしたかのような無骨な車やトラックが次々と登場します。家の壁すら煉瓦になり、アメリカというよりドイツのようになっているのです。そしてサンフランシスコも、提灯が普通にあり中国なのか日本なのか、よく判らない怪しいアジア邸宅。

テレビではナチスの軍人さんを称える番組ばかりやっている。それなのに、娘が合気道をやって帰ってくると日本の悪口を言うお母さん。そしてその悪口の大半は中国的なものばかり……? 本当に日本なのでしょうか。

西が日本というかアジアっぽく、東がドイツっぽくという感じなのですが『ドイツ』の象徴がBMWだったり、ちょっと楽しいです。この、少し不思議で、ごちゃ混ぜになっている世界がしっかりと映像化されているので、まずはこの世界観をたっぷり堪能して、雰囲気に浸ってください。

世界観とは、小物ですし、乗り物ですし、建物ですし、着物です。化粧や所作なども重要になります。その辺り「ドイツ側はこう」「日本側はこう」というのをきっちり作っていることがわかるのが、観て楽しいのです

見て欲しいポイント2:やたら多い主要人物


一話から、登場人物がとことん多いこの作品。主要人物が多いのですが、主人公と言えるのが何人も出てきます。

元アメリカの東側にある日本太平洋合衆国。そのサンフランシスコに住み、合気道を学ぶ主人公の一人が『ジュリアナ・クレイン』です。ジュリアナの目の前で妹のトゥルーディが日本太平洋合衆国の憲兵隊に殺されるところから物語は動き出します。

姉に、連合国が勝った歴史を映すフィルムを渡した直後に殺されたトゥルーディ。ジュリアナは、遺志を継いでフィルムを中立地帯に運びますが、途中で荷物が盗まれてしまいます。果たしてフィルムは取り戻せるのか。そして、フィルムを集める「高い城の男」とは……

という出だしで始まるのでジュリアナが主人公かと思いきや、他にもスパイのジョー、かなりのキーマンとなる田上。冷酷な軍人の木戸。そしてジョーの上司であるスミスといった重要人物が次々と登場します

まずはこの四人を中心に、世界を見ていきましょう。薄汚れた空気感に鉄の塊である車、全体的に煙い世界というのが暗さを暗示していて、なかなか明るさが見えない中彼らがどう動いていくのか?

特に注目したいのは、日本人である田上。キャラクターの造型だけでなく、部屋もポイントです。日本人の部屋が、椅子と屏風やふすまといった昭和初期の文化をそのまま滅びずに進めるとこうなるのかな? という『もしもの世界』がしっかりと描かれています。

易経を本人がやっているのも面白いシーン。普通は本人役ではなく、専門の易者がやっている印象が濃いのですよ。

しばらく観ると田上の家のお参りの風景が出てきます。ほどよい神社感とほどよい西洋感がないまぜとなった所作は見ていて楽しいです。ほんとにこういう風になったのかもなぁ。と想像を巡らすことができます。

そして、アメリカが残っている感じのシーンは何故か西部劇っぽさが残る建物。ボンネットタイプのトラックにそういう建物はよく似合います。四人に注目しつつ、そういった背景も観ていきましょう。

ちなみに、冒頭で言った字幕版を推す理由ですが、両方を見比べると、主要人物四人のうちの一人が、少しだけ字幕と吹き替えでニュアンスが違うのです。字幕版の方がより原作小説に近いので、字幕版を推すというわけです。ただ、世界にどっぷりと浸るなら、字幕を読まなくて済む吹き替え版もいいのは確か。吹き替えで違和感を感じたら、字幕版に切り替えてみてください。

見て欲しいポイント3:3話まではタメの時期。4話以降急速に物語が動いていく

最初に出てくるのが、スパイの物運びと妹の遺品の物運びという俗に言う「お使い」から始まります。そこで、絡み合う人がどんどんと出てくるのですが、序盤である3話くらいまでは、その登場人物の紹介が主になります。

アクションや、サスペンスなどもまだまだ始まったばかりなのでここで諦めてしまう人も多いのですが、お待ちください。

是非、1,2,3話を観てから、4話を観てください。ここでショッキングな出来事と共に物語が急速に動いていきますから。

しかし、では4話から観ればいいのではないかと思いがちですが、伏線として観ておくと「ああ、なるほど……」と思える場面がポイントポイントで出てきます。

なので、3話まではじっくりと「こういう世界観なんだ」という風に観ていて、4話から始まるストーリーに身を浸してみてください。きっとこの不思議な世界に惚れているはずです。

あとがき

センセーショナルな小説から、時代を経て衝撃の映像化を果たした『高い城の男』。

この作品が気になった人、もしくはすでにハマっている人は是非Twitterでハッシュタグ「#高い城見てる」をつけてつぶやいてください。この楽しい世界観と、入り組んだ人物達、そして深いストーリーをみんなで楽しみましょう。

そして今回紹介した序盤から先、シーズン1全体についてはネタばらし編を8月2日に公開予定です。

この世界がどうなっていくのか、登場人物達がどうなるのか深く掘り下げていくので、それまでに全話見ていると、より記事を楽しむことができます。

この記事にはAmazonプライムビデオ『高い城の男』より複数のスクリーンショットを掲載しています。本画像の著作権者より通告を頂いた際はすみやかに画像を取り下げます。

原作は、ヒューゴー賞を受賞したフィリップ・K・ディックの小説。製作総指揮を務めるのは、リドリー・スコット(「ブレードランナー」)とフランク・スポトニッツ(「X-ファイル」)。「高い城の男」は、第2次世界大戦で連合国が敗れ、日本とドイツが勝利してアメリカを占領したという世界を描いている。出演は、ルーファス・シーウェル(「John Adams」)、ルーク・クラインタンク(「プリティ・リトル・ライアーズ」)、アレクサ・ダヴァロス(「Mob City」)。
Amazonビデオ『高い城の男』シーズン1

ライター紹介:shachi

小説、脚本、作詞などをやりつつも本業はプログラマーと言って譲らない文字書きの人。得意分野としては本業を生かしたネットワーク系になるが、野球やサッカーなどのスポーツにも造詣が深い。著書に『手のひらの露』全3巻(星海社)がある。

最近のドラマではシャーロック四期が始まったので楽しんで見ている。ゲームでの最近の一押しは『アライアンス・アライブ』(フリュー)

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