リドリー・スコット総指揮『高い城の男』この世界観はさすが!


Amazonプライムビデオで独占見放題 フィリップ・K・ディックの傑作時代SFをアマゾンが予算をかけて実写ドラマ化した『高い城の男(原題:The Man in the High Castle)』を今から見ませんか?というご提案企画。

今回はネタバレ編ということで、ライターのshachi@shachiさんに語っていただきます。まだ見たことがないという方は 高い城の男 1〜3話ダイジェストで、本編の映像の素晴らしさと話のややこしさの予習を是非どうぞ。ちなみにわたしは1話途中で脱落……しました……話進まないんだもの……。あなたは、どうでしたか?***きんどうここまで

リドリー・スコット総指揮って、この世界観はさすがとしか思えない Amazonプライム独占ドラマ『高い城の男』ネタバレ編

高い城の男 (字幕版) シーズン1

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「高い塔の男シーズン1」見終わりました。みなさんは見終わりましたか? シーズン1だけでも10話ありましたので、大体10時間の長丁場お疲れさまでした。シーズン1だけだと、謎が謎のままなので、かなり厳しかったと思いませんか? 実はこれ、原作の1/3ぐらいなんです。シーズン2で全体の1/2ぐらい。

シーズン1の1話は高評価で始まったものの、2,3話で評価を落としてしまい演出が責められ、シーズン2では監督が降板し、総指揮がさじをなげかけるというスッタモンダもありました。

今思うとアメリカで最初に配信されたのは1−2話。これがパイロット版と呼ばれていました。3〜10話はそのあとに一気に配信されたのも、編集が変わっていたのかもしれません。そう思うとテンポの差が見えて来ます。

一応監督とか演出が変更になるシーズン3が発表されていて、それで終わる予定です。原作の残りの半分を1シーズンでやるのですから、テンポに関しては期待できそうですね。

さて、ここから全編についての話をしてきますが、もしかしたら「4話までは見て」と導入編では主張したものの、序盤で脱落してしまった人がいるかもしれないので、その問題から。

テンポがずいぶんゆっくりなのに、最終話詰め込み過ぎ問題

導入編でも語ったように、3話まではストーリーがほとんど進みません。

4話の「周りが狙撃止めようとしたのに、銃弾に倒れる皇太子」シーンや、日本とナチスが何かを守っているもそれを知られるのがまずい。というストーリーが見えてきた5話6話辺りから大分話の理解ができるようになってきます。ここまで長い!

シーズン1の半分以上を見て、ようやく「世界崩壊を止めようとする権力者側と、なんで執拗に止めたがってるんだろう?とにかく反発しよう、と動く主人公側の話」がわかるというのは、ちょっと丁寧に描きすぎかもしれません。

話のキーになるのは「フィルム」の存在。

なんかよくある「敵に奪われてはいけない重要書類」のようなアイテムかな、と思っていたら、中に映っている風景は日本やナチスが負けた世界。

ははぁ、フィクションの世界でも負けたという『もしも』の世界を出すと怒る人達がいるのかなとも思っていましたが、そのフィルムが取られても、また別の似たようなフィルムがあることが判り、それもまた重要であることがわかります。

しかもそっちのフィルムにはサンフランシスコに原爆が落とされ、主人公の一人であるジョーがフランクたちユダヤ人を処刑するシーンが入っているのです。ここまできて、視聴者の我々は重大な事実に気づきます。

あれ?これって平行世界ものだったっけ?

ジョーがナチスのスパイと途中で「知ってしまう」ことにも驚きました。皇太子狙撃も、日本やナチスに反発していたフランクが計画し実行。フランクは阻止されて失敗するものの、結局は狙撃が起きて、ナチス側が真犯人ということも判明。さらにはジョーが味方なのにナチスを始末しなければという展開になり。えーっとそうなるのか。という気持ちに。

最後の10話はいままでの回収を一気にやってしまうので、かなり混乱しました。例えば、ジョーが「ナチスだろう?」とジュリアナたちにようやく問い詰められ、ドイツ大使館に逃げ込んでフィルムを持って行ったりします。


ヤクザの情報から皇太子狙撃犯のナチスを殺したり、エドが逮捕されて木戸が切腹免れたり、ウェグナーはドイツに送還されて自殺するし、スミスは罠をしかけたハイドリヒがヒトラー暗殺計画したとして逮捕するし、ジョーは逃げまくって最後は漁船で国外に逃げるし、フランクは捕まったエドの為に憲兵隊に出頭するし。

あっちで逆転こっちで展開とばったばったと切り替わり、何度か見ないと「あれ、彼どこいった」となってしまうスピード感。特にジョーの運命が変わりすぎ!ほんっと最初の1〜3話あたりのテンポはなんだったんだ。という最近の米国のドラマ速度になり困りました。


最後、田上がユニオンスクエアいって瞑想して目をあけたら連合国が勝利してる平行世界に移動するシーンで止まったのは「早くシーズン2を見たい」という良いヒキですね。

2. キャラと展開に、疲れる

もうひとつ、テンポの他に序盤で脱落してしまう人が出るのは、主人公の行動に少しも同意できずに、「なんでそうなるの??」が連続してしまうところじゃないでしょうか。

ウェグナーとかジョーたちのナチス側は大分悲しい目にあうのに、日本側は田上と木戸の差が激しすぎでした。何よりもジョー、おまえなんで惚れた相手がジュリアナなんだよ……違うだろ? と心配になってしまったり。

画面に向かって「その電話盗聴されてるよ」と全員に言いたいくらい会話だだもれとかも。

字幕版では役者たちが作中で日本語を話すのですが、これがまた中途半端で身もだえる。役者さんは日系三世くらいだろうから仕方ないとはいえ、ちょっとね。


吹き替え版はさらに、字幕版(原作に準拠)とニュアンスが違う部分と主人公のはちゃめちゃな判断とが相まって、主人公に感情移入がしにくくて辛かったのです。

3. 賞賛すべき、その世界

それでも、この作品に関しては、世界観がとにかく素晴らしい。

背景とか小物などの美術と、撮影、CGに関しては感動すら覚えたのでその辺はとても好きなのです。ここにはまれる人と、はまれない人とで、序盤で脱落するかどうかが決まるのではないでしょうか。

1960年代のサンフランシスコっぽさをあそこまで出しつつ日本や中国などのアジアタウンが主流になる。というのは面白くも美しい。

人に対しても、ナチス側や日本側の所作(動き)なんかも素敵で魅入る。


2016年の第68回エミー賞クリエイティブアート・エミー賞において撮影賞、シングルカメラ・シリーズ部門とメインタイトルデザイン賞を受賞。
2017年の第69回エミー賞でもノミネートされたというのも納得です。

『もしも世界』かと思っていたら『平行世界』で、存在そのものが危うい不思議な世界とわかってきて、なお楽しくなります。しかし、シーズン1だけだと平行世界へは結局どういう方法で行ったのかという疑問が出てきます。瞑想しただけでしたしね……。

リドリー・スコット総指揮って、この世界観はさすがとしか思えないくらい素晴らしいのだけど、全編の演出に関してもさすがとしか思えないくらいリドリー。

ただ、やっぱり、テンポがゆったりで眠くなるのは、いつものリドリー作品とも言えます。

ちなみに小ネタではありますが、易経占いばかりやってるのに、街に占い師とかいなさそうなのが不思議です。もうちょっといても良さそうなのに。身分の高い人だけの秘儀なのでしょうか。

4. 原作ありきで見てしまう、その切なさ

どれだけ世界観の描き方が素晴らしくても、原作ファンとしては、原作にあったさまざまなシーンが無かったなと残念に思うのです。日本人が血眼になって収集するディズニーのおもちゃネタとかね。

日本が中国も韓国も「自国」にしてるので、中国っぽいのも全部日本ってことなんだけど、その辺の説明するシーンが原作にはあったので、ドラマでもあっても良かったよなぁ。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(ディックの小説原作)と『ブレードランナー』(その映画化)の違いのように脚本よりも映像を主に作ってる感じは強く、映像はほんときれいで「さすが」と思うモノの、ディックっぽい重厚な脚本ではなくなっているのが残念です。

そして、続きに関してですがどうやらシーズン3は今年中には見られそうな感じが出ております。そのシーズン3に、日本人俳優の尾崎英二郎(ラストサムライ、硫黄島からの手紙、HEROES/ヒーローズなどに出演)が出演することが発表されましたね。

海外ドラマNAVI 尾崎英二郎、『高い城の男』シーズン3へ出演!本人からのコメントも到着! http://dramanavi.net/news/2017/07/3-5530.php

これも含めて、最後まで進むのかなど興味がつきません。

シーズン1の続きのシーズン2も、急がずにゆっくりと映像を見つつ物語を追っていくように見るとより、楽しいと思います。噛めば噛むほど味が出るフィリップ・K・ディックの世界。何度も繰り返してみるほど、話も明確になり、世界観の美しさにはまっていくでしょう。

とぷんと不思議な世界に浸るのも、楽しい時間かと思います。

あとがき

最初のゆっくりな展開で諦めてしまう人が多い『高い城の男』。盛り上がりが遅いのですが、ある程度まで見ていくと「次」と思える重厚な話と、全体的に暗い画面ですが、美しい美術の光る背景など。見る価値のある作品かと思います。

とはいえ、合う合わないはありますが……。

この作品が気になった人、今からでも見ようと思った人は是非Twitterでハッシュタグ「#高い城見てる」をつけてつぶやいてください。この楽しい世界観と、入り組んだ人物達、そして深いストーリーをみんなで楽しみましょう。

シーズン2もすでにAmazonPrimeで公開されておりますので、是非シーズン1終わったらそのまま続きで見ていきましょう。きっと今年米国で公開予定のシーズン3も楽しみに待てると思います。

この記事にはAmazonプライムビデオ『高い城の男』より複数のスクリーンショットを掲載しています。本画像の著作権者より通告を頂いた際はすみやかに画像を取り下げます。

高い城の男 (字幕版) シーズン1

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高い城の男 (字幕版) シーズン2

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原作は、ヒューゴー賞を受賞したフィリップ・K・ディックの小説。製作総指揮を務めるのは、リドリー・スコット(「ブレードランナー」)とフランク・スポトニッツ(「X-ファイル」)。「高い城の男」は、第2次世界大戦で連合国が敗れ、日本とドイツが勝利してアメリカを占領したという世界を描いている。出演は、ルーファス・シーウェル(「John Adams」)、ルーク・クラインタンク(「プリティ・リトル・ライアーズ」)、アレクサ・ダヴァロス(「Mob City」)。

ライター紹介:shachi

小説、脚本、作詞などをやりつつも本業はプログラマーと言って譲らない文字書きの人。得意分野としては本業を生かしたネットワーク系になるが、野球やサッカーなどのスポーツにも造詣が深い。著書に『手のひらの露』全3巻(星海社)がある。

最近のアニメでお勧めなのは『Re:CREATORS(リクリエイターズ)』。ゲームでの最近の一押しは『Splatoon2』弱いですが、ローラーで塗ってるのが楽しいです。

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