キャラクターを動かす「アクションとリアクション」

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「それゆけ!ライターズ」第二回 アクションとリアクション

こんにちは。こくぼしんじです。
まずは前回のクイズについて。
第1回で紹介した「名ゼリフの7大カテゴリ」についての回答からお話ししましょう。

前回のクイズ:「名ゼリフの7大カテゴリ」はウソ??《解答編》

では、もったいぶってもしょうがないので、正解を言ってしまうと……『嬉しい系』『人を喜ばせる系』『勇気づける系』など。要は他者、あるいは読者に、プラスの感情を与える系統の名ゼリフです。

「スラムダンク」なら
『あきらめたらそこで試合終了ですよ』

「ワンピース」なら
『「生きたい」と言えェ!!!!』
『おれは助けて貰わねェと 生きていけねェ自信がある!!!』
(↑これは感動系であると同時に、決意系でもありますね)

この種の名ゼリフについて前回、なぜ言及を避けたかというと……。
あらゆる名ゼリフの中で、こういうのが最も難しいからです。生み出すのが。

では、こういう感動系のセリフ、一体どうすれば生み出せるのか?

……方法はただ1つ。

あなた自身が「熱い」生き方をすることです。

本質的に「熱い」人間が、自身の理想や夢、生き方を、真正面から本気で語ったときだけ、上のような感動系のセリフが生まれます。それが、この種の名ゼリフの正体なので。

要するに小細工じゃ生めないため、本気で生み出そうと思ったら生き方レベルで自分を変えないと難しいというか。完全にテクニックの範疇を越えているんです。

この系統の名ゼリフだけは。

とはいえ、教えるとなったら、参考になるものぐらいは提示しないといけませんよね。

そこで紹介したいのが、下の動画!!

人様にシナリオや作劇を教えるとき、いつもこの動画を「全エンターテイナー必見」としているんですけど、性懲りもなく紹介させて下さい。観れば分かります。ああ、こういう人になれってことねって。

冗談抜きで「即」ブックマークして、これから机に座る前には毎回観るべし!!少なくともオレは、折に触れて観るようにしています(笑)。

必要なのは、アクションとリアクションのワンセットなんだよ!

では、第2回の講義を始めましょう。前回の「名セリフ」に続いて講義したいのが、この「アクションとリアクション」。

キャラクター、設定、物語の構成といった主要なテーマに比べると地味な話なんですけど、ここを知っているのと知らないのとでは、あらゆる作品を書く上でのクオリティーが違ってきます。
ぶっちゃけた話、知っていると

「本質的につまらない話や何でもない話であっても、そこそこ商品レベルに面白くできてしまう」

そんなテクニックですね。なので「地味に超重要」といったところでしょうか。では行きましょう。

アクションだけでは物事を表現できない

例えば、主人公が「ケンカの達人」だったとしましょう。それこそパンチが当たれば巨大な岩すら砕くほどの(笑)

でも、この強烈パンチ、いくら設定上で強力無比とされていても、ただブンブンと振り回すだけでは……空を切っているだけでは……要するに当たらない限りは、全然すごく見えないんですよ。

「アクション」だけでは、読者に伝わらないってコト。

そのパンチが当たって、岩やモノを砕けるところがあり、また、ヒィーッと小便漏らして怖がる相手がいて……つまり「リアクション(反応)」が同時にあって、初めてそのパンチのスゴさは生きた形で伝わるんです。

例えば「キャプテン翼」であれば、翼くんがシュートを放ってボールがゴールするまでのわずかな時間に、少なくともこれだけのアクションとリアクションが入っています。

翼くんがシュートを放ち、決まるまでのアクションとリアクション

・シュートを放つ翼くん!(アクション)
  +
・「出たーッ! 強烈なドライブシュートーッ!」と実況が叫ぶ(リアクション)
・「いけーッ!!」とチームメイトや観客たちが期待を込めて叫ぶ(リアクション)
・ボールがすさまじい回転と軌道を描きながら、ゴールに飛んでいく(リアクション)
・飛びついたDFたちが、次々と弾き飛ばされる(リアクション)
・「止める!」キーパーが決意表明(リアクション)
・バシィーン! 衝撃音(リアクション)
・「キーパー吹っ飛んだァー!!」実況(リアクション)
・ズバーン! ボールがゴールネットを突き破る(リアクション)
・「決まったー! 残り時間1分、奇跡の同点ゴォーール! 南葛、試合をついに振り出しに戻しましたァー!」(リアクション)

↑最後の実況は、この1点の試合における意味や意義を読者に伝える、最重要のナレーション。

ちなみに同作品では、これだけ色々やってもシュートが決まらず、バーに当たって「ボールはまだ生きている!」(to be continued)というパターンも多いのですが。長くなるので省略します。

はい。グダグダ書きましたが、言いたいコトは1つです。

「もし、上記のシーンからリアクション部分を全部抜いたら、面白いですか??」

ちっとも面白くないはずです。味気ないし、結果だけ出されても、何がスゴイのか分かんないしで。

そして、昔の修行時代の私も含めてですけど、志望者さんの作品に最も多く見られる改善ポイントが、この「リアクション不足」だったりします。

「リアクション」なくして、情報は伝わらないんだ!

もし、あなたの書いた物語で、せっかくの重要情報や設定のすごさがちっとも読者に伝わっていないのであれば、原因はおそらくこの「リアクション不足」。

なぜなら、物事のすごさや重大さとは、往々にしてアクションよりもリアクションによって伝わるから。上の「キャプテン翼」の例もそうだったと思いますが、これはスポーツ物やバトル物に限りません。

恋愛物でも、単なる会話劇でも一緒です。

例えば、
『○○クン、2組の□□ちゃんと付き合ってるんだって!』

こーいう、少女漫画の主人公だったら大変な情報って、あるじゃないですか。意中の男の子が、もしかしたら他の女の子と付き合ってるかも! って場面。

そんなトンデモ情報も、主人公がリアクションせず、ただ黙って聞いていたら……。読者は何事とも思わない、そもそも事態を認識すらできないワケです。

『ええーッ!! まさか!!』
『ウソよ!! 絶対ウソだから!!』

この場合、大きなリアクションをキッチリと出すことが、前のアクションをさらに際立たせると同時に、読者にとって分かりやすい「ここ重要!」のサインになるんですね。

このリアクションがなかったら、読者はどんな重要情報もスルーしてしまいます。

だから逆に、ミステリーなどでは、重要なシーンや発言にあえてリアクションを入れないことで、分かる人にだけ分かる作りをすることもあるんですけど。

いずれにせよ、リアクションというのは意図的に散りばめていかないとダメ。

例えばの話、主人公が発するどんな名言、名ゼリフだって、聞いた相手に「それで?」だの「だから何?」だのとそっけなく返されたら、名言として認知してもらえないんです。

なかでもリアクションとして、最悪な表現の代表は「……(無言)」。

何かいいセリフやアクションを思いついたら、そのセリフへの反応まで含めて、ワンセットで自作自演することです。ただの言いっ放し、やりっ放し、そっけない反応では、『伝わる表現』にはたどり着けません。

セリフとリアクションの「美味しい関係」が分かったぞ!

第1回の講義では名ゼリフの生み方を紹介しました。で、その際、名ゼリフとは往々にして「断言」「言いっ放し」の類であるという話をしたかと思います。

復習:第一回 名ゼリフの正体
https://kindou.info/8325.html

なぜ、断言なのか? 実は、読者の心に刺さるということと別に、もう1つ理由があるんです。これはクイズにしてもおそらく誰も答えられないため、ここで言いますが……

『断言や言い切り表現は、相手から強いリアクション(反応)を引き出せる』

こういう特性があるんです。

例えば、電車内で席を空けてもらおう(笑)というとき、そのアクションが

「そこ、お席座れますか?」

こういう普通の挨拶だったら、相手の返事(リアクション)はイエスなら「あ、どうぞ」とか、ノーでも無言で新聞を読み続けるとか、そんなモンになるはずです。

でも……そのアクションが、

「オゥ、そこ空けたれや!」ドカーン! と乗客に蹴り! ……だったら?

これは大変です。

蹴られた乗客はうわぁ! と転げるかも知れませんし、あるいは「な、何をするだァーー!! 許さん!」と怒るかも知れません。周囲の乗客たちもきっと「ざわ…… ざわざわ……」となることでしょう。一気に臨戦態勢へ突入です。

それか、潮でも引くように周りの乗客すべてが、怖がって席を立ってくれるか。

もっと言えば最初のアクションが、いきなり拳銃を抜き、パーン! と席を空けない乗客の頭を撃ち抜くとかだったら、辺りは一瞬で「王蟲が攻めてきたぞーー!!」の恐慌状態になるワケ。

つまり、最初に突っ込むアクション1つで自動的にリアクションも大きくなり、結果、物語がどんどん盛り上がるということ。強い球を壁にぶつければ、壁からも強い球が返ってくるよ、と。そういう単純な理屈です。

よって、もしあなたの物語が「盛り上がらない」とお悩みなら、その原因も、最初のアクションが弱いか、リアクション(反応)までをきちんと描けていないことにあるのです。

リアクションを学ぶには「MMR」が最適だ!
ΩΩΩ「な、なんだってェー!!」

今回はクイズの代わりに、究極の「リアクション芸術」を紹介しましょう。

話のあらすじを普通に追うとまったく面白くなく、中身も皆無なのですが、そのくせ実際に読むと超絶に面白いという、マンガ史上最高にトンデモな作品です。

MMR-マガジンミステリー調査班-
http://www.amazon.co.jp/dp/B00APEICIS

「トンデモ台詞(アクション)と、そこに対する極端なリアクション」

この2つだけで作品は面白くなる! というコトを、骨髄から理解できるのではないかと。ではまた!

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)

1974.10.12.うまれ。
東京都台東区の山谷地区出身。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、専門学校や声優養成所の事務員として働きながら漫画原作者に師事し、シナリオライターに。コンビニ向けのペーパーバック漫画やゲームのシナリオライターとして活動する。現在は通常のライター業も請けつつ、KDPでオリジナル作品を発表中。他に、自分と同じKDP作家を支援する活動も行なっています。→『きんぷれ!』(http://kin-pre.com

この連載がKindle本になりました


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