次は君の番なのだ!神野オキナの名作案内『吸血鬼ハンターD』

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こんにちは、小説屋の神野オキナ です。『あそびにいくヨ!』や最近『リラム』『エルフでビキニでマシンガン!』などを書いております。

小説書きは本を読まないとやっていけない生き物ですが、同時に、その読書は「敵情視察」と「情報収集」がメインであるという因果な部分があります。

とはいえ、大抵の小説家というものは最初は本が好きでたまらない、というところから始まるわけですから、作家になる前は純粋に本を読み楽しんでいた時期がありました。

特に今私が手がけているジャンル、「ライトノベル」。この名前が出てくる前にはこの手の中学生〜大学生ぐらいまでを対象にしたSFやファンタジー、恋愛ものなどは全てひっくるめて「ヤングアダルト」、もしくは「ジュブナイル」という名前で呼ばれていました。

その定義と歴史は…………と言い出すと色々面倒くさいのでここでは省略します(興味のある方は調べてみてください)。

これは完璧に当時の私感なので、実際はどうか分かりませんが、と前置きした上で申しますと、私が中学生のころ(80年代初頭から半ば)、沖縄という地方の本屋の片隅で、このジャンルは男女に分かれ、それぞれとある一社の独占状態でした。女性向けは氷室冴子先生と新井素子先生などを筆頭にしたコバルト文庫。男性向けはソノラマ文庫の独占だったいってもいいでしょう。

それまで「年齢の高い大人が子供たちを楽しませるために書いた」作品は数多くありましたが、「年の離れた兄(あるいは姉)ぐらいの年齢の人たちが一緒になって楽しむ為に書いた」作品はほとんどありませんでした。

ソノラマは初期ラインナップはともかく80年代になってそういう作品をわっと出してきたわけです。新しい本屋に入ると、緑の背表紙に刻まれたペガサスマークの棚がないか、必死になって探したのを覚えています。

そんな中学生から高校生までの間、生きがいでもあった三作品をご紹介する第一回。まずは80年代ソノラマ文庫の「顔」だった菊地秀行先生作品から。

次は君の番なのだ!神野オキナの名作案内『吸血鬼ハンターD』

吸血鬼ハンター1 吸血鬼ハンター“D”

菊地秀行 (著), 天野喜孝 (イラスト)
価格:540円 35%ポイント還元
★★★★* 14件のレビュー

辺境の小村ランシルバに通じる街道で“貴族の口づけ”を受けたドリスは、吸血鬼ハンターを探していた。西暦12090年、長らく人類の上に君臨してきた吸血鬼は、種として滅びの時を迎えても、なお人類の畏怖の対象であり、吸血鬼ハンターは最高の技を持つ者に限られていた。そしてドリスが、ついに出会ったハンターの名は“D”、旅人帽を目深に被った美貌の青年だった。

今も続く菊地秀行先生の代表作のひとつ。

数千年先の未来、人類は一度吸血鬼に支配され、それをはね除けて戦い、再び地上の覇者となったものの、未だに吸血鬼の支配時代に作られたテクノロジーの遺産や、それによって生み出された数種の魔物に脅える世界に。とある辺境の村へ続く一本道、夕陽の中、通りすがりの馬上の青年にいきなり鞭を振るう少女、鮮やかに避けたその美青年に少女が問う。

「あなた、”ハンター”ね?」

オープニングからして、リアルタイムで読んでいて「これは名作になる」と感じたものです。

吸血鬼をモチーフにした作品は色々ありましたが、この題材を主役として取り上げたのはせいぜい萩尾望都先生の「ポーの一族」、そして真っ正面からマシスンの「地球最後の男」を翻案した藤子・F・不二雄先生の「流血鬼」ぐらいのもので、この作品はそのホラーに超人戦闘活劇という要素を叩き込み、かつ超未来のSF……それもゴシックパンクという豪奢な作品でした。

しかもこれらを「旅行帽(トラベラーズハット)」「戦闘ベルト」など独自の造語を交えて、すらっと冒頭10数ページ終わらないうちに見せちゃうという手練れの上手さ。寡黙で蔭があり、自らの素性も過去も語らず、「光すら斬る」と言われる剣技を持ち、しかし弱い者には優しい謎の青年「D」と相棒の口は悪いがどこか愛嬌のある「左手」。

彼に「仕事」を依頼するドリスの気丈さと、人としての脆さ、さらに吸血鬼ものの醍醐味である「最良の仲間が最悪の敵に変容してしまう」という部分もしっかり抑えてあるという。

日本において吸血鬼の社会の構造の根幹を「貴族制度」にし、ゴシック調の衣服を纏うようになったのもこの作品の影響だと言い切っても良いでしょう…………この作品がなければ「ヘルシング」も「トリニティ・ブラッド」も「終わりのセラフ」も今とは全く違う形になったでしょう。

オカルトものに刃物などの武器を持つ「ハンター」という要素を混ぜ込んだという意味ではもっと影響の規模は大きいはずです。

それだけではなく、この作品は西部劇の定番である「流れ者が悪党を倒して去って行く」話でもあります。そして「俺たちは、かりそめの客なのだ」というDの言葉の意味に代表される「失われたもの」への哀惜。そこに超人魔人が絡んでの戦いが起こるわけですから面白くないわけがない。

古臭いと当時でさえ思っていたパターンが切り口を変え、作り込めばここまで魅力的に描くことができるのか! という驚きのままにページをめくりました。

物語の後半において、それまでほぼ無表情のDが浮かべる唯一の感情の表れは、物語とキャラクターに忘れられない余韻を与えます。

それが最大限に結実するのが物語最後の一文。

「次は、少年の番なのだ」

の言葉を読んだ時の興奮というか、感動というかをどう表現すればいいものか。未だに答えが見つかりません。

この作品と並行してソノラマに並び立つことになる、高校生にして世界最高のトレジャーハンター八頭大を主役にした「エイリアン」シリーズは「少年少女向けの本でここまでアクセルを踏んでいいんだ!」という驚きと「アクセルを踏んでくれる作家がいるんだ!」という衝撃が二重になって登場してきました。

二作目の苦く、そして爽やかな読後感のある青春群像劇になっている「風立ちてD」と後にアニメ化された「D-妖殺行」もお薦めです。

では、次は菊地秀行先生の爽快な疾走感とは真逆の濃厚で重々しい怒濤の展開が魅力だった朝松健先生の作品「逆宇宙ハンターズ」の一作目から。

この記事を書いた人:神野オキナ Twitter

エルフでビキニでマシンガン!

神野 オキナ (著), bob (イラスト)
価格:580円 14%ポイント還元*
★★★★* 3件のレビュー

卒業まであと一年というある冬の日、俺は親戚連中の理不尽な強権で高校を転校することになった。最後の別れをと、いつも放課後に顔を合わせていた不思議な雰囲気の漂う美人の先輩と言葉を交わして教室を出ると(……)次の瞬間―!?純真無垢なエルフ軍団がビキニ姿でマシンガンをぶっ放す、前古未曾有の異世界召還グラディエーター遂に登場!ヒー・ハーッ!!

リラム ~密偵の無輪者~

神野 オキナ (著), 西E田 (イラスト)
価格:750円 29%ポイント還元
★★*☆☆ 3件のレビュー

王も国も意味を失って崩壊した世界。かつて国を為した組織は経済集団と定義され「圏“エスティズ”」と呼ばれるようになっていた。東にあるヒウモト圏の継承第二位のレイロウは自らその権利を放棄したにもかかわらず、頭脳の冴えゆえに、第一位主である兄からは却って疑われてしまい(……)いまだ兄の殺意が貿易商の形となって伸びてくる。ある日、レイロウはマリエイラから、圏が侵略の危機にさらされる前にと、ヒウモトとの外交補佐に紛れた諜報を依頼されるのだが―。

南国戦隊シュレイオー 上 神野オキナ・ベストシリーズ

神野 オキナ (著)
価格:107円 20%ポイント還元
★★★★☆ 2件のレビュー

空中に浮かんで必殺技を繰り出している白銀の騎士と奇怪な鬼を、飛行中のジャンボジェット機から目撃したのが、すべての始まりだった。多少の霊能力はあるが、マンガ好きの平凡な高校生にすぎない御鏡旅士は、こともあろうにその白銀の騎士、すなわち仙術機=巨大ロボットのパイロットにスカウトされてしまったのだ。シュレイオー・チームの一員として。なんと沖縄では、その存続に関わる戦いが、奇怪な妖術戦闘メカ相手に繰り広げられているらしい。

著者プロフィール

1970年沖縄生まれ、在住 1995年別名義で作家活動を開始 1999年神野オキナに改名、
「かがみのうた」でファミ通えんため大賞小説部門奨励賞を受賞
「かがみのうた」は後に「闇色の戦天使」に改題されてファミ通文庫で刊行(現在絶版、元タイトルに戻しての電子書籍化予定)
ソノラマ文庫「南国戦隊シュレイオー」で初のコメディに挑戦(現在マイナビ文庫より電子書籍化)。
2003年MF文庫で「あそびにいくヨ!」第一巻刊行。以後、漫画化、アニメ化されて本編全20巻、外伝4巻の代表作となる。現在も精力的に活動中。
Amazon 神野オキナ 著者ページ

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