「人生にもっと文学を!」現役書店員が同業者に『火花』と一緒に紹介して欲しい8作品

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きんどうをご覧の皆さま、こんにちは。そして初めまして。あなたの近くにある本屋・・・かもしれない、どこかのチェーン店で黙々と棚を作り続ける、【積読書店員ふぃぶりお】と申します。

小説・コミックをこよなく愛し、担当ジャンルの理工書・ビジネス書にまで手を広げては、気になる作品を買いだめする日々。あぁ、積読タワーの消化に追われる素晴らしき読書三昧の日々。

読書への情熱に傾きすぎて、下の階の住民から「扉が開かなくなった! あんたの本棚の真下にある部屋なのだから、あんたが原因!! 本を捨てろ!!」という衝撃的なクレームの入った書店員のホントの(本との)肉弾戦バラエティーでお送りいたします(ちなみにこのクレームは完全実話)。

そんな積読系現役書店員が、又吉直樹さん『火花』を読んだ人へプレゼンする「つぎに『どの作品』を手にしたらいいか」! 仕事熱の燃え上がった同じ書店員や、読書熱の冷めやらない読者に知ってほしいイチオシ文学作品のまとめをお送りします。

書店の現場で、ぜひともこの『火花』と併売していただきたい作品たち。そして、読者にとっても、ぜひともこの『火花』とあわせて読んでいただきたい文学作品たち。

さぁさっそくはじまり、はじまり。

また、この記事を読まれた同業者の方には、ぜひ『わたしならこうする』などなどご意見をもらえると大変勉強になります! ここはひとつ、ふぃぶりおのくせに(!)と叱咤激励をよろしくお願いしますw

現役書店員が同業者に『火花』と一緒に紹介して欲しい8作品

いまSF界で最も注目を集める新鋭作家が紡ぎ上げた、秀逸な短編集

紙の動物園

ケン リュウ (著), 古沢 嘉通 (翻訳)
価格:1,847円

【又吉直樹氏がTVで推薦した話題作】〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞受賞〉ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた……。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか(……)現代アメリカSFの新鋭がおくる短篇集

珠玉という言葉は、「宝石・真珠。比喩として、尊い、美しい、賞すべきもの」を指すが、この短編集にまさにぴったりとハマる言葉だ。芸術は、時空や存在、ましてや言語を超える。その輝きを本書で見ることができる。

内容も実にバラエティに富んでいる。儚さや周囲との関係を描く表題作「紙の動物園」、不死を題材にする姉妹作「円弧」と「波」、4ページに満たない紙面の中でハチャハチャSF・バカSFを体現する「潮汐」。そして大宇宙の知的種族たちによる、知識の継承をウィットに綴る「選抜宇宙種族の本づくり習性」。……などなど、笑いあり、涙あり、驚きありのフルコース15篇を有する。

先日又吉さんも某番組で、いま読んでいる作品として取り上げていた。SFやファンタジージャンルの愛読者でなくとも、この作品たちには惹きつける魔力が備わっている。

あの恋愛マンガ原作者が描く、青春讃歌

板橋雅弘 (著), 江頭路子 (イラスト)

時をかけたいオジさん
価格:616円

平凡な中年オジさん、西東彰比古はバツイチ。寂しくも気ままな独身生活を送る46歳。そんな彰比古の前に初恋の彼女、留子が突然現れる。彼女は別次元の地球から来たという。しかも、30年前に行くはずが「次元の迷子」になったと。彰比古は、16歳の留子に翻弄されながら、なんとか彼女を30年前に行かせようとするが、未来を書きかえるため、彼女が戻るのを妨害する敵が登場し…。中年オジさんの初恋が再び花開く!!

板橋雅弘という存在は、僕たちアラサーアラフォー世代に特に馴染みがある。王道恋愛の金字塔マンガ「I”s<アイズ>」と並び、淡い恋心に染め、青春の輝きを放ったあの「BOYS BE…」の原作者なのだ。

異次元な世界、世界滅亡、初恋。『時をかける〇女』とは一部似ているような……似ていないような設定……。ラノベの如きご都合主義にみえる箇所すら魅力に感じる内容に、あの漫画に超絶ときめいた若き日の自分をくっきりと思い出す。

「また会いたい」すべてを欲張った美味しい食堂メニューたち!

木皿食堂

木皿泉 (著)
価格:562円

伝説のドラマ『すいか』以降、その作品世界が熱く支持されている夫婦脚本家・木皿泉。何気ない日常が愛おしくなるエッセイや、創作への熱い情熱が伝わる羽海野チカとの対談をはじめ、貴重なロングインタビューやシナリオなどを、一冊にギュッと収録!思わず心をわしづかみにされるコトバとの出会い、ここにきっとあります。

三島由紀夫、村上春樹、林真理子、三浦しをん、朝井リョウ、西加奈子、そして又吉直樹。作家だけではなく、エッセイストとしても秀逸な文章を書く彼ら。彼らと同じく言葉の魔術師なのが、木皿泉だ。

惜しくも小説「昨夜のカレー、明日のパン」は本屋大賞を逃したが、脚本家としてその名を轟かす。亀梨和也と山下智久のW主演でテーマ曲『青春アミーゴ』も大ヒット、鮮烈なインパクトを残した「野ブタ。をプロデュース。佐藤健と前田敦子の掛け合い(とあの事件……)で記憶に残る「Q10」。

ドラマと同じように、本書も言葉のチョイスが秀逸な内容。またエッセイ、羽海野チカとの対談、書評、シナリオ講座まであるという贅沢な内容。

本書には続編『木皿食堂2  6粒と半分のお米』もあり、併せてオススメしたい。同書もまた“絶品”の表現に包まれている。ちなみに著者木皿泉は、和泉務と妻鹿年季子の夫婦で執筆を行う共同ペンネーム(そしてペンネームの由来は「キザな和泉」→「きざらいずみ」)。キザだけど飾っていない魅力にあふれる文章たち! 2人の言語感覚は至高のお品書きだ。

球児たちの夏! 「スポーツを通じて蘇る、青春の一コマ!

敗者たちの季節

あさの あつこ (著)
価格:1,300円

甲子園初出場をかけた地区予選決勝で敗れ、海藤高校野球部の夏は終わった。だがそこへ、優勝校・東祥学園が出場を辞退したという報せが届き――。敗者のままでは終われない。読めば誰もが胸打たれる鮮烈な青春小説!

春と夏。最後まで校歌が流れる「甲子園」のその場所に立つことを許されるたったひとつの学校。

勝者がいれば敗者がいる。そう、この一校を除いて、すべて敗者となってしまう。もちろん、野球というゲームに敗れたに過ぎないが、当事者にとってはすべてを奪われた気持ちになることもある。

「バッテリー」を始め、野球小説の第一人者あさのあつこが綴った本書は、地区大会の決勝で敗れながら、ライバル優勝校の不祥事によって甲子園出場となる海藤高校野球部を中心に描く連作短編集。登場人物は、球児以外に監督、保護者、新聞記者とその周囲の人物にもスポットライトを当てている。

幸か不幸か、人は「甲子園」という空間に物語を求める。

ただ人生に勝ち組・負け組という言葉はふさわしくない。自分に勝ったか、負けたか、そこが問題だ。

芥川賞作家が贈る良質なエンタメ作品!青春とは年齢ではなく心の持ちようを表する!

森は知っている

吉田修一 (著)
価格:1,296円

自分以外の人間は誰も信じるな―子供の頃からそう言われ続けて育てられた。しかし、その言葉には、まだ逃げ道がある。たった一人、自分だけは信じていいのだ。ささやかでも確かな“希望”を明日へと繋ぐ傑作長篇!

著者の前作「太陽は動かない」に出てくる鷹野一彦の若き頃という設定であるが、前作を読んでいなくても全く問題ない。壮絶な過去から彼はどのように産業スパイとなったのかという誕生秘話になっているが、スパイ小説というよりもすぐソコにある世界に立ち向かうというリアリティを描いた小説だ。「一日だけ」なら生きられる、頑張れる。それを「繋いで」ゆけばいい。

ハードボイルドとしてもエンタメ作品としても力強く薦めたい小説だ。

有名人小説とは言わせない! 心苦しさも悩みも吹き飛ばすような4つの心温まる話

解夏

さだまさし (著)
価格:648円

東京で小学校の教師をしていた隆之は、視力を徐々に失っていく病におかされ、職を辞し、母が住む故郷の長崎に帰った。懐かしい町を目に焼き付けようと日々歩く隆之の元に、東京に残した恋人の陽子がやってくる。陽子の将来を憂い、この先の人生を思い悩む隆之。そこに、かつての教え子たちから手紙が届く…。表題作「解夏」ほか、全4作品を収録。

「火花」だけではなく、【有名人の書いた小説】というジャンルを超えて輝く作品がある。例えば、劇団ひとり「陰日向に咲く」、NEWSの加藤シゲアキ「傘をもたない蟻たちは」。

彼らを先行くこと三十数年前に小説を書きはじめ、そして今から14年ほど前。「精霊流し」という名作を世に送り出し、次に産み落としたのがさだまさしによる本作品。

映画化され、ドラマの原作にもなった本書は、外国人嫁、嫁姑、家庭内別居、アルツハイマー、失明など話題としては「とっつきやすい内容じゃない!」、そう思う方もおいでだろう。

しかし、読み味はまったく重くない4つの物語と向き合ったとき、きっとあなたの胸に残るのは、優しさと仄かな切なさ。心の深くに刻まれる、記憶に残る作品となるであろう。

【ダリアのような大きく明るい笑顔と共にある日常】色とりどりの花はそれぞれ違うからこそ、その存在が際立つ

ダリアの笑顔

椰月 美智子 (著)
価格:702円

「綿貫さんち」は4人家族。「明るく笑うもう一人の自分」を空想する長女・真美。主婦業と仕事をこなしながら、揺れる40代を惑う母・春子。転校生の女子に投手の座を奪われそうな長男・健介。経理課係長の仕事に疲れ、うつ病を心配する父・明弘。どこにでもいそうな家族が、悩みを抱えながらお互いを支え合う日常を、それぞれの視点から描いた小さな宝石のような物語。

椰月美智子作品の中では新刊『14歳の水平線』も極めて良質な出来。親子の物語であると同時に、14歳であったすべての人に送る冒険小説でもある。ほか、売り出し中の作家である早見和真が書いた、『ぼくたちの家族』もまた家族の在り方にスポットライトを当てた巧みな作品であり、あわせてオススメしたい。

近年脚光を浴びる、芥川賞候補作家! その若すぎる死は文学界の損失

海炭市叙景

佐藤泰志 (著)
価格:658円

海に囲まれた地方都市「海炭市」に生きる「普通のひとびと」たちが織りなす十八の人生。炭鉱を解雇された青年とその妹、首都から故郷に戻った若夫婦、家庭に問題を抱えるガス店の若社長、あと二年で停年を迎える路面電車運転手、職業訓練校に通う中年男、競馬にいれこむサラリーマン、妻との不和に悩むプラネタリウム職員、海炭市の別荘に滞在する青年…。季節は冬、春、夏。北国の雪、風、淡い光、海の匂いと共に淡々と綴られる、ひとびとの悩み、苦しみ、悲しみ、喜び、絶望そして希望。才能を高く評価されながら自死を遂げた作家の幻の遺作が、待望の文庫化。

佐藤の出身地函館をモデルにし、炭鉱で栄えた「海炭市という架空の地方都市を舞台に、織りなす人々が感じる等身大の心の苦悩や葛藤を描く。現在から20年以上も前に、「地方の閉塞感」という今ではあちらこちらで見られる光景を、市井の人たちの生活ぶりから浮かび上がらせた。

彼の遺作となった本書(そして本書執筆中の自死により未完となりながらのこの完成度)にも、昨年映画化もされた『そこのみにて光輝く』や『佐藤泰志作品集』にぜひとも触れてほしい。彼という才能の早世は、文学界にとって損失に違いないと私は思っている。

おわりに

店頭に並ぶと同時に、瞬く間に押し寄せる幾多の手に吸い取られていく又吉直樹『火花』。

メディアの力もあるが、もとより彼らを魅了する原動力は、作品そのものだ。

そしてその作品の醍醐味は、読者の脳内で繰り広げられる、あんなコトやこんなコト。

解釈のバリエーションが数通り、いや数万通りになり得ることではなかろうか。

それは解釈の広がりが絵柄として、ある意味固定化されて描かれる、コミックやラノベであってもおんなじこと。

「これが文学の力だ」

これは、文學界9月号に寄せた中森明夫氏≪おたく(オタク)という言葉の生みの親でもある作家・名コラムニスト≫の又吉直樹論の一節だ。

私は書店員としてではなく、読者として文学作品の力に助けられてきた。

古典となった作品たちを描いた芥川や太宰が生きた、人生4、50年という時代ではなくなった。

ときに80年を超える、人生の旅路で「必然」の出逢いが求められている。

あなたが歩く長い長い人生の旅路。そのお供に選ぶような作品に巡りあえることを願って止まない。

私の出逢った旅のお供。作品の力は永遠に私の心に突き刺さったままだ。

きっと「この『作品たち』は、あなたの人生のなにかを変えるんじゃない」のかと文学の力を信じている。

書店の現場で、ぜひともこの『火花』と併売したい作品

読者にとって、ぜひともこの『火花』と併読したい作品

あなたならこのお題、どういう本を選びますか?

この記事を書いた人

積読書店員ふぃぶりお fiblio2011
チェーン店舗勤務の書店員。これまでの担当分野は、ビジネス書・資格書、理工書、文具などを経験。

本と本屋さんとそれをつなぐ人々について情報発信している。自分のイチオシや、いろんな人に勧められるまま作品を読んでは垂れ流している。

ときどき各地に出没しては弾丸ツアーやイベントにうつつを抜かすダメ書店員?

新刊情報をいち早く読み漁る反面、既刊と過去のネット記事を掘り起こすことも趣味らしい。

ツイッター・・・作品情報を中心に、書店と読書とイベントな日々をツイート・リツイート雑食気味。

ブログ『積読書店員のつくりかた』・・・大好きなコミックや小説などをおすすめしつつ、本屋のお仕事も紹介する美味しいとこ取り「ネタ系ブログ」!?
http://fiblio.hatenablog.com/

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