森見登美彦・伊坂幸太郎系が好きな人にオススメしたい心に響くライトノベル6作品

こちらの記事は2015年7月に実施された角川夏のライトノベルセールにあわせていただきた寄稿記事です。セール終了に伴い記事の内容を変更しています。

3回目の登場になります、ライトノベルレビューブログ「この世の全てはこともなし」gurgur717です。

ライトノベルは「異能バトルしかない」「お手軽ハーレムしかない」そんな思い込みがありませんか? 現在、主要なライトノベルレーベルから出される作品は1ヶ月で150冊以上もあります。「ライトノベル」という枠内で実に多種多様なジャンルの作品が出されているわけです。 そこで今回、普段はライトノベルを読まないなーという方に、これを機に知って欲しい作品をご紹介します。

森見登美彦・伊坂幸太郎系が好きな人にオススメしたい心に響くライトノベル6作品

SF作家シオドア・スタージョンの言に「どんなものでも9割はガラクタだ」という言葉があります。この言葉には個人的にかなりの異論があるのですが、それはそれとして一つのゆるぎがたい事実を提示している言葉でもあります つまり「どんなジャンルでも10%は文句なく素晴らしい」ということです。

2014年に主要なレーベルから発売されたライトノベルは1,800を超えます、スタージョンの法則に従っても180、個人的にはもっと多くの名作・奇作・怪作が日々生まれているんです。そして、そんな名作は今回の半額セール対象にも数多く含まれています。

電子書籍のセールについては賛否があると思いますが、毎月多数の新作が刊行され埋もれてしまう作品も多いライトノベルというジャンルでは、過去の作品に再び脚光が当たる、打ち切りが決まっていたシリーズの継続が決定するなどのプラスの側面があるとも聞きます

今回はその中でも普段はライトノベルを読まない、けど森見登美彦・伊坂幸太郎系作品が好きという方におすすめできる作品をセールの中からチョイスしてみました。全部で6作品。少し昔の作品もあれば、最近発売された作品もあります。よければ読んでみてください。

森見登美彦・伊坂幸太郎好きにオススメしたい心に響くラノベ6作品

このエンディングを見逃すな。全5巻をかけてひとつの純愛を描く最高のファンタジー

この「カナクのキセキ」は2011年に発売されたファンタジー小説になります。

魔法学校を卒業したばかりのカナクが、恋人でもない同窓生の天才魔道士・ユーリエと共に巡礼の旅に出るストーリー。

1巻は二人が旅する「表」と、謎の女性・マールがあてもなく放浪する「裏」のパートに分かれており、この表と裏が物語終盤にキレイにまとまっていく流れは見事としか言いようがありません。

そして、2巻になると1巻とは時代も登場人物も一新されて、読者を「このキャラクター達はカナクとユーリエにどう関係があるんだろう?」と物語に引き込んでいきます。

各巻ごとに、様々なギミックを用意して読者を楽しませるシリーズで、全5巻をかけて物語の舞台となるアレンシア大陸の各地と歴史を巡りながら、一つの純愛を描く作品でもあります。

世界のために引き裂かれた二人が、長い長い旅路の末に行き着いたエンディングを思い返すと色々と考えてしまうストーリーでした。純愛モノが好きな人にオススメしておきます。

せつなさの達人・乙一の傑作短篇集。一気にまとめて読んで欲しい

乙一氏の短篇集から2作品を選びました。

乙一氏ほど今回のタイトルにあるような「オレツエー」が似合わない作家はいません。彼の作品の主人公はたいてい生きる場所が定まらない人間で、強くもありません。

友達がいないから携帯電話を持てない女子高生だったり、粗暴ゆえに特殊学級に入れられてしまった少年であったり、目も見えず耳も聞こえず指先しか動かせない男であったりします。

そして、彼らが幸せになるストーリーでもないのです。

例えば「さみしさの周波数」に収録されている「未来予報 あした、晴れればいい」は、未来を予言する少年に出会った主人公が「お前たち二人、どちらかが死ななければ、いつか結婚するよ」と微妙な距離感ある少女との将来を宣言されてしまい、気恥ずかしさから疎遠になるという導入部からはじまります。

少女と仲良くなるわけでもなく半端者として成長していく主人公の人生の息苦しさ、そして物語後半のある会話でどうしようもない切なさを感じてしまいます。将来において夫婦になるかもしれない二人、そんな関係性に訪れた結末の会話を何度も読み返してしまいました。

切ない系の作品が多いですが、中にはホラー風味であったり、小気味の良い結末の作品もある短篇集です。2冊まとめてオススメしておきます

「幸せに生きる」をどう受け止めるか。奇妙で不思議でフワフワな短篇集

この作品は2013年にネット発でMF文庫Jから出された不思議な短篇集になります。収録作品は以下の通り。 

第1話 マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。
第2話 彼女はコンクリートとお話ができる
第3話 ぱらぽろぷるんぺろぽろぱらぽん
第4話 嘘つきセミと青空

この作品は独特なまでのノンビリとした作風で、とても奇妙なモノを描くのが特徴です。

例えば「ぱらぽろぷるんぺろぽろぱらぽん」は「ぱらぽろぷるん」が主人公で「ぺろぽろぱらぽん」がヒロイン、宇宙を舞台にこんな風に物語が進んでいきます。

「愛しているとのー」
ろぽろぱらぽんちゃんは、僕の七十六の瞳をじっと見つめながらそう言った。
マカロンを一切れ飲み込んでべろんべろんに酔っ払ったぺろぽろぱらぽんちゃんの頬は、ほのかにエメラルドグリーンに染まっている。
いつもと雰囲気の違うぺろぽろぱらぽんちゃんに、僕は戸惑ってしまった。
(書籍版 161ページより)

そうなんです、宇宙怪獣同士の純愛ストーリーになっているのです。

身分違いの恋に懊悩しながらも、ぱらぽろぷるんがぺろぽろぱらぽんを許嫁達から「卒業」のラストシーンの如く奪い去り、彼女が死ぬ八千四百万年の間を幸せに過ごした後に、彼女が言い残した「生きるってなんだろう?」ということを考えるのです。

勢いにのって第3話のストーリーをほとんど書いてしまったような気もしますが、気にしないでください。この作品のキモはストーリーの粗筋や細かい辻褄ではなく、登場するキャラクター達が「幸せに生きる」ということをどんな風に受け止め実現していっているのか、それが重要なんです。

そんな独特の多幸感と切なさに溢れる「 マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。」をオススメしておきます。

残念なのは、このデビュー作の発売から2年が経とうとしているのですが、著者の第2作が未だに出ていないことです。 失礼しました、著者の第2作「殺したがりの天使ちゃんは黒木君の夢を見る」が発売されていました。

今年6月リリース!言葉選びのチョイスが風変わりすぎる、これからが楽しみなラブコメ

こちらは2015年6月に1巻が発売されたばかりのライトノベルになります。主人公・玉木走太(あだ名が「たまらん」)と彼を取り巻く人間関係のラブコメで、「多角関係の恋愛」をテーマとしています

主人公はA子が好きで、A子はB夫が好き、B夫とC太はD美が好きで、E花はC太が好き。D美が好きなのは主人公!(※名前はテキトーです)

こんな感じの「身近な友人達のヤヤコシイ恋愛感情」を知ってしまった主人公が右往左往するのストーリーになっています。

著者独特の言葉選び(「びっくら仰天驚き桃の木山椒の木」「雰隠れ才蔵させてください!」等、なかなか普通に出てこな言い回しが多いです)も相まって、かなりおかしなラブコメになっています。
まだ1巻しか出ていないので、今後このヒネクレたキャラクター達の恋愛模様がどうなっていくのかが楽しみなシリーズです。

テンプレートで終わらなかった、ラノベ恋愛モノの最高峰

「おまえをオタクにしてやるから俺をリア充にしてくれ!」は通称「オタリア」と呼ばれています。

余談になりますが海棲哺乳類でも「オタリア」というアシカみたいな動物がいまして、画像検索をするとラノベイラストとアシカが混在しているのが面白いです。

ストーリーの方は、オタク嫌いのクラスメイトを好きになったオタクの主人公と、イケメンのオタクを好きになったギャルがお互いの恋愛成就のために協力関係を結ぶという、発売当時、タイトルと共に「テンプレート」とも言われた作品でした。

しかし、ダサくてイケてない主人公を読者の胸を抉るような暗黒面に陥らずに描くことに成功しており、彼の成長とともにヒロインたちに好意を寄せられまくるハーレムコメディ物としても楽しめる作品でした。

高校生編は10巻で完結しており、終盤は登場人物たちが今まで誤魔化してきたこと、勘違いしていたこと、見逃してきたこと、先送りしていたこと、鈍さという理由で気づけなかったこと、ラブコメにありがちな『そういうもの』を全部白日の下にさらけ出して、それぞれのヒロインと対峙して感情と言葉をぶつけ合う、面白いんだけど、読んでいてとても疲れる展開だったことを覚えています

現在は大学生編としてシリーズが続いています。続編ともどもオススメしておきます。

さいごに。この記事を書いた人

今回、角川夏のライトノベルフェアということでの大規模セールセールは終了しました)、これはライトノベルブログの管理人として黙っていられません。

日々、名作・奇作が生まれ続けるライトノベルの魅力を知ってもらうために全てのセール対象作品をチェックして普段はライトノベルを読まないなー、という人にもオススメのライトノベルをチェックしてみました。
チェックしているうちに、

「あっ! この作品が電子化されてる!」
「ああっ! あれはまだ電子化されてないのか!!」
「あんまり知られてないけどこの作家は電子化を許諾してないのかよ!」
「半分くらいまで文章書いたけど、そう言えば前回に取り上げたよ、このシリーズ!」
「アソコのレーベルはセールに参加しないのか!」
「取り上げたいのはもっとあるけど、これ以上書くとブログが更新できない!!!」

等々の呻きを漏らすことになったのはまた別のお話です。そんな過程を経て6作品のライトノベルを選んでみました。

電子書籍のセールについては賛否があると思いますが、毎月多数の新作が刊行され埋もれてしまう作品も多いライトノベルというジャンルでは、過去の作品に再び脚光が当たる、打ち切りが決まっていたシリーズの継続が決定するなどのプラスの側面があるとも聞きます。

今後も色んなレーベルの多種多様な作品が電子化されることを切に願いながら、今回はこちらの作品をオススメします。

プロフィール
gurgur717 @golgol888
書評ブログ「この世の全てはこともなし」管理人
「この世の全てはこともなし」http://blog.livedoor.jp/gurgur717/

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ライトノベルレビューブログ「この世の全てはこともなし」が執筆した、2014年のライトノベルの概要をまとめてみた作品です。 2014年のライトノベルの概要がこの1冊でわかります。

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