デジタル文芸誌が成功するか質問されたので考えてみた。

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こんにちは、きんどるどうでしょうです。数日前に某出版社の編集者さんと「デジタル文芸誌」が成功するかをテーマに茶飲み話をしまして、なかなか楽しかったのでそのお話。

デジタル文芸誌といえば出版社だと『別冊文藝春秋』『文芸カドカワ』『小説屋sari-sari』『つんどく!』『アンデル』『BOX-AiR』『Web-non』『GA文庫マガジン』とか? 個人だと『群雛』『AiR』『澪標』『月天』『oase』。ちょっと毛色が違うけど『と学会誌』なんかも含まれるのかな。紙と比べるとグッとすくないですが、それなりの作品数がKindleストアで配信されていますな。

基本的に電子書籍だけで上手くいくほど、優しいビジネス環境ではまだないのでデジタル文芸誌、上手く行くといいですなあ。

出版社の編集者さんから「デジタル文芸誌」が成功するか質問されたので考えてみた。

今回、ご相談いただいた出版社・編集者さんとは面識はなく、また電子書籍そのものにはあんまり詳しい人でもなくきんどう30ヶ月目の記事を見て「電子書籍の紹介だけで飯を食ってるという人なんで話を聞きたかった」ということで連絡されたんですって。業界的に珍獣みたいなもんですからねぇ。本を紹介してくれとかは基本断ってるのですが、新企画とかが伺えるなら面白そうだなと思ってお会いしました。

新たにデジタル文芸誌の創刊を模索しているということで、各社のデジタル文芸誌について話したり、聞ける程度の担当作家さんのことなどを伺いました。目標とする成功の定義については「雑誌そのもので黒字化させる」というなんとも大胆なお話でして。わたしは文芸誌については門外漢なんで、他社事例や電子書籍のプロモーションのアイデアについてお話をしてきました。

『デジタル文芸誌』各社・個人の取り組みについてわたしが知ってること

冒頭でいくつか事例をあげましたが、一番歴史あるデジタル文芸誌は祥伝社の『WEB-NON>』ですかね。なんとデジタル月刊誌として13年目。最近創刊されたものでは角川のエンタメ雑誌「文芸カドカワ」。文藝春秋は電子時代を見据えてと鳴り物入りで始めた「つんどく!」と、完全電子化を発表した「別冊文藝春秋」かな。一部書店で販売もしてはいますが半デジタル的な中央公論新社「アンデル」も加えていいかも。

毛色が違うものだと角川が「本読み女子に贈る、旅と冒険の物語マガジン」→(その後キャラ文芸誌になりました)という『小説屋sari-sari』と、本気でアニメ化を見据える講談社のエンタメ誌「BOX-AiR(更新停止)」やGA文庫の新刊情報+αをお届けする「GA文庫マガジン(更新停止)」ですかね。ザッとあげましたが、他にもあるかもしれない。

あと、配信されたばかりですがアウトドアブランドのカタログにマンガ家や作家のエッセイを載せたという「A&F COUNTRY総合カタログ」は斬新なアプローチですし、スポンサーがしっかりしてるのでとても良い取り組みと思う。

それでもどれか頭ひとつ抜けてKindleストアで成功してるか、と聞かれるとわかんないなあ。少なくともランキングの上位で見かけることないし。これが個人の作品になるとかなり厳しいんじゃないかしら。紹介するときは結構上の方になるよう意識してるのだけれども……。

一方で雑誌というくくりで言えば『アフタヌーン』『週刊少年マガジン』などのコミック誌は毎回きんどうの週末売上上位に入ってきますし、『週刊アスキー』などガジェット系や、メンズ・レディースファッション誌、テーマによっては『ニューズウィーク』『SPA!』『PEN』『月刊MdN』などの読み物系もそこそこな冊数が動いてるので、単体で黒字というのは難しいとは思うけども市場そのものができ始めてるのではと思う。定期購読の仕組みが完成すればもっと期待していけると思います。

『アフタヌーン』を毎号買ってれば単行本は買わなくていいんじゃないか問題

今回のテーマは「デジタル文芸誌単体で黒字化を達成する」ということが目標なんですが、ちょっと気になることがありまして。雑誌がデジタルだと毎号捨てずにずっと残しておけるじゃないですか? なんで単行本買わなくていいんじゃね、という問題が出ないかという危惧がありまして。

先日沙村広明の「波よ聞いてくれ」第1巻がKindle化された際にタイムラインで「第1話からアフタヌーンをKindleで買ってるから、どうしたものか」的な悩みを持っている人がいまして。最終的には購入されたようですが、デジタル雑誌は保存されていくということを考えると「単行本による収益回収モデル」ってどうなるんでしょうね。

デジタル文芸誌で目指す単発黒字化への道

250円で4,000部売れば黒字化を成功の定義とする

具体的な数字感については話してないので、ここはわたしの推量なんですが原稿料とか、人件費とか制作費とか、色々あるとは含めて毎号デジタルだけで500万円売り上げたらペイできるとして、500円で1万部 or 250円で2万部としましょう。

まず、電子書籍界のレジェンド鈴木みそさんが1年目のKindleでギリギリ1,000万円をクリア。2年目は700万円くらいという規模感なので……。だめだ、デジタル文芸誌創刊第2号で鈴木みそ越えを果たさないといけない。

参考 2014年電子書籍の収支 by CHINGE教
というわけで、さすがに無理なんで毎号100万円ずつ売り上げ出せばOK程度まで落としましょう。250円で4,000部。かなり現実的な数字かな? Kindleストアで3日ほど総合ランキングの10位以内、そのまま7日間くらい50位以内に入れば越えていけるはず。コストをかけないリーンスタートアップの精神でいきましょう。

「見つけてもらう」「読む理由を提供する」「習慣的に買う仕組みを用意する」「良い作品を作る」

Kindleストアで読者に偶然みつけてもらってすぐに毎号30位以内に突っ込むというのは果てしなく困難。6月09日01時時点だと昨日発売の『週刊東洋経済』がランクインしてるくらいですね。

参考:Amazonランキング「Kindle本 の 売れ筋ランキング」ランキングは1時間ごとに更新されます。

ランキングを上げるためには短時間に一気に買ってもらうのが最も効果的なんで、毎回発売日の00時に『ワォ、デジタル文芸誌だ!買いだっ!』というユーザーが80人くらい、当日中に300人いればまずまず30位以内にはいるとおもう。上位にランクインすればするほど、たくさんのKindleユーザーの目に止まって自然に販売数が上昇するので、より有利な展開が可能となります。

そのために必要なのは「見つけてもらう」「読む理由を提供する」「習慣的に買うよう仕掛ける」「良い作品を作る」の4つかな。

見つけてもらう」はとにかく目立ってなんぼ。デーハーなことをやって電子書籍ストアに誘導するんや!最近だと芸能人をバンバン読んで秋葉原でバラマキイベントとかが有名ですね。

読む理由を提供する」は目立つにも絡むけども、作品そのものと無関係なことで話題にすると読む必要が無いから結局買わないんですよねェ。今だけの限定価格でも、話題の作家の新作でもなんでも『ワォ、読まなくちゃ』という読む理由を提供をして、読者がお金を払うことに納得できるようにします。

習慣的に買うよう仕掛ける」については、毎号毎号デーハーなことが必要なんて大変なんで、労力を減らせるようにリピーターが新刊に気づくような仕組みを作ります。上手く回れば提供者側も読者側もマッチングのコストが減るからね。Twitterをフォローしてもらう、ブログをお気に入りにいれて毎日見てもらう的なものでもいいので、絶えず最新号の動向に注意を払ってもらえるよう仕組みを作りましょう。

良い作品を作る」良い作品って人に話したくなっちゃうので勝手に読者が増えますし、毎号買ってくれますハイ。話題を作って見つけてもらい、習慣的に買ってもらえる高いクオリティを維持できれば毎号4,000部という数字はなんとかなると思う。より上を目指すならば適当に数字を弄ってください。

話題をつくるための仕掛けを考えてみた

わたしが仕掛けを考えるときの基本指針って「王道」と「奇策」の両輪を回すというのがあります。今回だと雑誌そのもの質をあげて、人にレビューをしてもらえるようにするという普通を積み重ねる「王道」と、なんもかんもを飛び越えて一撃必殺を実現する「奇策」の両方をやらないとダメだろうなぁと思うんですよ。

最近あった出版社のおもしれぇなぁという「奇策」は、たとえばCakesに号外を出すという「SFマガジン」や、会社合併に伴う富士見書房 vs 角川書店というコミック誌対決。新書レーベル5誌による合同フェア「チチカカコ」がとても興味深い事例だと思う。

1.【号外】「SFマガジンcakes版」が配信スタート! by Cakes通信
2.ヤングエース編集部vsドラゴンエイジ編集部の仁義なき戦い勃発!? by PRTIMES
3.出版5社“チチカカコ”による学術書フェア、電子書店8ストアで開催中 by ebook USERS

こういう話題作りをしつつ、雑誌を定期的に刊行するというのがいいんじゃないかなと思うんよね。たとえば『他社から原稿を募集する』というコラボレート的なモノ。早川書房×東京創元社のSF雑誌的なとか、打倒カドカワを目的とした新興キャラ文芸レーベルマガジンとか毎度話題を作りやすいと思うんよねぇ。

ほかに『作家を編集長にして定期的に変更していく』とか。公式Twitterアカウントの中の人が1ヶ月限定で編集長担当の作家さんとか面白いんじゃないかなぁと思う。期間限定ならなんとか維持できるんじゃないかと。そして、作品は神坂一責任編集の妖怪雑誌とか、藤井太洋責任編集のSF雑誌とか。

あと、創刊号だけど『いきなり最終回ばかり掲載』という謎の展開とか。これはヤングマガジンサードの「俺の100話目!!」のパクリなんですけども、読む方の度肝は抜けるんじゃと思う。

まぁ「他社とのコラボレーションはわたしの一存では……」「作家さんに負担をかける仕組みはちょっと……」ということで素人考えは一蹴されちゃいましたけどね。なにより現実的な話だと、電子書籍担当の部署と編集部には大きな溝があったり、電子書籍担当は事務屋であって企画屋ではないので新しい取り組みは認可がおりないって。縛りプレイありとか、よほど余裕があるんだなぁ出版業界め。

さいごに、とても興味深かった「作家の転換点をつくる」という話

さて、伝わってるとは思うのですがデジタル文芸誌による単発黒字化については、既存の取り組みだけではかなり厳しいと考えています。そんな一方で国内の作家さんが共通で抱える問題が「何を書いたら売れますかね?」らしくて。出版業界に好景気はやくきてくれー!という感じですなあ。

だからデジタル文芸誌で成功を模索するという話になるわけですが、編集者さんとしては「SFを書いていた冲方丁が天地明察を書いたことで作家としてより大きくなっていた。そうした転換点を作家さん方とつくっていきたい」なんて話を企画の裏テーマとしていただきまして。これは、非常に面白い取り組みだと思う。

話をする限り、うちが何か協力していくということは難しそうではあるので情報提供くらいしかできなさそうですが、流行るといいですなぁデジタル文芸誌。

ここで質問です。
Q.デジタル文芸誌は今後流行ると思います?
→ コメント欄や、Twitterなどであなたの考えを教えて下さい。(配点:15点)

※追記:出版社・編集者Kさんより

記事中の某出版社の編集者、本人です。

きんどるどうでしょうさん、先日は突然のご連絡にも関わらず、お時間頂きましてありがとうございました!

「デジタル文芸誌そのもので黒字化」に関しては、なかなか厳しいご意見が寄せられていますね。同時に、非常に示唆に富んだレスもたくさんあるので、それぞれのご意見を読ませて頂いているだけでも、とても勉強になります。

既にたくさんの方がご指摘されているように、そもそも「文芸誌自体で単純黒字ってのが無理じゃね?」というのが現実で、それに「デジタル文芸誌で」という、更に付加条件をつけた問題設定なので、普通に考えれば「それは無理ゲー」という結論になります。

ただ、きんどうさんとお茶しながらお話をしていて一番痛感したことなのですが、結局は仕掛ける側の「企画力」そのものが問われることなのか、と思います。「デジタル」とか「文芸誌」以前に、その企画が魅力的で、お金と可処分時間をそこに費やしてもらうことができるかどうか、なのかな、と。「書き手」「テーマ」「掲載分量」「単行本との相関」「価格」「配信スピード」などなど、すべての点での企画性の高さってことですね。

ですので、きんどうさんのおっしゃる「見つけてもらう」「読む理由を提供する」「習慣的に買うよう仕掛ける」「良い作品を作る」の4つはとても大事にですし、それに加えてツイートされていた『やっぱり、盛り上げるために必要なことは作っている側が『ウヒョー!最高!超楽しい』というバカ騒ぎを本気でしてもらえると、見ている側も参加したくなると思うんよね。作っている側の辛い、売れない、感想書いてという怨嗟がにじんでると引いちゃうから。』ということも、めちゃくちゃ大事だと思うわけです。

出版社側の都合と論理で、無理くり捻り出したものに、お金も時間も使いたくないですしね(それは、自分にしたってそうです)。

今のところ、ラー・カイラムでアクシズを押し返すどころか、ジェガンで単機特攻仕掛けている気分で一杯ですが、それこそ一機でも多くの僚機とギラ・ドーガとラー・チャターとムサカを巻き込めるように、これから頑張って行きたいと思います。

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