テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術

この記事はKindle作家の”晴海まどか”さんからゲストポストいただきました

こんにちは、晴海まどかです。さて、連載もいよいよ第5回、前回のカタカナ語の統一から派生して「漢字とひらがなの使い分け」をご紹介。

漢字とひらがなの使い分けにも正解はありませんが、こういう考え方で使い分けると読みやすくなるかも、ということで、全2回にわたってお送りいたします。今回は、意外と知らない漢字の指針、常用漢字についてご紹介。

漢字の難易度を決めるよりどころ 〜常用漢字

文章のリーダビリティを上げるための様々な要素についてこれまでご紹介してきましたが、日本語のもっとも難しい部分の一つでもあるのがこの漢字。使用する漢字一つで、その文章の読みやすさや印象が変わってくるというのはなんとなく想像できると思います。
何をどこまで漢字にするのかって、結構難しいですよね。漢字が多いとページが黒っぽく見えるかもしれません。漢字が少なすぎると、文章が平易に見えすぎるかもしれません。どの言葉を漢字にするのか、ひらがなにするのか、これが意外と難しい。
とはいえ、何が難しい漢字で何が簡単な漢字なのか、と訊かれると、これってちょっと難しいですよね。例えば、難読漢字にはルビをつけよう! と考えたとしても、何をもって難読漢字とするのか。
読書量が多いAさんにとっては読めて当たり前の漢字でも、漫画しか読まないBさんだったら難読漢字になりえますよね。
こういうときに一つの基準として知っておくと便利なのが、“常用漢字”です。

常用漢字って何?

常用漢字って単語はみなさんご存知だと思います。でも、ちゃんと説明するのって難しいですよね?
正確にいうと、「文部科学省文化審議会国語分科会の答申に基づき、『法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安』として内閣告示『常用漢字表』で示された現代日本語の漢字」だそうです。ちなみに、常用漢字表は2010年に改訂されたばかりです。
〈参考〉文部科学省:常用漢字表(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19811001001/k19811001001.html
また、この常用漢字のうち、小学生までに習うものを“教育漢字”と言います。対象読者やジャンルに応じて常用漢字とそれ以外の漢字の使い方を考えてみよう、というのが今回のお話のメインです。

常用漢字を使うことによるメリット

常用漢字を使うと何が嬉しいかというと、前述のとおり「一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」となる漢字であるため、読み方や意味がわからなくて理解できない、というケースを回避(少なくとも低頻度に)することができます。これのもっともいい例が新聞です。新聞は基本的に常用漢字を中心とした表現を使うことになっています。
また、昨今はパソコンによるキーボード入力が主流となったため、“難読漢字でも簡単に変換できてしまう”といった事情があり、意図せず難読漢字を頻出させてしまうケースが多々あります。
もしかして自分の文章って漢字が多すぎないか? と思ったら、ちょっと立ち止まって、常用漢字表を眺めてみるのはどうでしょうか?
ただ、小説でしたら常用漢字を使えば必ずしもいいというわけでもないですし、常用外漢字を使った方が文章に味が出る、ということが多々あります。また、常用漢字の表現でも、あえてひらがなを使った方が柔らかい印象になるとか。そこを考えるのは小説執筆の醍醐味ではあります。
ちなみに、以前紹介した「記者ハンドブック」(http://www.amazon.co.jp/dp/4764106191)には常用漢字の用事用語集があります。これを参考にしつつ、この単語は漢字の方が読みやすい、ひらがなの方が意味が伝わりやすい、みたいに一語一語こだわりをもって書くというのもよいかもしれません。

常用漢字を意識して使ってもよさそうなジャンル

ここではご参考までに、対象読者に応じて常用漢字を意識した方がよさそうな場合を紹介します。

小学生以下向けの児童文学の場合

例として最もわかりやすいのが児童文学だと思います。
小学生が対象読者の児童文学でしたら、常用漢字、特に教育漢字を中心に使うとよさそうです。それ以外の難しい漢字や単語にはルビを振る、といった対処も考えられます。
(児童文学だと、すべての漢字にルビが振ってあるケースの方が多いかもしれませんが)
また、小学校何年生が対象読者か、まで考えるのであれば、何年生で習う漢字なのかまで考慮した方がよさそうです。

読みやすさ重視のライトノベルの場合

次に、児童書よりも対象読者の年齢層が高い、ライトノベルの場合を考えてみます。
ライトノベルの場合、萌え系だろうがファンタジー系だろうが、共通して「読みやすくて内容が面白い」という特徴が挙げられるんじゃないかと思います。こういった特徴でしたら、難しい漢字ばかりを意図的に使う必然性はなさそうに思えます。
実際、ライトノベルレーベルの本を読むと、常用漢字だろうがそれ以外の漢字だろうが、出てくる漢字に軒並みルビが振ってあることが多いです。ちょっとルビ多いよと思うくらいルビだらけです。
もちろんケース・バイ・ケースではありますが、意図して難読漢字の頻度を上げる必要はないんじゃないでしょうか?

意外と知らない常用漢字外の漢字

もはや単なる豆知識ですが、こんなに見慣れた漢字だけど常用漢字外なんだよ、というのをいくつかご紹介。
・嘘(うそ)
・噂(うわさ)
・笠(かさ)
 使いどころは少ないかもしれない。「笠地蔵」とか? ちなみに「傘」は常用漢字。
・嬉(キ/うれ-しい)
・栗(くり)
 桃栗3年、柿8年。桃と柿は常用漢字です。
・揃(そろ-う)
・掴(つか-む)
・呆(ホウ・ボウ/あき-れる)
・歪(ワイ/ゆが-む)
上記はごくごく一部の例ですが、作中で新聞の記事などが出てくることがあればこういうものも知っておいてもいいかも?
なお、ここで紹介している漢字は、前述の新聞記者ハンドブックではひらがな表記です。

いざ、例文を見てみよう!

〈例1〉

1309201a

〈例2〉

1309201b

例1は常用漢字(というか例の新聞記者ハンドブック)の表現を中心に、例2はその辺を無視して漢字にしたりひらがなに開いたりして書いてみました。
どっちがいいというわけではないですが、読んだときの印象、ちょっと変わりませんか?

まとめ

今回は常用漢字についてご紹介しました。常用漢字なんてライターとか編集のお仕事をやっていないとあまり意識しないと思うんですが、どうでしょう? 一つの指針として知っておいても損はないと思います!
なお、今回は書けませんでしたが、常用漢字とは別の観点で、漢字/ひらがなの使い分けを考えた方がよいケースのお話をあと少しだけしたいなーと思っております。
ということで、次回も引き続き「漢字とひらがなの使い分け」をご紹介します。

この記事を書いた人

晴海まどか Twitter @harumima

1983年生まれの乙女座のA型。千葉県育ち東京都在住の文章クリエイター。

7年強、テクニカルライターとして会社勤めをし、2013年8月からフリーに。三度の飯より書くのが好きな書く方の活字中毒。ミステリーでも青春ものでもホラーでも、書きたいものはなんでも書く雑食系。どちらかといえばYAよりの作風多め。小説を書くのはライフワークである。

麹結華、花も恥じらう高校2年生、身長176センチ、あだ名は”王子”。そんな結華の幼なじみ、身長158センチであだ名が”ユキ姫”の幸広が、なぜか登校拒否に。幸広の様子を見に行った結華は、そこで驚愕の事実を知らされる!学校に伝わる《番人》伝説とは何なのか? そして、《番人》探しとは?ネットと現実が交差する、青春SNSミステリー!

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