美しい文章を生み出すひらがなの使い方/テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術

この記事はKindle作家の”晴海まどか”さんからゲストポストいただきました

こんにちは、晴海まどかです。連載もいよいよ第6回、「漢字とひらがなの使い分け」その2です。一応今回で最終回となります。今回は、ひらがなをどう開いていくかを中心に。日本独自の文字、ひらがな。上手に使ってリーダビリティを上げましょう!

前回の記事はこちら:その漢字に読者はついてこれますか?/テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術

何をどこまでひらがなにしたらよいのか?

今回は先に一つ例文を。
1310041aちょっと漢字が多くて黒いですよね。じゃあ漢字を減らしてみようと思ったところで、何をどこまでひらがなにしたらよいのか?そこで、こういう部分はひらがなを使ってみるといいかも、という観点をいくつかご紹介します。

そして、しかし、だが、または接続詞

接続詞はひらがなで書くのがおすすめします。
「しかし(然し)」「または(又は)」「さらに(更に)」「および(及び)」などなど、色々ありますね。ひらがなの方が読みやすく印象がソフトになる、という理由もあるのですが、接続詞は漢字の単語同士をつなげることがよくあります。
【例】東京都または千葉県
この場合、「東京都又は千葉県」とすると漢字が続いてしまって読みにくいですよね。

これくらい、ほどになどなど助詞

程度を示す助詞「くらい/ぐらい」「ほど」「まで」「など」は、ひらがなで書くのが通例だそうです。これを漢字にすると漢字が続いてしまって読みにくくもなります。
【例】五分ほど 五分くらい 東京駅まで 東京駅など
ちなみに「くらい」ですが、桁を表す「10の位」のように使う場合だけは漢字を使います。これは助詞ではなく名詞だからですね。

本来の意味が薄れた補助動詞

補助動詞というのは別の動詞に接続して補助的に使われ、本来のその動詞の意味が損なわれているもののことを指します。
漢字というのはアルファベットやひらがなと異なり、漢字そのものに個別に意味があります。なので、補助動詞を漢字にしてしまうと、意味を強調し過ぎているようにも見えます。
【例】
 ○:見たかもしれない。 ×:見たかも知れない。
 ○:見てみる。     ×:見て見る。
 ○:見ておく。     ×:見て置く。
ここはひらがなで書いておいた方がすらっと読めそうです。なお、補助動詞でちょっと気をつけたいのが敬語の場合。
【例】
 先生がお土産を下さいました。
 先生がお話ししてくださいました。
1文目と2文目の違い、わかりますか? 1文目は「先生がくれた」という意味を持つ「下さる」です。これは補助動詞ではなく本動詞なので漢字
2文目は「話してくれた」という「話して」を補助する「くださる」なので、補助動詞です。なのでひらがな。「頂く」も同じように使い分けられそうですね。
敬語はついつい漢字にしてしまいがちですが、補助動詞でしたらやっぱりひらがなにしてしまった方がすっきりして読みやすい気がします。敬語が出てきたら、ちょっと意識してみてはどうでしょうか?

漢字は二つの顔を持つ 〜二つ以上の読みがある漢字

これまでと異なる観点&我流の方法なのですが、漢字の読みによって漢字とひらがなを使い分ける方法をご紹介。
漢字によっては、同じ送り仮名でも二通りの読み方ができてしまうものがあります。
例えば、「叩く」。
これ、多分大多数の方が「たたく」と読むと思うんですが、「はたく」と読ませたい場合はないでしょうか?
さて、こういう場合にどうするか。これはあくまで私個人のやり方ですが、大多数の方が読みそうな読みの場合は漢字、そうでない場合はひらがなにして、“確実に思ったとおりの読みで読ませる”という方法をとっています。この例だったら、「たたく」と読ませたい場合は漢字、「はたく」と読ませたい場合はひらがなです。
同じような例をいくつかご紹介。
・「擦る」:「する」「こする」の両方に読めるため、ひらがなに統一。
・「時」:「〜するとき」の場合はひらがな、「彼は通話時に」といった「じ」の場合は漢字に統一。
・「その他」:「そのほか」の場合はひらがな、「そのた」の場合は漢字で統一。
意味として同じなのでどっちで読ませてもいい、という考え方ももちろんあるのですが、語感やリズムを重視して、こちらが意図した読みを読者に正確に伝える工夫をしてみよう、というのがこの方法です。
もしかしたら、この工夫一つで文章が読みやすくなることもある、かもしれません。

いざ、例文を見てみよう!

1310041b
どうでしょうか? 前述の観点のほかに、常用外漢字をひらがなにしたり、適宜ひらがなに開いたりして漢字を減らしてみました。少しすっきりしたんじゃないでしょうか。
漢字の文量をどこまで減らすかはその人の文体や好みにもよりますが、うまく調整して、自分なりの読みやすい文章にできたらよいかなと思います!

おわりに

2ヶ月半にわたって連載させていただきましたが、今回でいったん終了となります。

文章力向上うんぬんではなく、文章の見た目・読みやすさにポイントを絞ってこれまで書かせていただきました。文章の見た目の良さや読みやすさというのは、文章力がなくても一文字一文字に神経を配れば、そこそこ向上するのではないかと個人的には思っております。

けれども読者にとっては、著者のそんな努力なんて、本当にどうでもいいことです。

そうなんですよ。悲しいことというか、しごく当たり前のことなんですが、著者がどんなに一字一句に気を配ろうとも、読者にとって、“読みやすい文章は当たり前”なんですよね。

読みやすい文章っていうのは、誰かに文章を読んでもらう上での最低限のハードルです。これができていないと、どんなに面白い作品でも、その面白さうんぬんの前に「読みにくい」と一刀両断されてしまう可能性が非常に高くなります。

読みにくいだけで、本当は大どんでん返しの面白いラストが待っているかもしれない作品が、途中で放棄されてしまうかもしれません。いくらこちらが面白いよと主張しても、読みにくくて疲れる・集中できない、なんて言われたら反論の余地はないわけです。

そもそもこの連載をやってみようと思ったきっかけが、自分もKDPで本を出すようになってほかの著者さんのKDP本を読んでみて。中身と関係のない、それこそ文章の見た目をもう少し改善できる作品があるなぁと思ったのがきっかけです。

とはいえ、個人出版なんてよほど運が良くなければ編集者や校閲者がついてくれるわけではありません。そういうものだと思って読んでくれっていう意見もあるかもしれません。けど、Amazonというフィールドで商業作品と同列で並んでしまう以上、読者から見たらそんなこと関係ないわけです。

だったら、自分でどうにかできる部分はどうにかしたいと思いませんか?

というわけで、この記事は、独学で文章を書いてきたような個人作家さんの、ちょっとしたお役立ちになればいいなぁ程度の軽い気持ちで始めたものです。が、思った以上に反響があった回もあり、ありがたいやら恐縮やらといった感じです。こちらも勉強になりました。

この連載を通して、日本語って考えれば考えるほど難しくなっていく言語だと私自身も思いました。

でも日本で書いていくかぎり、その難しい日本語と仲良くしていかないといけないわけです。なんだかんだ言いながら、私はごちゃごちゃ考えながら日本語の文章を書いたり考察したりするのが好きです。一字の違いでもこだわるべきだと思っています。日本語は難しいですが、その一字で文章の印象ががらりと変わってしまう面白い言語でもあります。

書き手のみなさまが、そんな日本語と仲良くなるきっかけになれば幸いです。とまぁ、長くなりましたが。ここまでお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました!今後のみなさまの執筆ライフが素敵なものになりますように!

この記事を書いた人

晴海まどか Twitter @harumima
1983年生まれの乙女座のA型。千葉県育ち東京都在住の文章クリエイター。
7年強、テクニカルライターとして会社勤めをし、2013年8月からフリーに。三度の飯より書くのが好きな書く方の活字中毒。ミステリーでも青春ものでもホラーでも、書きたいものはなんでも書く雑食系。どちらかといえばYAよりの作風多め。小説を書くのはライフワークである。

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