空駆ける近未来SF「プリンセス・プラスティックシリーズ」を執筆した米田淳一さんにインタビュー

米田淳一こんばんわ、きんどるどうでしょうです。
いま話題、もしくはこれから話題になるであろうKindle作家にインタビューするKDP最前線。今夜はその第86回。
人型の戦艦と王女が世界の運命を握る近未来SF「プリンセス・プラスティックシリーズ」を執筆した米田淳一さんです。王女に与えられた密命、世界の運命……いやぁ、燃えますね!本書は2001年に早川書房から出版されたものを著者の手で電子化、加筆しております。
米田さんには本作執筆のキッカケやオススメのポイントをなどを語っていただきました。さぁ、いったいどんなお話が聞けるのでしょうか。もちろん、本作はAmazonKindleで無料で試読が可能です。

エスコート・エンジェル#1(プリンセス・プラスティックシリーズ)

早川書房から2001年に発行したエスコートエンジェルの2訂版です。
22世紀、人間型人間サイズの戦艦シファとミスフィに初めての任務があたえられた。それはとある王女の密着護衛であった。僅かな護衛官とともに、襲撃につぐ襲撃をはねのけ、シファとミスフィは自らの力で王女を守る。しかし王女には密命が与えられていた。バチカン、京都の教会、そして皇居へ。王女に与えられた密命、それはバチカンと皇室が互いに保有する、世界の運命を記した最新版の預言書だったのだ。王女の任務の重みに、シファは胸を痛めつつ、それでも戦う。
価格:600円
評価:最初のレビューをお待ちしています
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インタビュー with 米田淳一さん

――この作品を書いたキッカケを教えてください

きっかけというか、ライフワークとして80年代、中学生のころから取り組んできた作品です。もともと当時はやり始めたテレビゲーム、グラディウスとかのSTG、ドラクエなどのRPGとソード・ワールドとかのTRPG、大戦略などのSLGなどで遊んでいるうちに、自分もゲームを作りたいと思い始め、BASICでゲーム制作用のツールを作りながら思いました。ゲームを動かすハードウェアの進歩に振り回されずにゲームの根幹を作るには?「シナリオでしょう!」ということでゲームのシナリオを書くつもりで書き始めました。
やっているうちに私の人生そのものを、まるごとその物語に応用出来ると気づき、それで当時はやっていた薄汚れた未来世界とは全く別の、今と若干地続きだけどちょっと遠い未来の、新たな世界観による未来の物語として書くことを目指しました。この本はそのシリーズの最初の作品です。
講談社から刊行した0話「母なる無へ」がデビュー作ですが、この「エスコートエンジェル」がそのもとになった作品で、講談社版のあとに早川書房より刊行しました。
すでに1994年に書き上がっていましたが、その後あまりにもいろいろなことがありました。でも、いろいろあったからこそ、普遍的な価値、普遍的な歴史の法則は変わらないと思うし、どうあろうとも科学と向き合ってきた人々の苦しみ、悩みは変わらないと思います。
そして歴史はどんなにわかりやすく伝えようとしても、その本質は非常に複雑で、わかりにくいものだと思います。そしてそれをわかりにくくしているのは、単にわかろうとしない、分かりたくないからなのだと思います。
そんな思いも込めて、このシファとミスフィの物語を書いて、これが8回目ぐらいの改訂版になりました。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

女性型女性サイズ宇宙戦艦という、防御力も攻撃力もチートすぎる兵器であるシファとミスフィが主人公です。
遺伝子的アルゴリズムと時空ダーウィニズム、そして多世界解釈世界共有によって作られた彼女たち。その実は自身という戦略兵器を預かるためのセキュリティとして自立した心を持ち、人と恋をし、旅をし、そして考える女性。
しかしそのチートな性能を持つ彼女たちは、戦闘力・防御力は強大でも、「立場」は脆弱だった。政治の圧力は容赦なく彼女たちを追い詰める。
その彼女たちの任務を通して、2142年という、地続きだけど近未来よりはちょっと未来側の世界をお楽しみいただければと。ちょうど設定年代がドラえもんの時代なので、そういう時代に政治経済社会がどうなっているかも見せ場です。舞台がその未来の日本というところも。

――1番読者に伝えたいテーマはなんですか?

物語を書いたり読んだりしながら、それをもとにいろいろなことを工夫するのは楽しいよ、ということかもしれません。
命が生まれ進化し遺伝子システムを獲得し、脳神経系ができて始まった工夫というものは、無限の余地、深みのあることだし、それがある限り人類は滅びないと思っています。まずは「各自研究工夫のこと」です。なんでもできないのは当たり前。できるように工夫するんです。一度やってうまく行かなかったら、工夫して同じ失敗をしないように、一度目よりうまくやること。それだけが問題を解決します。これは科学技術だけにとどまらないものだと思います。

――特にお気に入りのシーンはどこですか?

お気に入り、というか、意識してやっているシーンで、シファとミスフィがスクリプトを詠唱して武装を展開するシーンがあります。ここはあえて定式化しています。なぜならそこは魔女っ子ものの変身シーンを取り入れているからです。でも気づいてくれた人がいるかどうかわからないのですが、詠唱したスクリプトに反応して彼女たちのシステムが応えるメッセージを定式化していますが、じつはそのメッセージ、微妙に回を重ねるごとに変化しています。それは作品内で常に彼女たちのシステムがアップデートされているからです。細かすぎて伝わらないところかもしれませんが(笑)。

――どうしてこのタイトルにしたのですか?

ガラスのように砕け散る華やかな最期をゆるされず、傷ついても傷ついても醜く傷つきながら、それでも砕けることができず生き残ってしまうプラスティック。合成されたシファとミスフィの心、そして同じように、これからの難しい時代を生きていかなくてはならない全ての命と心を表すものとして、タイトルにしました。

――作品を書くうえで悩んだところは?

悩んだから書くというのが私の書く上でのいつものスタイルです。書きながら悩みが整理されて解けていくような。ある意味表現療法的なところもあるのでしょう。それに、私は文章を書いて頭を整理する習慣があります。勤めの仕事でもその手順とか問題点はテキストに起こして明らかにします。
物理・数学的に難しいところとか、パラドックスを使ったりして複雑な話のこみいったところなどは大学ノートに図を書いて整理して考えることもありますが、基本的に私にとって、書くことそのものはとても楽しいものです。書く以前の所で悩んだとしても、書き始めてしまえば次から次へと悩むことなく没頭してザクザク書けます。

――本作の執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

冷戦は終わっちゃうし9.11はあるし東日本大震災はあるしで、長く書いてるとさまざまな影響を受けますね。でも私の作品を書く上での見立てでは、初めて書いた時の方向でいろいろなことが前倒しで起きている感じがします。
世の中全体が急いている感じで、特に22世紀の拙著の中のシーンで電車で移動中に携帯端末を使ってウェブを閲覧したり書き物をしたりしている、というシーンは、97年の処女作発刊時には「ありえない」とすさまじく嘲笑われましたが120年も経たない今、すでに実現しちゃってますね。

――主人公やその他キャラクターが生まれた経緯やエピソードをお聞かせください

シファ級戦艦のアイディア、これのもとは「グラディウス」の自機ビックバイパーがもとなんです。ミサイルもレーザーも無限に発射できるチートな兵器をSF的につじつまを合わせられるかという思考実験でした。で、その結果、機体は戦闘機型でなくてもいいんだな、と思うようになりました。MS少女とかにもすこし影響を受けましたが、「エルスリード」というSLGで敵が使うウイングナイトという有翼の女性形の魔物が無茶強くて、それに影響されてこうなりました。
そのずっとあとで宇宙船に心があって恋をするという話ということでマキャフリイの「歌う船」シリーズの話を聞いたのですが、私としては基本グラディウスのビックバイパーです。
あといつの間にか「銀河お嬢様伝説ユナ」なんてのも同時期に出てましたが、そのころは気づきませんでした。逆に講談社版の発刊時に「新世紀エヴァンゲリオン」が流行りだして、作業中にかなり意識してしまいました。基本、私はエヴァは「TV放映版でちゃんと完結していると思う派」です(少数派のようですが)。でもその後のエヴァ旧劇版も新劇版もそれぞれ肯定派です。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

うまくいけば原稿は400字詰めで120枚/日以上書けますが、書けないときはさっぱり書けません。原稿書きをしている期間で平均すると一日30枚ぐらい。1冊めのエスコートエンジェルは、実は人生で初めて完結させた作品なんですが、初稿は一週間、1章1日で書き上がりました。でもあとで訂正とかに1ヶ月ぐらいかかりました。初稿は早くてもその後の訂正に時間がかかってしまうのが私のいつもです。

――読者からの感想はありましたか?

講談社ノベルズからのデビューの頃はもう凄まじい嵐のような毀誉褒貶で私もわけがわかりませんでした。でもその1997年から16年たった今でもぽつぽつとお読みいただけてるのがとても嬉しいです。もちろん子供じみたヒットとかの野望があった時期も正直ありました。が、今はこうして、私自身は地味に書き続けているだけですが、感想がそれでもいただけているのは本当に嬉しいです。

――値段はどうやって決めましたか?また今後値段を変える予定はありますか?

値段はものすごく迷いました。なにしろ原稿書き・編集校正作業というものはなかなか定量化できない作業なので、原価計算はほぼ不可能です。時給で計算するとしても、資料よみで忙しかったり、頭の冷却のためになにもせずにぼんやりしている時間も必要だし、時給にできないほど濃密に勢いに乗って書いている時もあります。それを平均して原価にするというのは本当に難しいです。
逆に価格側から考えると、原価があってないようなものなので、安くして欲しいとなると、確かに流通コストや紙書籍のコストは省けますのでとことん安く出来ますが、しかしそうなるとあまりに低価格にすると価格の方から「安かろう悪かろう」と読者さんに類推で考えられてしまう危険があります。特に以前の値段を見せたら友人に「読み捨ての週刊誌じゃないんだから」と言われて、そうだなと思って現在の値段にしています。
考えれば出版社なしで一人でやればコストが減るというのは大間違いです。出版社は編集さん・校正さん・校閲さん・挿絵さん・装丁作家といった多くの人々が携わって一冊の本にしているのに対し、一人でそれ全員分やるというのは凄まじい労力と投資になりますので、流通コストしか省けないその点で考えれば電子書籍で個人出版でも価格は一般の紙書籍と同じぐらいにしてもいいのかもしれません。とはいえ価格的に変わらなくても電子書籍であることのアドバンテージ、更新できるという利点は十分あると思っています。
紙の書籍を否定するわけではまったくないです。でも電子と紙の媒体を使い分けることができれば、そこで機動的な価格設定ができるのも電子書籍の有用な点だと思います。
昔は自前でサーバ借りてクレジット決済の代行サービス頼んで自分でカートシステム組んで書籍のデータ(txtファイル+挿絵jpgファイル)を直販したりもしましたが、今はkdpをはじめとした類似サービスがパッケージであるのが、すごくありがたいです。一人でやるのはほんと、きつすぎますので。

――電子書籍についてどう思われますか?

私の場合、未来を表現するのに文字では無理だと思うような複雑なところを頻繁に書くので、その解説の図が自前で用意できたり、用意でき次第アップデートをかけられたりするのがとても助かります。
ミスの訂正や加筆もあとからもできますし。紙での出版だと、ゲラを渡してから出版されるまでの間、うっかりゲラの控えで誤字とか見つけると七転八倒の苦しみになりました。
作中の図面はすべて私の作ったCGです。本当の挿絵さんに頼めばもっと格好いいでしょうけれど、私の作品は挿絵さんに書いてもらうのが酷なところが多いのです。未来都市の鳥瞰図とか、私の本文では細かく書いているので、挿絵さんがそれのせいでものすごく苦しんで描いているのが分かりますから。私もCGで挿絵を書いてそのご苦労がよくわかりました。
それで作ったCG挿絵も、私も勉強中なので、その進捗に応じてドンドン更新できるのがとてもありがたいです。これは紙媒体では絶対にできないことです。
そういうところで更新することができる電子書籍というメディアは、単なる「紙の本の電子化」ではなく、「全く新たな表現の分野」となる可能性を秘めていると思います。動画や音声を組み込むことよりも、この更新・アップデートが出来るというのは大きいです。
現在の電子書籍では読者さんは所有するのではなく、書店が配信する書籍を読む権利を持つことになっているため、書店が配信できなくなったら終りです。それがデメリットではありますが、その逆には書店が続きさえすれば書店は常に最新の状態の書籍を配信し、読者さんはそれを読めるわけです。それが面白いところです。

――Kindleで出すにあたって困ったことはありますか?

著者・権利者認証と、他の電子書籍書店で販売している分との同期をどうとるかに悩んでいます。他にも楽天koboやDLsiteなんかでも売りながら、どんどん図版とか更新・改訂しているので版の管理に困っています。

――本書は過去商業で出版されていたとのことですが、Kindle化にあたって出版社と何か交渉などはありましたか?

講談社ノベルズでのデビューの1997年以来、かなり初期から電子書籍化を考えていたので、そのために私の方で電子書籍化について試行錯誤できるように考えて、重版がかからなくなったら、さっさと出版契約書にある「出版契約の自動更新」の項目を停止する旨、内容証明を送ってありました。そのため私の場合は、あとはAmazonに著者である証明をすれば問題なく電子書籍化できるはずでした。
ただAmazon側から著者本人であることの証明になる書類を5日以内に送ってほしいというメールをいただきました。正確には「本の権利をお客様が保有していることを証明する書類等をご提出ください。」という文言でした。
でもそのメールには具体的に証明する書類とはどういうものが必要なのか一切書かれていなかったので、色々考えながら、出版契約の破棄の経緯を説明するメールを送ったら1冊めは発売になりましたが、2冊めのとき、また著者本人の証明をもう一回求められました。3回めはありませんでしたが。結局Amazonがどういう判断基準だったのか不明です。
ただ、こういう契約ごとについてのやりとりを個人対企業でやるのは、実際は内容証明1通メール1通なのですが、なかなか正直キツイものがあります。慣れてしまえば要点とか原理原則がはっきりして、事務的にできるのでしょうが、こういうことを誰かにやってもらえるというのは楽でありがたいことだったんだなと思います。
余談ですが、実は早川で出版した時はマンガ化とアニメ化の話もありました。私一人ではとてもそんな他メディアへの展開の話はできません。編集さんがいるというのはありがたかったんだなと思います。
そのときは結局両方共、タブーの話で頓挫しました。天皇陛下がでてくるところですでにダメなんだそうです。ぜんぜん不敬なところはないんですが、マンガ化で打合せたマンガ誌の編集さんは「街宣車が来るから」なんて言ってましたね。街宣車が来るほど話題になり売れてるマンガ誌だったらまだいいんですが、マンガ誌が苦しくなって無理やり創刊したマンガ誌だったので、私の作品とは全く関係なくあっさり休刊になりましたね。なんなんでしょうね(笑)。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

97年以来16年間の間で自然に物語を作れるようになってしまったので、思い出しながら。
まず書く訓練でアイデアプロセッサ・アウトラインプロセッサみたいなものでアイディアや段落や章をモジュール的に入れ替え並び替える訓練は必須でした。今時のPCならそういうソフトはフリーでもありますので、物語を書く人はぜひやってみるといいと思います。
慣れてくれば、他の方の書いた物語もそのモジュールに分解してその構成の妙に気づくようになります。そうなってくると自分の作品を見るとヌルく思えてきます。とても「箸にも棒にも」に思えてきます。そこが書いていく上での一つの試練です。そこで必ず自分を見失ったりします。
でもそこでぐっとこらえるのが大事です。自分で展開が平板だとか、奇をてらいすぎたとか思っても、そこで原稿を放棄したらダメです。放棄するのはいつでも出来ますから、とりあえず捨てる前に仕掛品にして保留にすることです。何かのきっかけでそのダメな話がいい話に蘇るアイディアが降りることがありますので。
多くの物語の書き方本ではここまでの物語のモジュール化による構成法は書いてありますが、結構書かれていないけれど、とても大事なことがあります。それは、なぜその話を書きたかったのか、書きたくて仕方がなくなったのか、というモチーフをしっかり持つことです。それがそういう苦しい時に一番の原点となり拠り所になります。
それがあれば、平板に見えたところが手を入れれば厚みをもたせられ、奇をてらったようなところには伏線を用意したり全体のまとまりを調整したりするときの基準になります。
そしてまず拙くてもちゃんと最後まで書ききること。書ききることでしか物語構成の力は得られません。そして書ききってから次の作品を考えたり、他の方の作品を分解したりとやっていくと、「本当にすごい物語」にはムダな説明や行数稼ぎは一切ないことが見えてきます。
私が描く物語の理想の方向の一つがそれです。キレッキレに展開にも描写にもまったく無駄のない物語。もちろん無駄なようなものがある物語の楽しさもありますし、そういうものを私も書くことがあります。
そこで今という時代が幸せなのは、そのどっちを書いても、個人出版の電子書籍なら問題ないことです。自分の書く力さえあれば、無限に書いて、もしかしたらそれを読んでもらえるかもしれないという自由があるのです。それはとても幸せなことだと私は思っています。
あと、描写と説明の違いがわかるようになると、書くことが更に楽しくなります。事実を説明しているだけの文章を描写に昇華することは、また書いていてとても楽しいことです。物語を書いていると、キャラクターが勝手に喋りだしたり、予想外の展開になってしまうことが増えてきます。でもモチーフという原点を見失わず、また説明を入れても描写にできる力を手に入れれば、キャラクターや展開がどんなに暴れだしても大丈夫になります。
物語を書く上では、何度も自分の下手さに直面します。でもそれはいつも、自分の見る目が肥えてきたからの場合が多いです。見る目は無限に肥えていきます。でもそれに追いつくように、自分の下手さに負けずに書かなければ、眼高手低がひどくなるだけです。自分でキーを叩いて書かなければ書くのがうまくなることは絶対にありません。それどころか書く上で気づくようにとオープニングのリズムの練習と構造の理解のために特に素晴らしい他の方の作品のオープニングをキーで打って写すこともやりました。
物語を書くのはそういう面でひどく孤独な作業です。作家で仲間を作っても孤独です。結婚して嫁さんに読んでもらっても、友人にビールおごって読んでもらっても、オカンに読んでもらっても孤独な作業です。この孤独との対決も課題になりますが、結局それは解決できないもののようです。唯一その代わりになるとしたら、過去の自分ぐらいでしょう。そこで執筆メモとかは残しておくと、恥ずかしいですがそれなりに自分を奮い立たせてくれることもあります。読者ができて感想をいただけたときもそうなることもあります。
ちなみに私は集中し過ぎると何も聞こえなくなります。流しっぱなしのテレビで大事件が起きていても気づかないほどです。なぜそうなったのかはわかりませんが、その集中で、今は物語の概略をいつでも作れます。
おまけ。井上夢人先生に昔伺った話。物語の展開に行き詰まったらどうしている?と大沢在昌先生に話したら、大沢先生「とりあえず殴っちゃえばいんだよ!」確かにキャラクターが誰かを殴れば、タダ事ではないので、その前後のつじつま合わせなどの処理で話が動かざるをえなくなりますが、「新宿鮫」だったらそれができますけど、井上夢人先生の少年とかが主人公の作品じゃ使えませんよね。井上先生も「いやー、参ったよ」とおっしゃっていたような。昔、MYSCONという会合で伺った話です。
最後に。物語の成功を何をもって成功と考えるかは人によりますが、大事なことは、絶対に何があっても運のせいで成功していないと思わないことです。
不運で成功できないんじゃないんです。どういうところにもかならずある幸運を「拾い損ねている」のです。拾い損ねるのは、その幸運のときにそれを拾う準備ができていないからです。
だから、ひたすらその準備をするしかないんです。不運を嘆き他人の幸運を羨むだけでいては、幸運は絶対に拾えません。

――Kindleで個人出版を目指す方にアドバイスをお願いします

紙の出版も含めた出版全体がすでに危険水域なので、生活のために個人出版をするというのは考えないほうがいいです。もし今後エージェントなりの制度ができて電子書籍出版がペイできるようになっても、生計を出版で支えると考えてはいけません。儲かるとか売れるとかヒットするとか以前に、「描きたいんでしょ?でも**しないと描けないよ」という人質作戦を誰かに取られます。本当に書くのが好き、物語が好きな者にとって、それはものすごい苦痛になります。そんなの割りきって我慢出来るさ、と思っている方は、それを我慢する以前、物語というものを自分で描き上げることはできないと思います。物語を書くということは基本、割に合いにくいことだと思っています。

――本作を読んだ方にオススメしたい本や映画を教えてください

トム・クランシーの初期の作品、とくに「レッドストーム・ライジング」と、「激闘駆逐艦隊」倉橋友二郎はホント、憧れました。うちの本はいまだにこの2冊に追いつきたくて書いている感じです。
「レッドストームライジング」は米ソ冷戦のころに米ソが対決する架空の話ですが、それがお手本みたいに良くできてます。当時の米ソの軍事戦術描写てんこ盛り、美味しいシーン山盛り。
「激闘駆逐艦隊」は太平洋戦争を戦い抜く駆逐艦とその砲術長の話なんですが、オープニングがミッドウェイで被弾、炎上漂流する空母赤城を駆逐艦の魚雷で処分するシーンというえぐさ。いきなり負けてるところから始まる。
中学生の頃にこの2冊を読んですっかりハマりました。私にとって教科書みたいなものです。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

このプリンセス・プラスティックは5巻目までのシーズン1、6巻から8巻目のシーズン2、9巻から14巻までのシーズン3と続いています。現在その後のシーズン4を書こうとしています。シーズン3まで、すでに発表していますが、しかしアップデートもしっかりやっていこうと思っています。
また続くシーズン4では特に現在のお勤めで勉強している地方行政・経済の未来を書こうと思っています。未来都市を書いた人はいっぱいいますが、未来の田舎を書いた人は少ないと思います。せいぜい未来都市の辺境とか廃墟みたいに書いたぐらいだと思います。
私は都市の背後には常に豊かな生産力と環境維持能力をもった田舎があってこそだと思っています。まずはそれを書いていこうと思っております。さらにその先にも描きたい野望はあるんですが、それはその時に。

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします

私の作品は一つの世界、宇宙開闢から時間そのものの終了まで作りこんだ世界の中で起きて、それぞれ話としてまとまりながら、最終的に繋がっています。もしご興味をいただければ本当にありがたいです。
あとなにげにシファとミスフィが人間と恋愛もしてますが、とくにミスフィにいたってはかなりヤバイ恋愛してますので、注意よろしくです。

著者プロフィール

米田淳一 Junichi YONETA Twitter @YONEDEN
1973年8月生まれ。秋田出身・神奈川県山際在住。日本推理作家協会会員。
SF中心に講談社・早川書房などから商業出版の著書13冊。現在パブーで著作60点。主な著書・「プリンセス・プラスティック」シリーズ(講談社ノベルズ・早川文庫JAで既刊)

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