情熱的友情を愛でよう「追憶のシャーロック・ホームズ-ワトスン博士最後の告白-」を執筆した牛乃あゆみ(兼ホズマー・エンゼル)さんにインタビュー

追憶のシャーロック・ホームズこんばんわ、きんどるどうでしょうです。
いま話題、もしくはこれから話題になるであろうKindle作家にインタビューするKDP最前線。今夜はその第84回。
古典ミステリーの名作をベースにした耽美小説「追憶のシャーロック・ホームズ-ワトスン博士最後の告白-」を執筆した牛乃あゆみ(兼ホズマー・エンゼル)さんです。
牛乃あゆみさんには本作執筆のキッカケやオススメのポイントをなどを語っていただきました。さぁ、いったいどんなお話が聞けるのでしょうか。もちろん、本作はAmazonKindleで無料で試読が可能です。

追憶のシャーロック・ホームズ-ワトスン博士最後の告白-

“「シャーロック・ホームズの墓はどこにあるのか?」
私は何度聞かれたことだろう。それはけっして見つからない所、とだけ申しあげておこう……”
自らの死を予期したワトスン博士が初めて明かす、名探偵ホームズ若き日の無謀な冒険、そして二人の秘められた友情の物語。耽美風パスティーシュ(贋作小説)。※R18描写は含みません。
(同人誌にてご好評いただいた『シャーロック・ホームズの違法な冒険』(2004)改題・改訂版です)
価格:480円
評価:最初のレビューをお待ちしています
Amazon.co.jpで詳細を見る

インタビュー with 牛乃あゆみ(兼ホズマー・エンゼル)さん

――この作品を書いたキッカケを教えてください

ミもフタもないですが、「こういうのが読みたかったけど無かったから」。
…九年ほど前シャーロック・ホームズの原作にハマりまして、耽美系で原作の雰囲気を壊さないようなパロディ小説が読みたくなったんです。ホームズはパスティーシュと呼ばれるパロディ小説がたくさん出版されているんですが、同人誌を含めても、当時見たなかで比較的近かったのはロヘイズ・ピアシーの『わが愛しのホームズ』だけでした。(邦訳絶版・原書"My Dearest Holmes"はkindle版あり)…それが僭越な言い方ですが、自分には少しツボが違う部分もあったので、より自分好みのものを、自分の楽しみのために書き出したのきっかけです。
ワルノリした結果でしたが、その年の末にコミケに出して以来、作り足しながら八年ほど売っていました。良い反応もいただけて、自分も愛着があるのでずっと出し続けたいのですが、手製本で手間がかかる装丁にしたので作るのがしんどくなってきました。それで幸い原作著作権は失効していますし、よりたくさんのご同好の方に読んでいただける可能性もあると考えて、kindle本に移行しました。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

ご紹介するのは恐縮ですが、同人誌版でいただいたご感想では
「久しぶりにきちんとしたJUNE(ジュネ/同人誌での耽美系を指すジャンル名)を読んだ」
「泣いた。十回くらい繰り返し読んだ」
「本棚にホームズ原作と並べて保存している」
「これを読んで原作も読み返したくなった」

など身に余るお言葉をいただけました。
同人誌イベントと自サイトの通販のみだったので、読んで下さったのはすでにシャーロック・ホームズのファンで、かつ腐女子系の方がほとんどです。もともと腐女子のお仲間に読んでいただくことを想定したものですが、原作は読んでいなくとも楽しめるように意識しました。全体は事件を解決していくストーリーです。JUNEという同人用語が一般的には通じないので、商品説明には「耽美」と入れています。海外サイトでご紹介いただいた時にR15となっていたので、レーティング的にはその辺りなのかな、と思います。
この時代のイギリスでは同性愛行為は法に触れる犯罪でしたが、原作者のコナン・ドイルは医師であったせいか、同性愛を一種の病気として哀れみを持って見ていたようです。今の目で見るとそれも充分差別的ですが…。どちらにせよ「ドイルがもし腐女子向けホームズを依頼されたら…」という発想から始まったので、この時代の同性愛がかなり異常なものと見なされていたことを反映させました。
原作のヴィクトリア朝的道徳観からくるカタさや、ある種のジュヴナイルっぽさに魅力を感じているのでそこはなるべく継承しつつ、主役二人の絆を「原作ファンとしての自分が許せるライン」で強調して描いたつもりです。
文体は古風な翻訳小説の模倣で直訳調になっています。冒頭の引用詩も翻訳小説風になるように意識して付けました。原作ファンの方には細部のお遊びも楽しんでいただけるかと思います。著者名を原作からとって普段のペンネームを訳者にしているのですが、その名前を使った理由とか…。そこはオマケみたいなものですが。(笑)

――値段はどうやって決めましたか? また今後値段を変える予定はありますか?

この本に関しては、電子版発売の数ヶ月前まで売っていた紙版が700円なので、紙の価格より極端に下げるのは申し訳ない気持ちがありました。内容的にも「安いから」という理由で読んで頂けるものではないですし…。悩んだ末に今の価格にしました。今のところ変更は考えていません。
代わりに傾向の似た短編で廉価な本を作って、巻末に既刊紹介リンクをつけて、発売時に無料キャンペーンをしました。連動してDL数が上がったので、無駄ではなかったと思います。未知のご同好の方の目にどうやって触れていくかが、これからの課題です。

――作品を書くうえで悩んだところは?

最初の同人誌版は半年程度。初めは本にするつもりなく気楽に書いていたので、悩みはしませんでした。その分思いつきでアレコレ入れたので、本にすることにしてから苦労しました。(笑)

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

USでKDPが始まったのを知って、すぐに改稿を始めました。日本語ストアがオープンするまでに、細部ばかりですが史実的な部分などを書き直しています。

――Kindleで出すにあたって困ったことはありますか?

日本語KDPのシステムがまだ毎日のようにアップデートしていたので、体裁の確認に50回くらいファイルを作り直しました。長めの話だったので、頭がおかしくなりそうでした。Wordから縦書きkindleへの変換なんですが、ルビが対応していないのでカッコ書きに直すのも手間がかかりました。Wordからでも縦書きルビをそのまま変換できるといいんですが。

――本作を読んだ方にオススメしたい本や映画を教えてください

『閉じた本』(ギルバート・アデア/創元推理文庫)
眼球を失った老作家と、口述筆記のために雇われた青年のサスペンス。耽美作品ではないですが自分的にはJUNE的要素大あり。ホラーに近い感触で、関係が変わっていく過程がスリリングでした。ある意味小説でしかできないことをやっています。アデアは現代版『ベニスに死す』と言われる『ラブ&デス』が腐女子的に定番ですが、今回はあえてこれを。
『ゲイ短編小説集』(オスカー・ワイルド他・大橋洋一監訳/平凡社ライブラリー)
タイトルが露骨で手に取りにくいですが、ゲイ小説と聞いて想像するものとは違い、自分の考える耽美…同人誌用語でいえばJUNE(ジュネ)はまさにこれ。上品で贅沢な良書だと思います。
『あなたの人生の物語』(テッド・チャン/ハヤカワ文庫)
耽美は関係なく珠玉のSF短編集ですが、『理解』の宿敵の構図は腐女子の琴線にも触れまくり。…ごめんなさい。(笑)
『果てしなき旅』上・下(E.M.フォースター/岩波文庫)
自身が同性愛者だったE.M.フォースターの自伝的要素が感じられる長編。表面的には同性愛がテーマではなく、主人公は女性と結婚しますが、その雰囲気は色濃く出ています。女性の醜い面への辛辣な視線も印象的。フォースターは腐女子の基本図書(笑)『モーリス』の著者でもあります。
『深紅の法悦』(全集『怪奇幻想の文学』第一巻/新人物往来社・絶版)という吸血鬼もののアンソロジーから、『血の末裔』(リチャード・マシスン)と『死者の饗宴』(ジョン・メトカーフ)。泣ける職人芸短編と、萩尾望都先生の昔の作品に似た香りを感じる中編。
『草の花』(福永武彦/新潮文庫)
日本文学から、広い意味の耽美系では外せない一冊。サナトリウム文学の一つ。
映画
『ベニスに死す』
『シングルマン』
『狼たちの午後』
『L.A.コンフィデンシャル』
『夕陽のガンマン』
『モーリス』
『召使』

テレビドラマですが別格で『シャーロック』
…定番ですが。(笑)たくさんありすぎてキリがないのでこのへんで。

――影響を受けた、もしくは好きな作家さんを5人教えてください

四人しか浮かばなくてすみません。好きな作家さんです。
テッド・チャン、アーサー・コナン・ドイル、E.M.フォースター、芥川龍之介。

――今後の予定について簡単に教えてください

過去の同人誌からは、英語版を先に出していたホームズパロディのギャグ漫画『宇宙探偵ホォムズ』と『チョロQワトスン』、SFエンタメ小説『交霊航路』(タイトルは変更の可能性あり)の改稿・電子化作業をしています。もともとは特化した耽美書きではないので、これらも別に耽美ものではありません。でも基本的にそちら系は好きなので、うっすら要素は入っています…。(笑)その他映画評論系の本などもkindle化を考えています。
新作では、別のホームズものの長編小説『勝利者の庭』を七年くらいじっています。原作に出てくるホームズの学生時代の親友が関わる話で、一部はブログで公開もしたのですが、その部分はまるごと使わないかもしれません。
漫画系では、kindleで読むことを想定した仕様のグラフィック・ノベルを計画しています。ドイルのホームズ以外の短編の脚色でかなり時間がかかりそうですが、なんとか実現したいです。
ほかにオリジナルの短編小説・漫画なども順次電子書籍化していきたいです。小説の英語化も挑戦しようと思っているのですが、こちらは少しハードルが高いので、短編の英訳など少しずつ勉強しながら、焦らず模索していこうと思います。全部実現できるかどうかわかりませんが、やろうと思えばできる環境になっているのが嬉しいです。

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします

未読の方には、どこかにご興味をもっていただけたら、文体や雰囲気がご趣味に合うかどうか、ぜひストアの無料サンプルからお試しいただきたいです。…ホームズものだからでも、耽美系という所からでも、十九世紀のイギリスものだからでもなんでも…。万人向けの作品ではありませんが、ご趣味に合う読み手の方との幸運な出会いを願っています。
…読んでくださった方には、心からお礼を申し上げたいです。ありがとうございます。楽しんでいただけたかとても気になるので、お時間がありましたらストアのレビュー欄に一言、残していただけると大変嬉しいです。
ご感想は、メールなどで個人的にはたくさん頂いています。とても嬉しいです。これまでに頂いたものはプリントアウトして読み返しています。(笑)「一人でも読んでくれる人がいれば書ける」とよく言われますが、ある意味真理だと思います。
…蛇足ですが、「同人誌」という言葉に抵抗がある方がおられるかもしれないので少し…。若い人が作る二次創作のイメージがあるかもしれませんが、根本的には「同好の士が読む自費出版」程度の意味しかありません。ジャンルの幅も広いですし、作り手の年齢もキャリアもいろいろです。自分も中年の部類ではありますが、もっと上の方もたくさんおられますし、まだまだ若造だと思っています。
年さえとれば作品がよくなるわけではまったくないですが、少なくとも自腹を切って本を作る経験は積んでいます。もちろんお若い方できちんとしたものを作っている方もたくさんおられます。
これから同人誌が元になったkindle本は増えてくると思いますが、うちも含めて(笑)、どうか同人誌という言葉でご判断なさらず、サンプルでご判断いただけたらと思います。

著者プロフィール

牛乃あゆみ(兼ホズマー・エンゼル) Twitter @Ayumi_Ushino
kindle本はこれまでに『追憶のシャーロック・ホームズ−ワトスン博士最後の告白−』『王殺し』(ともに耽美・微耽美系/R15程度)、日本語ストアオープン前に『Space Detective Holmes: Squid and Watson』(日本語ギャグ漫画の英訳版)を出版。
マンガ・小説・イラスト・評論等で同人誌活動中。シャーロック・ホームズの他、旧作洋画全般、一部のホラー/マカロニ・ウエスタン、往年の東映時代劇、歌舞伎などのファン。収集癖のない中年オタク。

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