「はじめての漫画家マンガ」80年代に本気で漫画家に焦がれた現役創作者たちとわかちあいたい6作品|ゲームデザイナー・テウラーのブックリスト

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こんにちは、きんどるどうでしょうです。将来はじまるだろうKindleの読み放題サービス『Kindle Unlimited』に備えて、プロ・アマ問わず色んなこだわりを持つ方のオススメブックリストを頂く新企画「はじめての◯◯」。
第6回目は青春時代に漫画家を本気で目指し、現在は某ゲーム会社でゲームデザインを生業とするテウラーさんが本気で漫画家に焦がれた現役創作者たちとわかちあいたい「はじめての漫画家マンガ」を頂きました。
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はじめての漫画家マンガ

きんどうをご覧のみなさまはじめましてテウラーと申します。先日のきんどうオフ会にて「はじめての○○」にお誘い頂き、レビューを書かせていただくことになりました。
現在はゲームデザインを生業として十数年経ちますが、かつては漫画家を目指していました。『桃太郎電鉄シリーズ』などゲームデザイナーとして有名なさくまあきら氏が、20数年前に同氏が主催していた新人漫画家育成雑誌に投稿したことをきっかけに師事し、そこで同じく漫画家志望の仲間たちと出会い、技術を切磋琢磨した過去をもっています
今は違う道に進んでいますが、マンガ家という生き方には今でも熱い浪漫を感じています。そこで今回「漫画家」を題材にした作品をご紹介いたします。漫画家マンガの中でもジャンルは色々ありますが、今回紹介させててもらうのは、ただひとつの共通点「マンガを描く事が好き」という気持ちで繋がった作品たちです。
自分のようにマンガ、もしくは創作に熱い青春をついやしながらも「もう、マンガなんて遠い過去さ」という方々に是非知っていただきたい作品たちです

鳥山明も登場する、マンガ家になった少年のノンフィクション

学校へ行けない僕と9人の先生
棚園正一 (著)
価格:350円 ★★★★* 25件のレビュー

鳥山明先生と出会い、少年は生きる希望を見つけた。小~中学校時代、不登校だった著者の実体験を基にした物語。学校へ行けない日々、「9人の先生」との出会いと別れを通じて、喜び、傷つきながら成長していく少年の姿を描きます。

今回紹介させてもらう作品の中では、舞台となる時代が一番新しい作品になります。このタイトルを初めて知ったのは、連載が開始されたというネットのニュースサイトでした。
タイトル通り登校拒否になってしまった作者が、少年時代に出会った複数の先生の物語で、鳥山明氏が最後に登場するとの触れ込みでkindle化を楽しみにしていました。
読む前は9人の素晴らしい先生との出会いによって、登校拒否児童だった作者が学校に行けるようになったという、単純に良い話系の作品かと思っていましたが、いざ読んでみるとそんな甘い話ではありませんでした。
そもそもの登校拒否に陥ってしまったきっかけを作ったのは小学校の担任の先生だし、その後も正しい対応ができる先生に出会い一旦学校に行けるようになるのですが、事情により担任が無理解な人に変わった途端また元に戻ってしまったりと、様々な出来事が起こるたびに状態が変わり一進一退を繰り返します。
そんなある日、作者がずっとドラゴンボールが好きだった事から、母親の同級生だったというツテで鳥山明氏と面会します。そこで作者が尋ねた「学校に行かなくてもマンガ家になれますか?」という問いに、鳥山氏が答えた言葉とは?
単純に解決できる問題では無く、フィクションでも無いので、単純なハッピーエンドとはいきませんが、多くの問題を読者に投げかけてくる実に今日的な作品でした。


名言のオンパレード!マンガ家”炎尾燃”の伝説

燃えよペン 炎尾燃シリーズ
島本和彦 (著)
価格:540円 ★★★★* 15件のレビュー

東京にある炎プロダクション。そこでは一人の漫画家が、命がけで作品に取り組んでいた。彼の名は、炎尾燃。希代の熱血漫画家である。そのかたわらで仕事をする大野暁子は、炎プロに入ったばかりの新人アシスタント(……)炎尾燃の熱血ぶりは当時も今も全開だ!マンガとマンガ家を愛する全ての人々にささげる珠玉の名作。

島本和彦氏の作品であれば、「アオイホノオ」を上げるべきところですが、自分はあえてこの作品を推します。
一巻完結なので読みやすいと言うのも一つの理由ですが、アオイホノオは70年代後半から80年代アニメに関する知識が無いと全てを楽しむ事ができないのに比べ、「燃えろペン」は予備知識無しに楽しめる、どちらかと言うと限りなくフィクションに近い作品だからです。
作中でも作者本人が主人公の熱血マンガ家”炎尾燃”と自分を同一視されて困ると否定しているので自分自身を描いたマンガと呼べるか微妙なところですが、氏の日頃の熱い言動がどうしても主人公のイメージにかぶるので、自分の中でこの作品は自伝カテゴリーに入っています。
ドラマ版「アオイホノオ」の最終回では後日談として、マンガ家になった後の「ホノオモユル」の姿として、本作の主人公が登場しました。
マンガの中身は、ショッキングな場面の集中線を上手く描けないアシスタントに対して、彼女が大事にしていたテレカ(時代ですね・・・)を切り刻み、その衝撃を体感させたり、お気に入りのアイドルに会わないと原稿を描かないと言って担当編集者を困らせたりと、創作と狂気の狭間を行き来する姿が描かれており、これに大爆笑するか苦笑いするかは読み手の人生経験が問われる所です。
締め切り間際の修羅場で主人公が発した言葉、「あえて寝る!」をはじめ名言のオンパレード。
この後に同じ主人公で「吼えろペン」と「新吼えろペン」という作品も描かれましたが、こちらはタイムトラベラーあり暗殺者ありの何でもありのファンタジーになっており、全く別物ですがこちらはこちらで別の楽しさがあります。


何もかもみな懐かしい!マンガ家・一本気蛮の学生時代を描いたセミドキュメント

同人少女JB : 1
一本木蛮 (著)
価格:350円 ★★★★* 10件のレビュー

ふた昔ほど前の1980年代――ネットもケータイもない時代。主人公・八吹ジューベエ(♀)は現在でいうところのオタク(この言葉もまだなかった)女子高生だった。漫画誌へのハガキ投稿が趣味のジューベエが、ふとしたことから同人活動やコスプレにはまってゆく様を描いた、オタクコメディ・ロマンがここに開幕! 当時を知る30~40代の元オタ・現オタなら感涙間違いなし!

同人誌及びコスプレの草分け的存在で、現在もマンガ家としてはもちろんの事、昨年はドラマ「アオイホノオ」で時代考証や資料提供、役者さんへの作画指導を行うなど、様々な場面で活躍をしている一本気蛮さんの学生時代を描いたセミドキュメントです
松田聖子全盛の「ぶりっ子」女子がもてはやされた80年代初頭、まだオタクという言葉もなく、同人誌やコスプレも今ほどメジャーではなかった時代、好きな男子はキャプテンハーロックや島村ジョーと言う、学校では浮いた存在のマンガ・アニメ大好き少女。
そんな彼女がアニメファンがアニメファンのために描いたパロディ同人誌という物に出会い衝撃を受けます。
その後も「うる星やつら」のラムちゃんのコスプレをきっかけに有名となり、雑誌の読者ページにイラストを送る常連だった事から業界に一歩を踏み入れたりと時代的な近似性もあり「裏アオイホノオ」とも呼ぶべき作品となっています。
毎回島本和彦さんにネームのチェックを受けていたと言うほどの念の入りようで、OUTやファンロードという言葉に反応する、80年代にオタクだった人には必読の書です。


マンガ家・川三番地が巨匠ちばてつやのアシ時代を回想する歴史的価値ある作品

あしたのジョーに憧れて(1)
川三番地 (著)
価格:540円 ★★★★* 8件のレビュー

故郷・青森を後にして巨匠ちばてつや先生に弟子入りした田中(たなか)少年(川三番地)! そこには想像を越えた驚きと感動の日々があった……!! 元ちばプロの川三番地先生が、アシスタント時代の実体験をもとに熱く描き下ろす素晴らしき「漫画」の世界!

ご自身も長年にわたり少年マガジンにマンガを連載されていた川三番地 さんが、ちばてつや先生のアシスタント時代を回想する形で話は進みます。
当時のちばプロの雰囲気はもちろんの事、作画技法などもふんだんに描写されている歴史的価値の高い作品となっています。
線を引く際インクが垂れないように定規の下に1円玉を張って浮かせ隙間を開けたり、今は初めから枠線が引かれた原稿用紙が売られていますが、そのような物のない当時は、重ねた紙に穴をあけ、それをガイドに線を引くなど、デジタル作画全盛の今では不要となった技術や、ペンにインクを多めにつけ、わざと垂らすことで線に不安定感を出し、古い木造家屋の雰囲気を再現するなど、ちばプロ独特の技法が当時の原稿を引用しつつ描かれています。
プロの現場の厳しさも多く描写され、舞台自体は80年代以降ですが、70年代劇画全盛時代を切り開いてきたちぼてつや先生ならではの優しさと緊張感に満ちた仕事場を描いた他とは一線を画す作品になっています。


藤子不二雄(A)「まんが道」の続編。マンガ家になった後の苦闘を知る

「愛…しりそめし頃に…」(1)
藤子不二雄(A) (著)
価格:492円 ★★★★★ 11件のレビュー

『まんが道』の続編として藤子不二雄A先生の青春記を描いた作品。『愛・・・しりそめし頃に・・・』では、少し大人になった満賀道雄が、昭和30年代の漫画黎明期をトキワ荘で過ごした漫画界の若き巨匠達とともに、一人前の漫画家に成長していくまでが描かれている。多くの漫画家志望者を励まし、勇気づけ、導いた「魂の物語」。待望の第1巻!!

藤子不二雄(A)氏による「まんが道」の続編で、そちらが、まだ何者でもなかった小学生の満賀道雄が相棒:才野茂と出会い、やがて就職し、手塚治虫先生とのエピソードを挟みつつ、上京しマンガ家としての暮らしを始め、挫折を経験しながら成長してゆく物語なのに対し、こちらはマンガ家になったものの仕事に伸び悩み、唯一の連載「ロケットくん」も打ち切りにならんとする、やや不調な時代から物語ははじまります
寺田ヒロオ氏や石森章太郎氏など、おなじみのトキワ荘の人々をはじめ手塚先生も登場しますが、「マンガ道」と比べると、相棒:才野茂の存在感が若干薄く、藤子不二雄としてではなく安孫子素雄として、当時自分が見て感じた事柄を丁寧に描いていこうという姿勢が感じられます
時代背景の描写も生き生きとしており、高度経済成長期の空気を感じることができます。


フィクションだけれども、現実と絡み合う不思議な熱を持つ作品

チェイサー(1)
コージィ城倉 (著)
価格:540円 ★★★★* 9件のレビュー

時は昭和30年代前半。まだ週刊漫画雑誌もなかった時代…既に時代の寵児となっていた“漫画の神様”手塚治虫に人知れず挑み続ける一人の漫画家がいた!!海徳光市。月刊誌に3本の連載を抱える、そこそこの人気漫画家である(……)そして、手塚がアレをしていると聞けば、自分も真似をし、コレをやっていると聞けば、それに挑戦してみる。どこまでも手塚治虫を“勝手にライバル視する男”…海徳光市の奮闘記!!

昭和30年代、既に人気を不動の物としていた手塚治虫氏を一方的にライバル視するマンガ家海徳が、対抗心から突拍子もない行動を起こし周囲が困惑するというメインストーリー。フィクションなのですが、当時実際に起こった出来事が絡み合うことで一風変わったドキュメントとも取れる、不思議な雰囲気を醸し出す作品です。
手塚先生が締め切り間際でカンヅメになっている仕事場から逃げ出したと聞けば、用も無いのに原稿が描けないと言って旅館を予約させ、二階のトイレから逃げ出し大けがをしたり、
アニメの仕事をするために東映動画の嘱託になった聞けば、自分もアニメスタジオに弟子入りするなど、手塚先生がやっている事は全て真似しないと気が済まないという、ライバルと言うよりも恋に似た歪んだ愛情表現が70年代劇画調の絵柄にもかかわらず主人公を可愛く見せています
しかし海徳の作品批評は厳しく、火の鳥を「わけのわからない作品」と言ってみたり、ジャングル大帝での肉食動物と草食動物の共存する描写に疑問を呈したりと他のマンガでは味わえない突っ込んだ表現が魅力でもあります。
週刊少年サンデーとマガジンの創刊に際しての作家争奪戦や「嘘か?真か?」の高額な専属契約金のエピソードなど、バクマンにも通じる当時のマンガ界の裏側も描かれていて興味深いです。
作中何度も「この人物は実在した!」と紹介されますが、モデルはわかりません。
しかし、海徳を当時手塚先生をライバルとして励んでいたマンガ家たちの集団意識の塊だと考えれば、彼は確実に存在したのです


総括:おわりに

高度経済成長期からやがてバブル、そして平成へと時代は変わりましたが、いずれの時代もマンガの魅力に魅入られる人は後を絶ちません。
手塚治虫氏が多くの後進のマンガ家たちに影響を与えた「新宝島」を描いてから、もうすぐ70年になろうとしています。メディアが紙から電子に移ろうとも、100年後200年後も相変わらず我々を楽しませ続けてくれることでしょう。
この記事を書いた人:テウラー
京都在住のゲームデザイナー
Twitter:@matsumichi3

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AppleMusicのオススメのように、将来はじまるだろうKindleの読み放題サービス『Kindle Unlimited』に備えて、プロ・アマ問わず色んなこだわりを持つ方にブックリストを頂き新しい本との出会いを模索します。
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