リアル書店で腕を奮うコミック担当書店員・通称コミタンたちが、AmazonKindleユーザー向けに新作・注目作をナビゲート。新企画『新作コミック沼へようこそ with コミタン！』通称：コミ沼がスタート！ 今回はAmazonKindleで1月1日から1月10日までに配信された新作コミックから3作品をピックアップしてもらいました。
紙と電子の垣根とかは置いておいて『面白いものはおもしろい』と積極的に盛り上げていければと今後定期的にゲストポストをいただくことになりました。各作品のレビューを通じた販売数で10人の書店員が競争します。「よーし、この切り口気に入った！」という作品はポチッにご協力頂けると喜びます。それでは以下、リアル書店員さんたちによる新作レビューをどうぞ。
-- きんどうここまで
新作コミック沼へようこそ with コミタン
コミック担当、それは日々書店に送られてくる新刊マンガをいち早く精査し、店頭に並べ、そして最も読者を近くで見ているプロフェッショナル。そんな各書店のコミック担当有志が日々新刊情報を発信するブログ「コミタン！」から紙と電子の垣根を超えて「これ、来るよ！」「アツい」「尊い」と心に響いた作品をご紹介します。
さて、今週紹介するのは以下3冊
・異世界を乗りこなせ！肉体派大統領の大活劇『ライドンキング』
・押しの強さにゆっくり溶けていく女騎士にキュンキュン『今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画』
・自分が作った物語のキャラクターに転生、あの時作ったストーリーを書き換えなければ死『転生悪女の黒歴史』
シリウスKC ライドンキング(1)
ライドンキング（１） (シリウスコミックス)
武術・格闘技の達人であり、強い男を尊ぶプルジア国民から絶大な支持を受けている男、プルジア共和国終身大統領アレクサンドル・プルチノフ。ある日、愛虎アスランにまたがり政務に向かう途中、テロリストの襲撃を受ける。テロリストは難なく返り討ちにした大統領だったが、この襲撃で起きたあることをきっかけに気を失ってしまう。目覚めた大統領の目の前に広がる光景、それは人間とモンスターが共生する異世界だった！
男たるもの、やはり何かを乗りこなしたいという気持ちがある。幼い頃はプレゼントのロディにまたがり、誕生日にもらった自転車の補助輪が外れることに喜ぶ。やがて自ら購入したバイクで夜を駆け、年齢を重ねて自動車という空間に浸り、時には野生を感じに乗馬なんかもしてみたい……。
騎乗欲ともいうべき、そんな欲求を追い求める男がいる。中央アジアの一角を担う架空の国・プルジア共和国。その独立を主導し、いまや大統領として国家すらも”乗りこなす”、アレクサンドル・プルチノフ。どこか寒そうな大国の大統領を彷彿とさせる凶相をもち、その外見を裏切らず(?) 様々な武術・格闘技を極めたこの男が主人公だ。
戦闘機や最新鋭の航空機にも飽きるほど乗ってしまい、どこか満ち足りない様子のプルチノフ。また国家という大船の舵取りにも忙しく、思うように”乗りこなし”ができない日々が続いていた。
よろしいならば異世界だ(便利！)
唐突に国家元首を襲うテロリズム。色々あって(君は大型トラックに一本背負いをかける方法を知っているか？) 異世界に送られたプルチノフの眼前にいたものは……異世界のお約束的生き物「ワイバーン」。
徒手空拳ながらも流石の大統領、なんやかんやあってワイバーンにまたがった時に身体を駆け巡った至福！こうなっては未知の生き物たちに対する騎乗欲が収まらない。信じられるものは己の肉体のみ、格闘家としてのスキルと果てなき騎乗欲でこの異世界にライド・オン！
圧倒的な存在感の主人公と「細けぇことはいいんだよ！」と言わんばかりのトンデモ展開で異世界ブームをパロディしながらも、じっとコマを見るとプルチノフの筋肉から建物・小道具まで非常に細密な絵柄であることのギャップがもたらす謎の説得力！心のなかの男の子がニヤニヤしっぱなし、早速の重版待ったなしを予想している新作です。
【モリ】
シリウスKC 今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画(1)
今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画（１） (シリウスコミックス)
『聖剣』レオ・コルネリア。国内最強と謳われるこの女騎士は、今まで一度も女扱いされたことがなかった。だがある日、魔法使い・フーリーから、突如として愛の告白を受ける。そう！ なんと女扱いされてしまったのだ！今まで一度も女扱いされたことがない、レオの運命は如何に！？
レオ・コルネリア。人呼んで「無敗の聖剣」。どんな相手にも負けず国のための剣として戦う。そんな無敗の女剣士レオが、いま戸惑っている。幼少期から剣の道一筋に生きてきた彼女にとって、およそ想像もしなかったであろう試練。
それは突然あらわれた魔法使いの男・フーリーからの愛の告白！これって一体どう対処すればいいんだようぅぅぅぅぅぅ！
遠く古来より、勝気な人物がぽろっとデレるシチュエーションは皆さん大好きですよね(確認)。このお話はその大好物の食べ放題、わんこそば状態なのです。
愛の告白を受けて、少しずつほだされていくレオの姿に萌えます。女剣士の顔から素に戻って頬を赤らめるとこ、たまらない。
これでもかというほどレオさま愛を貫くフーリーは、登場ごとに彼女のことを押して押して押しまくる。その姿、もはや清々しい！時代が時代なら逮捕されてもおかしくない。その愛でレオさまの可愛いところをもっと引き出してくれ！
一度も女扱いされたことがないレオさま、はじめは身に覚えのない好意を向けられて怒りや呆れのリアクションばかりだったのですが、それでもめげないフーリーの姿に徐々にほだされていき・・・。気づけばタイトルの一発ネタに留まらず、2人の恋が育っていくときめきラブコメの様相も。一進一退の関係に胸がきゅんきゅんしちゃいます。
素直なところを見せられない女剣士と素直すぎる情熱的な魔法使いの、少しズレた恋愛育成クエストコメディ。思いきりニヤけて悶えてくださいっ！
【うずら】
花とゆめコミックス 転生悪女の黒歴史(1)
転生悪女の黒歴史 1 (花とゆめコミックス)
佐藤コノハには「黒歴史」がある。中学時代の全てを懸けて書いたそれは・・・ 伯爵令嬢コノハが騎士に愛される、恋と魔法の冒険ファンタジー！ ある日、「黒歴史」を母親に見つけられそうになったコノハは、焦って交通事故で本当に死んでしまう!! 次に目を醒ますと、そこは自分の創作した「黒歴史」の世界で、コノハの妹である、自分の考えた最強の悪女・イアナに転生していて？
中二病真っ盛りの頃に自分をヒロインとして空想していた物語への転生。でも転生したのがやがて死ぬことを設定された悪役だったら、一体どんな行動を取るのが正解――？
いま最も勢いのあるジャンル「異世界転生」！この企画でも何回目かの紹介となるジャンルですね。多種多様なヒット作が生まれている作品群をチェックするうち、ある構図に目がいくようになりました。それは「ストーリーはこびにおいて明確な役割をもったキャラクターへの転生」というものです。
現在の転生もので主流の1つとなったのは、転生後にチートな能力を持って無双する物語。主人公の行動がある程度気ままであっても、その強大すぎる力によって転生先の世界や国家といった大きな存在が動いていく気持ちよさがあります。
しかし「キャラクターへの転生」においては、主人公の行動は周囲の人物たちとの密接なやり取りによるものが中心になります。そのキャラクターとしてどう振る舞えば違和感がなく、そしてこの異世界の事情を解決していくのが正解なのか……。こう整理してみると、実はこれって少女マンガ作品の中では王道のひとつである感じもしますね。
ひとつの温故知新という感じで今回ご紹介する作品は『転生悪女の黒歴史』。ファンタジー少女マンガ誌安心の定番「花とゆめ」レーベルからの出版、ちなみに連載誌は少しお姉さん肌なイメージの「LaLa」となっています。
さて今作の主人公が転生したキャラクターは、一言で形容すれば悪女。物語のヒロインに対して時にその命を狙うほどの嫌がらせをして、イケメン騎士との恋仲を妨害するキャラクターです。自分を投影していたヒロインを際立たせるため過激なほどに悪役に描かれたキャラクターへの転生。確か筋書きによるとヒロインのハッピーエンドのため、やがて悪役である自分は暗殺されてしまうはず……。
そんなのいやだ～～！！ 改心して無害な存在になったことを周囲に知ってもらわないと、死んでしまう！！
この物語を(できれば)誰も不幸にならないストーリーへと改変するべく、警戒されまくりの悪女というマイナスのスタート地点から大奔走！ 失敗したらそこには待つのは悲しい死。頼りになるのは断片的に思い出せる作品の設定だけ……。
物語上キャラクターに与えられた役割をメタ的に解釈しながら、あの手この手で物語を前進させていく主人公の姿、既存の少女マンガ読者には勿論ながら異世界転生に興味のある男性にもぜひご一読いただければと思います。
【モリ】
以上、紙書店コミック担当者有志によるチーム・コミタン！による提供レビューでした。
来月発売のコミック新刊を語るYouTube配信や、毎週のオススメ作品を一口紹介する週刊コミタン！を更新中。新刊コミック最新中の最新情報にキャッチアップしたい方、ぜひ「コミタン！ブログ」にも遊びにきてください。
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『テキトーなメイドのお姉さんと偉そうで一途な坊っちゃん(1)』『御令嬢高嶋清乃は密かに嗜む。(1)』など、コミタン！の本日注目コミック新刊7タイトル！ 2019/01/26 を投稿しましたhttps://t.co/7bIuaUA5Lh
— コミック担当者のチーム:コミタン! comitans.info (@comitans) January 26, 2019
