この優しさに触れて欲しい 佐原ミズ『尾かしら付き。』などリアル書店員が推薦する、これから来る新刊3冊


リアル書店で腕を奮うコミック担当書店員・通称コミタンたちが、AmazonKindleユーザー向けに新作・注目作をナビゲート。新企画『新作コミック沼へようこそ with コミタン!』通称:コミ沼。今回はAmazonKindleで11月8日から23日までに配信された新作コミックから3作品をピックアップしてもらいました。

紙と電子の垣根とかは置いておいて『面白いものはおもしろい』と積極的に盛り上げていければと今後定期的にゲストポストをいただくことになりました。各作品のレビューを通じた販売数で10人の書店員が競争します。「よーし、この切り口気に入った!」という作品はポチッにご協力頂けると喜びます。それでは以下、リアル書店員さんたちによる新作レビューをどうぞ。

-- きんどうここまで


第3回 『新作コミック沼へようこそ with コミタン!』

コミック担当、それは日々書店に送られてくる新刊マンガをいち早く精査し、店頭に並べ、そして最も読者を近くで見ているプロフェッショナル。そんな各書店のコミック担当有志が日々新刊情報を発信するブログ「コミタン!」から紙と電子の垣根を超えて「これ、来るよ!」「アツい」「尊い」と心に響いた作品をご紹介します。

さて、今週紹介するのは以下3冊

『マイガール』の佐原ミズ最新作は思春期の男女!『尾かしら付き。』
あのコの意外なギャップから目が離せない!『高梨さんはライブに夢中』
しっとり浸れる終末世界の温かさ『旅とごはんと終末世界』

徳間書店 ゼノンコミックス 尾かしら付き。(1) 佐原ミズ

尾かしら付き。 1巻 Kindle版

佐原ミズ (著)
価格:583円

樋山那智、ソフトボールに汗を流し、日焼けに憧れる平凡な中学生。彼女は同級生の宇津見君が抱える重大な秘密を知ってしまう。それは彼に「しっぽが生えている」ということ。「みんなと違う」ことに戸惑い傷つきながらも、ふたりが心を通わせあう、10年間の物語――。

思春期に誰もが経験する悩み。自分だけ変なんじゃないかとか、なんであの子のように出来ないんだろうとか、そんな葛藤に心当たりはありませんか?

この漫画の主人公は、健康的に日焼けした肌に憧れる平凡な中学生の女の子・那智(なち)。

どうして周りの子と一緒じゃないんだろうと考え込んでしまいがちなタイプ。日々なんとなく楽しくないまま過ごすある日の放課後、同級生の男子の重大な秘密を知ってしまう。それは彼に“しっぽ”が生えていること。

明らかに人と違う”しっぽ”。そのことで彼はどんな悩みを持って生きてきたのでしょうか。周囲と同じになりたい女の子と、どうしても“人と違う”男の子。思春期の二人が戸惑い、また傷付きながら、しかし支えあいながら成長していく物語です

人と違うことは周りの理解を得られないことも、またバッシングのもととなりうることもある。それでも前を向いて、悔しい思いをしながらも進んでいく思春期からの青春時代。佐原ミズ先生がその優しくも繊細で美しい画で描く日常、そして胸に沁み渡るセリフの根底にある他者への思いやりは、迷い悩む読者をあたたかく受け止めます。

青春は終われど仕事や普段の日々の出来事で少し疲れている大人の方に、もちろん今まさに日々葛藤している青春時代の方にもおすすめしたい作品です。佐原ミズ先生が描く本作、優しさに触れてみませんか?

【さましよ】

講談社 モーニングKC 高梨さんはライブに夢中(1) 榎屋克優

高梨さんはライブに夢中(1) (モーニングコミックス) Kindle版

榎屋克優 (著)
価格:648円

新人サラリーマンの坪坂亮平は、たまたま足を運んだライブで同僚の高梨さんとバッタリ遭遇する。会社では物静かな彼女の正体は、なんと筋金入りのライブマニアだったのだ! そんな彼女にひと目惚れした坪坂くんのアツくて危険(?)なライブ・ライフが始まる! 『日々ロック』の榎屋克優が贈る体感型音楽漫画、ここに開演!!!

いじめられっ子がロックスターへの階段をのぼる『日々ロック』で音楽シーンの「エモ」を描いた榎屋克優による新連載第1巻。ライブで演奏をする側のマンガは『日々ロック』に限らず『BECK』や『ましろのおと』など名作の枚挙にいとまがないのですが、この作品は珍しくライブを観る側のお話なんです。

本にまつわる仕事と同じぐらい音楽ライブを観に行くのが好きな自分にとって、この『高梨さんはライブに夢中』で描かれているライブの高揚感は、大好きが重なった奇跡の場所。これはぜひ皆さんにお伝えしなければと思うものでした。

話の始まりは主人公が友人の結婚式でもらったライブのチケット。それまで音楽のライブに行ったとがなく、イマイチ気乗りしないままやってきた会場。そこで思いがけず出会ったのが、同僚だけど取っつきにくいイメージがある高梨さん。髪をざっくりと後ろで縛ってこだわりのなさそうなメガネ。見た目は少しばかり、いやだいぶ地味な感じ...?

だったんですが!フロアで出会った高梨さんの姿はそんなイメージと全く違います。普段は全く見せない気合の入りようで、髪が乱れるのも気にせず汗だくでライブを楽しんでいます。

そんな高梨さんにあてられて、最初は気乗りしていなかった主人公もだんだんライブの波に飲まれていきます。

これなんです。ライブ会場で得られる唯一無二の高揚感と一体感。それらから得られる非日常を体感したくてライブに行っているのです。

そしてそんな非日常で出会った無敵な女性が、しかもいつもの姿を知っている女性のことが男として気にならないわけがない。なにかに夢中になっている女性の、普段とのギャップに思わずクラっと来ちゃうような人にもぜひ読んでみて欲しい作品です。

もちろん、自分みたいなライブ狂が、忙しくてちょっと会場に足を運べていないときの興奮ドーピングにもオススメです。

【tak】

スクウェア・エニックス ガンガンコミックス 旅とごはんと終末世界(1) 文ノ梛

旅とごはんと終末世界 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス) Kindle版

文ノ梛 (著)
価格:607円

人の時代が終わりを迎え、ゆるやかに静止してゆく世界。ロボットの人 蘇芳は、犬の人 ミュートを連れ添い自分を設計した博士≪ご主人様≫を捜す旅をしていた。道中で出会う、停止した時計塔、朽ちた学校、街だった廃墟。かつてそこに居た人々の名残りを感じながら蘇芳たちは今日も旅をし、おいしいごはんを作って食べる。もうすぐ終わる世界を巡る、終末スローライフ。

「とても自然に、あっけなく」訪れた人の時代の終わり。静かに静かに消えていくこの世界を旅するのは、ロボットの人・蘇芳(スオウ)とその保護者役、犬の人・ミュートさん。

この穏やかな世界を旅する二人の目的。それは、蘇芳を置いてどこかへ行ってしまった”ご主人様”捜しです。休眠から目覚めて家をでた二人は、旅の途中で消えていった時代の痕跡に出会います。

人間の「隣人」にすぎない蘇芳とミュートさんが何を感じ、何をするのか…それが各回のお楽しみなのですが、私たちと変わらずにある問題が一つ。そう、「ごはん」です。

人の時代の終わり、静かな世界の中で、いつもと変わらずごはんを食べる二人の姿を見ているとほっこりするのです。僕たちがいなくなってもこんな風に世界は続いていくんだろうしれないなぁ、と思えたら、忙しい毎日もなんだかちょっぴり気楽に、ちょっぴり愛おしくなるかも。さて明日は何を食べようかな。

【ナガサカ】


以上、紙書店コミック担当者有志によるチーム・コミタン!による提供レビューでした。

来月発売のコミック新刊を語るYouTube配信や、毎週のオススメ作品を一口紹介する週刊コミタン!を更新中。新刊コミック最新中の最新情報にキャッチアップしたい方、ぜひ「コミタン!ブログ」にも遊びにきてください。
https://comitans.info/

*各作品画像はKindleストアで公開中のサンプルより引用しています。

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