【推薦】ゆうきまさみが描く「ヒーロー不在の時代」が、面白くない訳がない『新九郎、奔る!』第1巻


AmazonKindleにてゆうきまさみの新作『新九郎、奔る!』第1巻を読者の方よりレビューいただきましたのでご紹介。

ゆうきまさみといえば言わずとした『パトレイバー』『究極超人あ~る』『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』など多数の代表作をもつ人気マンガ家。そんなベテランが挑んだ新作は”織田信長、豊臣秀吉、徳川家康…… かの有名な武将たちが活躍する時代の少し前、戦乱の世のはじまり”という室町時代後期

主人公は戦国大名の先駆けと言われる伊勢新九郎(後の北条早雲)。知られざる伊勢新九郎の生涯を、まったく新しい解釈で描く時代劇をお楽しみいただけます。こちら第1巻では主人公の目を通して、室町時代中期の「文正の政変」から「応仁の乱」の始まりまでを描かれているようですよ。

縁あってゆうきまさみ先生のTwitterを拝見していますが、本作にかける意気込みが熱いのでこの機会に是非1巻がでたばかりの新作をぜひ。

新九郎、奔る!(1) (ビッグコミックス)

ゆうきまさみ (著)
価格:648円

戦国大名の先駆け、伊勢新九郎の物語! 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康…… かの有名な武将たちが活躍する時代の少し前、戦乱の世のはじまりを生き抜き、切り開いた男がいた――― その名を伊勢新九郎。 彼はいかにして戦国大名となったのか。 彼はそもそも何者だったのか。

【ゲスト寄稿】漫画アニメ不毛の地、室町時代を描く歴史漫画『新九郎、奔る!』

はじめまして。今井士郎と申します。

受験生として歴史のお勉強をしていると、『室町時代』のイメージって、スコーンと抜けてしまったりします。暗記している年号の語呂合わせも、794(ナクヨ)ウグイス平安京、1192(イイクニ)作ろう鎌倉幕府(最近は、鎌倉幕府の成立が1185年扱いなんでしたっけ?)の次は、1543(イゴヨサン)で作りますの鉄砲伝来に、400年も飛んでしまったりして。

歴史上の偉人を召還して戦う大人気スマホゲームでも、源平合戦と戦国時代のヒーローは登場しても、室町時代のヒーローは登場しません。そんなヒーロー不在の時代を描くのにうってつけの漫画家が、新作を発表しました。ビッグコミックスピリッツ連載『新九郎、奔る!(しんくろう、はしる)』(ゆうきまさみ著)です

後の戦国大名、北条早雲(ほうじょうそううん)となる若き武士、伊勢新九郎(いせしんくろう)=千代丸(ちよまる)と、彼を取り巻く室町幕府の政争・戦争が描かれます。イケメンショタ 千代丸は、いかにして1巻冒頭の無骨なおじさん 新九郎に成長していったのでしょうか。

素晴らしき地味漫画

1巻の範囲では、正直、地味な漫画です。決めゴマと呼べるような大ゴマ・登場人物が見栄を切るようなコマはなく、淡々と進んでいきます。それなのに、登場人物は愛らしくて、物語は面白い。

頭が良く、正義感の強い主人公、千代丸は、可愛らしく愛すべきイケメンですし、かつての「六分の一衆」山名家を率いる山名宗全(やまなそうぜん)は、迫力と殺気に溢れる好々爺です。

個人的に一番のお気に入りは「人当たりは良いが、目が笑っていない」男、細川勝元(ほそかわかつもと)です。彼の「目が笑う」シーンは、一巻屈指の名シーンですよ。お子様が生まれたシーンの細川勝元。「普段、目だけは笑っていない」キャラの「目だけが笑う」って、どれだけ高度で、愛らしい表現でしょうか。

漫画版『パトレイバー』を描いた男の、武家社会漫画

この作品に出てくる人たちは、どーも、弱々しいところが多いです。

冒頭のおじさんバージョン新九郎からして「主が変わる度に右往左往」してきたそうで、「俺の主は俺だ!」と内心で宣言するのさえ一大事、という人物です。
リアルでは分かりますけど、漫画の登場人物、しかも時代劇の主人公としては、なんだかみみっちいですよね。
……半年で配置換えをされてモヤモヤしているサラリーマンとしても、シンパシーを感じます。

新九郎の親戚をはじめとした権力者達も、幕府という政治機構の中で、周りの実力者の顔色を伺いながら、バランスを取りながら政争を繰り広げます。

極めつけは、天下の8代将軍、足利義政(あしかがよしまさ)。幕府の最高権力者である彼でさえ、「部下に強く言われると、言うことがフラフラ変わる」キャラとして造形されています。

テレビの時代劇と言えば、「水戸黄門」「遠山の金さん」「暴れん坊将軍」等、襲い来る敵を一騎当千で切った張ったする「ヒーロー」が象徴的です。それに比べたときの、この作品の登場人物の弱々しさときたら。しかし、それが作品の魅力なんですよね。

「現実」にはスーパーヒーローなんていない。人は一人ではなにもできなくて、「普通の人」の頑張りで世の中は回っていくし変わっていく。そんな魅力的なメッセージを送り出したゆうきまさみが描く「ヒーロー不在の時代」が、面白くない訳がないじゃないですか。

押さえておきたい予備知識

本作、登場人物が多いです。日本史の基礎的なところだけは押さえておかないと、読むのに苦労するかもしれません。本当は、教科書や歴史漫画を一読して、代表的な登場人物を把握しておく方が読みやすいとは思うのですが……。

彼らだけは、覚えておきましょう。後は、繰り返し読んでいればなんとかなります。

足利義政(よしまさ):足利幕府8代将軍。銀閣寺を作った人。日和見。作品中では「御所様(ごしょさま)」と呼ばれる。

足利義視(よしみ):義政の弟。坊さんであったが、跡継ぎのいない義政が「どうか後を継いでくれ」と頼んだため、坊さんをやめて跡継ぎになる。後に、義政に子供(=跡継ぎ候補)が生まれてしまったことが、トラブルの火種となる。作品中では「今出川殿(いまでがわどの)」と呼ばれる。

細川勝元:足利幕府の前の管領(かんれい)。管領とは、国の副総理大臣か会社の副社長みたいな人。軍事的にはトップクラスに強い。

山名宗全:細川勝元の舅。勝元と仲良くはなく、火花をバチバチ散らす。軍事的には細川勝元と同じかそれ以上に強い。

最後に

題材としては重くて難解なはずなのに、登場人物の節々の軽さと、作者一流の小粋なジョークとして混ぜ込んでいるためか、すいすい読める作品です。なじみの薄い「時代劇」の入り口として、はたまた受験勉強の知識のくさびとして、なんて目的でも、読んでみてはいかがでしょうか。


現代で御用提灯が描かれていた、漫画『機動警察パトレイバー』1巻のノリを彷彿させる時代錯誤な1コマ。室町時代に、スクリーンがあってたまるかいwww

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新九郎、奔る!(1) (ビッグコミックス)

ゆうきまさみ (著)
価格:648円

戦国大名の先駆け、伊勢新九郎の物語! 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康…… かの有名な武将たちが活躍する時代の少し前、戦乱の世のはじまりを生き抜き、切り開いた男がいた――― その名を伊勢新九郎。 彼はいかにして戦国大名となったのか。 彼はそもそも何者だったのか。

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この記事を書いた人 今井士郎@shiroimai さん!ありがとうございました


あわせてどうぞ! 作者・ゆうきまさみ先生の意気込みを感じるツイート

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