テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術「あなたの縦書き文書を美しくする数字の書き分け方」

この記事はKindle作家の”晴海まどか”さんからゲストポストいただきました
1308091こんにちは、小説書いたりテクニカルライターなんて仕事をやってたりした晴海まどかです。
「テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術」第2回。前回のアルファベットの半角全角の使い分けから派生して、今回は数字の書き分け方について考えてみます。なお、今回は"縦書き"の"小説の場合を想定した"表記を中心とした紹介していきます!ちょっと長いです!
前回の記事はこちら:テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術「アルファベットの半角・全角の使い分け」

あなたの縦書き文書を美しくする数字の書き分け方

まずは数字の文字種をおさらい

日本語の文章で頻出する数字の文字種は、主に次の三種類。
・漢数字(一、二、三……)
・全角アラビア数字(1、2、3……)
・半角アラビア数字(1、2、3……)

うーん、何をどう使うか迷いますよね。しかも、漢数字に至っては、例えば1500だと「一五〇〇」「千五百」の2表記あるわけです。
本によっては「縦書きの場合は漢数字」と明言しているものもありますが、小説など表現規則が作者にゆだねられているフランクな文章の場合は、アラビア数字とうまく使い分けて読みやすさを向上させたいところ。
では、実際にどう使い分けたらよいのか考えてみましょう!

基本は漢数字、でもたまには使いたいアラビア数字

前述のとおり、縦書きの場合は"基本的には漢数字で書く"ことをおすすめします。が、"アラビア数字の方が読みやすい"と私が考えているパターンがいくつかあるので、まずはそちらをご紹介。
なお、以降全角アラビア数字、半角アラビア数字は全角数字、半角数字と略して表記します。

桁数が多い数値情報や計算式:半角数字

まずは、一番わかりやすい半角数字から。
半角アルファベットと同様、半角数字も縦書きだとくるっと回転してしまいます。なので"必要以上に半角数字は使わない"が鉄則ではあるのですが、それでも次の場合は半角数字を使った方が読みやすくなります。
・桁数が多い数値情報
「暗証番号は?」「135764654354658!」なぁんて場合や、小難しいデータの解析結果など、桁数がそこそこある(感覚的には5桁以上)数値情報の場合。これを漢数字や全角数字で書いちゃうともうげんなりです。何桁かもよくわかりません。
なお、金額など桁数が意味を持つ数値を半角数字で表す場合は、3桁区切りをお忘れなく!(例:123,400,000円)
・計算式
300×(x−y)=300x-300y」みたいな桁数がそこそこあったり、アルファベットを含む数式の場合。
ただし、「3×2=6」くらいの計算式だったら、全角数字でもありかなと個人的には思っています(これも決めの問題で、全体で統一されていればOKかと)。
あと、2〜3桁の数値情報を漢数字ではなくアラビア数字で表現したい、という場合は縦中横を設定するのもありだと思います。

桁数が少ない数値情報や英語読みさせる数字:全角数字

今度は全角数字を使うケース。
・桁数が少ない数値情報
数値情報なのでアラビア数字で書きたい、けど桁数が少ない、なんて場合は全角がおすすめ。
例えば、「この問題の答えは?」「7です」みたいな会話の場合、「」がくるっとしてしまうと読みにくくなります。
4桁くらいまでなら一目で判別できるので、全角数字にするのはどうでしょう。
・英語読みする数字
日本語一部で数字を英語読みさせたい場合は、全角数字がおすすめ。
これは、"全角アルファベットは日本語の一部として使う場合"と考え方は似ているかも知れません。
例えば、「ナンバー一」「ナンバーワン」は「ナンバー1」としてはどうでしょう?
なお、「スリー、ツー、ワン」など、英語読みの数字"だけ"の場合は、カタカナにするのがおすすめ。
「3、2、1」と書くと、「さん、に、いち」と読まれる気がします。どっちで読まれても別にいいならどっちでもいいですが。
あとは、「3、2、1」と書いておいて、「スリー、ツー、ワン」とルビを振るのもありかもしれません。

日本語の基本、とはいえ小難しい漢数字

じゃあ漢数字は?というと、これがアラビア数字の比じゃないくらい難しい。はっきりいって、これが絶対的に正しい!というルールはありません。フリーダム!そんな中で、"縦書き小説"での"読みやすさ"を考えた場合の、私のおすすめをご紹介。

基本は一、十、百……などを使った命数法

漢数字では、「一・十・百・千・万・億……」という単位の数詞を使って数字を書きます。これを"命数法"といいます。
この命数法を使った表記が日本語としては正しく、「三〇」などの漢数字の「〇(ゼロ)」を使った表記は、アラビア数字の表記を便宜的に模しているものだそうです。
なので、日本語の文章といえばの代表格でもある縦書き文章では、「〇(ゼロ)」を使わない命数法の表記を使うのが基本です。次のような場合がそうでしょうか。
・日本の年号:平成二十五年、昭和五十八年、など。
・月日:九月十日、十二月二十五日、など。
・年齢など日常会話に出てくるような数字:二十五歳、五百円、千本、一万年

とはいえ使いたい、漢数字の「〇(ゼロ)」

漢数字の〇は前述のとおり"アラビア数字を便宜的に模している"場合に使います。ということは、逆を言えば、漢数字の〇を便宜的に使うシーンがあるということになります。
じゃあどんな場合?というと、"ゼロであることを強調したい""ゼロを使った方が読みやすい"場合におすすめしたいと思います。具体的には、西暦の年号(一九九〇年、二〇〇四年、など)や、電話番号、部屋番号などの"桁数に意味がない"数字列の場合です。
また、「二〇・五」といった漢数字で小数点入りの数字を書きたい場合も、「〇」を使うと良さそうです。この場合、小数点に使う「・(中点)」は日本語の一部に混じった記号なので、全角を使うことをおすすめします。

命数法と「〇」を組み合わせる

日本語の数字のために生まれた命数法ですが、これにも欠点が一つ。
「十」や「千」などの単位の数詞は"一つの数字の中に複数含まれると読みにくくなる"場合が多いんです。いくつか例をあげてみます。
【例1】一万五千三百二十→一万五三二〇
こういう場合は、"大きい桁の数詞を一つ残し、下の桁は○を使う"と読みやすくなります。
【例2】三億六千五百十万→三億六五一〇万
最後の桁が「万」以上の数詞で終わっている場合は、"「万」以上の数詞だけを残す"と読みやすくなります。
以上の例を見てみると、どうやら桁数が増えた場合に「十」「百」「千」を使うと読みにくくなるようです。ただし、次の【例3】のようにこれらの数詞が冒頭に来る場合、または【例4】のように切りがいい場合は除きます。
【例3】十億七千万、百万五千
この場合は数詞が複数ありますが「一〇億七〇〇〇万」「一〇〇万五〇〇〇」とバラすと読みにくくなりますね。
【例4】千、百、十
「千円」をわざわざ「一〇〇〇円」と書くのは読みにくいし不自然ですよね。

いざ、例文を見てみよう!

では、これまでの内容を踏まえて例文を見てみましょう!
<例1>1308091a
<例2>1308091b
とりあえず例文を作るのに苦労しました…。どうでしょうか?
正直なところ、アルファベットの使い分けほど劇的な差はないかもしれません。が、小説の慣例はどちらが多いかで考えるならば、やっぱり例1じゃないかなーと思います。アラビア数字ばかりになると、小説ではなくて雑誌の記事とかノンフィクション系の別の何かを読んでいるような感じになりませんか?そういう雰囲気を狙った作品なら逆にありだと思いますけど。
ちなみにですが、例1の1文目はタイマーのカウントダウンを表すので、あえて半角数字×縦中横にしてみました。
"その数字が何を表しているか"によって書き方を工夫するというのも、小説では一つの手だと思います。

しつこいけど厳格なルールはない

長々と説明してきたくせに結論はそれかいという感じなのですが。
例えば、アラビア数字の半角全角の使い分けや命数法と〇の組み合わせなどは読みやすさに劇的に差が出てくるので別ですが、「五〇〇円」でも「五百円」でもそこまで読みやすさに大差はないと思うんですよね。実際、商業出版されている小説を比較してみても、出版社や著者によって数字の書き方にはばらつきがあります。特にバラついているのが"十の桁の数字"(十五 or 一五)。ただ、これが作品の中で統一されていないと見た目には美しくありません。
結局のところ、小説は書いているあなたがルールブック。特に漢数字の使い方でフリーダムな部分については、自分が読みやすいと考えるルールを定めてそれで統一する、というのが一番大事じゃないかなと思います。

ちなみに(1):縦書きノンフィクションの場合

ここまでは小説の場合を想定したお話をしてきましたが、実用書やドキュメンタリーなどのノンフィクションの場合は、「記者ハンドブック」という出版・マスコミ業界では多分お馴染みだと思われる、以下の用事用語集を参考にされるとよいかと思います。
ちなみにこの本、数字の書き方はもちろん、常用漢字に対応した用事用語の使い方、外来語の用例集、差別語の一覧なんかも載っています。
Kindle版が出ていないのが残念なんですが、1冊手元にあると非常に便利だし勉強になります。小説しか書かないという方も、世の中にはこういうルールもあるんだという気づきになるのではないかと。

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ちなみに(2):横書きの場合

横書きの場合は、"アラビア数字で書く"というのが一般的なルールのようです。また、半角アルファベットの場合と同じで、見た目の美しさを重視して半角数字に統一してしまうのが個人的にはオススメ。
ただし、例外もあります。
「十人十色」「青二才」「一念発起」などの慣用句・熟語の場合は漢数字を使いましょう。
また、個人的には「ひとつ」「ひとり」のように読ませたい場合も漢数字の方が読みやすい気がします。

おわりに

いかがでしたでしょうか。いやー、数字って奥が深いですね!というか日本語難しい!つきつめて考えれば考えるほど正解が見えなくなる日本語。なんつー難しい言葉の国に生まれてきてしまったんだと思うことがしばしばあります。
アルファベットと数字を攻略したし、もうこれで執筆時に迷うことはない!と思いきや、そういえば記号は?記号にも半角全角ってあるんじゃなかったっけ??
ということで、次回は括弧を代表とする「記号の使い方」をご紹介します。

この記事を書いた人

晴海まどか Twitter @harumima
1983年生まれの乙女座のA型。千葉県育ち東京都在住の文章クリエイター。
7年強、テクニカルライターとして会社勤めをし、2013年8月からフリーに。三度の飯より書くのが好きな書く方の活字中毒。ミステリーでも青春ものでもホラーでも、書きたいものはなんでも書く雑食系。どちらかといえばYAよりの作風多め。小説を書くのはライフワークである。


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