「すごい=ツマらん」が読者のホンネ! 上手くなるための「感想」の読み解き方

soreyuke_logo15こくぼしんじです。
今回の話は厳密に言うと【構成編】に属する話ではアリマセン。
むしろ、これまでに話した「キャラ設定」「キャラ演出」「構成」――それらの全てに絡んでくる、補助的だけど、それでいて重要なお話です。まあ、少し読んでいただければ分かります。行ってみましょう。
これまでのそれいけ!ライターズはこちら

もっと上手くなるには、他人に見せるしかない!
――けれども。

作劇の実力を向上させる上で、やはり欠かせないのが「第三者に見てもらう」こと。
独りよがりを矯正してもらう意味でも、自分で気づかなかったミスを指摘してもらう意味でも、商品として必要な「完成度」を得るためには欠かせない工程です。
とはいえ……いくら多くの人に見てもらったからといって、それだけで作品の完成度が上がるかどうか、あるいは作者が作家として成長するかどうか、そこは分かりません。理由は2つ。
1つは、創作の世界には試験のように明確な答えがないから
もう1つは――上は建前なのでどうでもよくて、こっちが重要なんですけど――人様のくれる感想とは、必ずしも言葉の通りとは限らないからです。

読者は本音を語らない

世の中には、あなたの作品が内心でつまらないと思っていても、それを隠して「面白かったよ!」と言える人や、本質と関係ない部分を褒めてお茶を濁せる人が大勢います。
むしろ、あなたが寝る間も惜しんで描き上げた作品を見た直後、「ごめん、最初の2Pで読む気なくした」なんて、ド直球な本音を面と向かって言える人の方が少ないです。オレは実際に言ったことありますけど、コレは本当に、殺意の入った目で睨まれます。
あるいはこんな経験、ありませんか?
つまんない演劇などを見た後に、役者の演技も台本も褒めようがなくて、しょうがなく「音響(選曲)が良かった」だの「衣装がカワイかった」だのと言ってお茶を濁した経験。
経験? なかったら、例に出しません!!(笑)
某2chの管理人さんの名言「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」でもないんですけど、物書きの世界もそれと似ていて、
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……そういう世界なんです。

ホンネの感想をもらうのは、かくも難しい!

(1)友達から感想をもらう場合

友達からホンネの感想をもらおうと考えた場合、いちばん難しいのは、友達の側に下記のようなプレッシャーがあること。
「(あなたが)頑張って書いた作品にあんまりヒドいことを言うのは、気まずい」
「思った通りをそのまま言ったら、(あなたに)怒られそうだな」

この種のプレッシャーを解除してあげないと、友人知人から本音の感想をもらうのはまず不可能に近いです。

(2)匿名掲示板で感想を貰う場合

友達同士のような「気遣い」がない場なので、基本的には公の場では言えないような批判や罵倒の雨あられ。プロの作品でも普通に罵倒されるほどなので、まず褒められるコトは期待できないでしょう(笑)
ただ、こういう否定がデファクトな場であるがゆえに、大勢のレスの中にたった1つでも「面白い」という肯定的な評価があった場合、それは本音の評価だというコト。
こういう場では批判に目や耳を傾けるよりも、一言でも褒められた場合に喜ぶことを心がけましょう。
批判ばかりを受けて自己嫌悪や疑心暗鬼に陥ることで、良い部分への正当な褒め言葉まで信じられなくなったり、次の作品を書くのが怖くなったりしては、元も子もありません。

(3)ソーシャル(Twitter、Facebook、ブログ等のSNS)でレビューや感想をもらう場合

今の時代、いちばん真意を見抜きにくいのが、ソーシャル上で発せられた感想です。
まず前提として、ソーシャル上では、他者の作品を貶めるメリットがありません。たとえば、レビューした作品にリンクを張ってアフィリエイトで売るのに、その商品をボッコボコにけなしてどうするんだって話。それじゃ、売れないじゃないですか(笑)。
また、アフィリエイトがかかっていない場合でも、そう簡単に正直な感想は言えません。感想を言い合うのがお互いに「書き手同士」の場合は特に。
相手の作品を、大勢の人が見るソーシャル上でボロボロにこき下ろしたら、次に自分の作品をリリースした際、その相手から逆に何を言われるか分かったモンじゃないですから。
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「仁義なき批判合戦」が始まるリスクを考えると、どうしても他者の作品を自分から悪くは言いにくくなるものです。

第三者がくれる感想の「真意」を見抜くことが、絶好の人間観察になる。

よく、作家になろうとする人へのアドバイスで、あるじゃないですか。普段から人間に興味を持て、観察しろ、というのが。
まあ、人間観察には色々なやり方がありますけど……何もファーストフードで女子高生の会話を録音したり、人をわざと怒らせたり泣かせたりビックリさせたりして、その表情を観察したりというのだけが「人間観察」ではありません。
ちなみに、前者は某・大御所クラスの脚本家が、若い女の子の言葉遣いを知るため実際にやったとか。後者は俳優の勝新太郎氏が本物の芝居を追究するべく、付き人や若い衆相手に実践していたと言われています。
ただし、あなたに相手の本音を見抜く力がなくても、諦める必要はありません。その場合、どうしたらいいかについては後述します。
まあ、ぶっちゃけた話、友人やソーシャルで寄せられた感想の真意を徹底的に分析するだけでも、立派な人間観察になってしまいます。それはイコールで、人の言葉の裏を掴み、ウソやお世辞を見抜くトレーニングですから。
オレがこれまで見抜いてきた、感想に表れる「法則性」を少し紹介しましょう。

「すごい」は褒め言葉ではない

特にエンターテインメント作品の感想においては、作品を本当に良かったと思っている人の感想ほど、直感的になる傾向があります。「面白かった!」「好きだなぁ! こういうの!」「良かったよ!」など。
その中で、1つだけニュアンスが異なるのが「すごい!」「スゴかった!」なんです。
なぜなら、すごい! という言葉は、相手に肯定的に伝わりやすい性質を持ちながら、その実、言外に色々な意味を込められる「便利な言葉」だから。
・(面白くも何ともないけど、よく頑張ったね。その努力は認めるよ)すごい!
・(自分の好みとは違うけど、客観的に見て)すごい!
・(意味わかんねえけど、とりあえず感嘆符出しておこう)すげえ!

いきなり部分肯定から入る人は、必ず他で不満を抱えている

小説なら感想の冒頭でいきなり「セリフが良かった」とか。マンガなら「コマ割りがいい」とか。まあ、これは特に訓練されてなくても気づく人は気づくでしょう。
要するに、他の部分に不満があるんです。

あれこれ文句が多い人は、意外と認めたがっている

不満の出方にも、微妙なニュアンスがあります。
まあ、一言で「つまんね」だったら、それは言葉のとおりでしょう。要するに、作品に対して何か言う労力すら惜しいというコトですから、諦めるしかありません。
けれど、少し考えなくてはいけないのは、不満を列挙した感想。
やれ「あの場面のあのセリフはおかしい」、「あそこであの展開はないだろう」、「矛盾がある」といった不満がたくさん書かれている感想は、実のところ、お客様のニーズが反映されたモノである可能性がすごく高いです。
要するに、マーケティングの世界で言うところの「良いクレーム」。
こういう不満を羅列系の感想は、経験上、感想をくれる人の心中で「合格点ぎりぎりだけど不合格!」だった場合に出やすいようです。ツッコまれまくったからといってめげるのではなく、むしろ良いアドバイスをもらったと考える方が良いでしょう。

ソーシャルで本音を見抜くには、発言の履歴まで追う必要がある

たとえばTwitterで面白い!と言われたなら、その人が過去、どんな作品にどんな言葉をかけてきたかを追跡しないと、本音にはたどり着けないでしょう。
単に仲良くなって、あとで自分の作品も(お返しで)褒めて貰いたいという下心から「のべつくまなしにコナをかけている」場合もあります。あるいは(特に作者のあなたが若い女性である場合)、作品を褒めることでお近づきになりたいと思っているだけ、とか。
まあ、疑うとキリがないですけどね。

ちなみに、編集者やプロデューサーといった、常日頃からクリエイターを相手にする人たちは、こうした暗黙知を逆に利用して、クリエイターを上手に飼い慣らします(笑)。
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ぜったい最高と思ってねえだろオマエ! みたいな(笑)。

相手の心を探るだけが道じゃない。

上だけだと、極めて懐疑的に人を見なくちゃいけないのか……みたいな憂鬱な話なんですけど、実際はそうでもありません。
人の言葉や顔色を熱心に探らなくたって、少なくともリアルの友達や知り合いからであれば、簡単に本音の感想を引き出す方法があります。
それは……
1に、ちゃんと頼むこと。「厳しくなってもいいから、本音の感想をくれ」と。
2に、「何を言われても怒らない」「つまんなかったら最初の1ページで突っ返してくれてもいい」と約束し、それを忠実に守ること。

要は、なんでも言ってもらえるような信頼関係を作り上げましょうってコト!
友達や知り合いは、あなたが(作品について)何を言われても怒らない、受け止めてくれる人だとわかれば、あなたにどんどん本音の感想をぶつけてくれるんです。
ちなみに、コレは自分でやってきた方式。
オレは基本的に人様の顔色を読むとか上手くできないし、何より面倒くさいんで、いちいち相手の真意を探るより、こうした「本音モード」を築く方が早かった(笑)……という感じです。

本音を知るためには、建前を知らなくちゃ……な!

ポイントが一目でわかる。お手本にしたい実れいがいっぱい。話題の本も満載!読みたい本がすぐに見つかるブックガイドつき。

けっこう冗談抜きで、1回はこういうの読んだ方がいいと思って昔買った1冊。
過去にシナリオを教えていた頃、人様の本音を探るという理由よりもむしろ、教える際に受講生作品のドコを褒めれば受講生がやる気になり、結果として受講料を払い続けてくれるだろうか……という、極めて邪悪な意図の元に購入したんですけど(笑)。
コレが意外や意外。作品の読み解き方とか、ちゃんと書いてあるんです。
騙されてみようと思った人は、どうぞ。

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)
1974.10.12.うまれ。
東京都台東区の山谷地区出身。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、専門学校や声優養成所の事務員として働きながら漫画原作者に師事し、シナリオライターに。コンビニ向けのペーパーバック漫画やゲームのシナリオライターとして活動する。現在は通常のライター業も請けつつ、KDPでオリジナル作品を発表中。他に、自分と同じKDP作家を支援する活動も行なっています。
→『きんぷれ!』(http://kin-pre.com
Kindle本「DISTANCE (がんばれ!アクターズ戯曲シリーズ)」好評発売中

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