【書評】『1日外出録ハンチョウ』

1日外出録ハンチョウ(1)

福本伸行 (著), 萩原天晴 (著), 上原求 (著), 新井和也 (著)
価格:540円

地の獄…! 底の底…! 帝愛地下労働施設…! 劣悪な環境である地下にいながら「1日外出券」を使い、地上で贅の限りを尽くす男がいた…! その名は大槻…! E班・班長にして、1日を楽しみ尽くす匠…! 飲んで食って大満喫…! のたり楽しむ大槻を描く、飯テロ・スピンオフ第1巻‥!

*今回、書紹介のため本文内画像を複数引用しております。引用といえる範囲内での画像書籍画像を本文内に掲載しておりますが、著作権者の方から申し立て頂き次第すぐに削除等の対応をさせていただきます。

トネガワに続け…! 『カイジ』飯テロ・スピンオフ第1巻

さてもさてもとお立会い。きんどう読者のハンハンス@hanhans7thと申します。今回ご紹介するのは『1日外出録ハンチョウ』の1巻でござい。

この作品は福本伸行『カイジ』シリーズのスピンオフ『中間管理録トネガワ』に続く第2弾の飯テロマンガ。『賭博破戒録カイジ』における最初の舞台、帝愛グループの地下強制労働施設でのチンチロ賭博の胴元で、カイジに敗北するE組班長大槻の、1日だけ外に出られる権利を行使した日の話にスポットを当てた漫画となっております。

それだけだと面白いの? ですがそうそれなんですよ、面白いんですよ。

いろんな漫画家さんにはそれぞれ武器となるものがあります。話の上手さ、絵の技巧の高さなどありますが、福本漫画はそのひりつくシリアスの緊張感と演出。そこだからこそ生まれる名言。そして印象に残る絵柄が持ち味です。そのガワを頂戴し、班長大槻が地下施設から1日だけ外出する様を描くのが『1日外出録ハンチョウ』なのです。それが如何に面白いか、というのを書いていきましょう。

どこが面白いか、というともう、とにかく福本漫画エミュレートという段階で既に面白い。これは同時に福本漫画を知らないと面白さがいまいちピンとこないということですが、漫画好きで福本伸行漫画を読んでないのは漫画好きとしてはモグリなので、鋭意読む漫画として取り組んでいただきたい。

それはさておき、福本漫画エミュレートは同人にはいろいろと例がありますが、至近では、『中間管理録トネガワ』がそれです。これがかなり世間に受けている。それだけ福本漫画のリーチが広いということですが、それもさておき、実際、『中間管理録トネガワ』において、敵役だった利根川がただかつ丼を大盛り食うだけとかそういうので既に面白い

あの利根川が、「金は命より重い・・・・!」とか言っていた利根川が、かつ丼で四苦八苦している! という凄絶なレベルのギャップが面白いのです。

つまり、凄まじいエネルギーでシリアスの演出していた漫画が、突如サラリーマンの日常系漫画になったらそりゃ笑うわ! というギャップが強いのが、福本漫画エミュレートの強みなのです。

単なる飯テロ漫画のなんでもない日常とはまた違った世知辛さがある

 『1日外出録ハンチョウ』もまた、その線では同じタイプ。しかしこちらは外に出て、飯食って、帰る。という所謂飯テロに属する漫画です。もう、その段階で面白いのが分かろうものです。

そこに加えて、地下施設のシノギの抗争とか、搾取の構造とか、あるいは君の名は。とか、そういうのを節操無く混ぜ込まれているのです。単なる飯テロ漫画のなんでもない日常とはまた違った世知辛い側面が見て取れるのです。飯物は色々あったけどご飯が食べれて満足、で締まりますが、この漫画はそのご飯で相手を篭絡しようとかするので侮れません。何をしでかすのか、という雰囲気が常にあります。そこもまた福本漫画エミュレートだからこそでる味わいでしょう。

とはいえ、この漫画は福本漫画エミュレートという利点と欠点を内包しています。なにが欠点かと言うと、飯の方が美味そうに見えるかというと言うほどでもない、ということです。

最低限は、ですが絵で美味そう、ではない。しかし、ここは絵柄で飯美味そうとするのではないのが、流石の福本漫画エミュレート。利点で欠点を帳消しにします。

大槻が美味そうに食う、あるいはそれが美味いということをナレーションベースで解決する。あるいはうやむやにする。そういうテクで飯が美味かったということにしてしまいます。この点だけでも、このエミュレートのレベルが高いことが推してしれようものです。

この漫画の仕上がりを見るのに一番適しているのは、当然のように第1話目『玉座』。大槻の1日外出のエッセンスがほぼ全て内蔵された巧みな一話です。

解放後にだらだらしてから、あと数時間、というところで娑婆最後の飯の前にスーツを買う大槻。地下に戻れば意味をなさない買い物であるがゆえに、脱走しないようにこれを見守る帝愛グループの黒服達も色めき立ちます。

最初は黒服もそれがドレスコードのある店に行くからだ、とみなしますが、しかし大槻の行ったのはそこらのサラリーマンの行く蕎麦店。これに再度黒服達は色めき立ちます。何故、スーツを買ったのか? 題名にある『玉座』の意味とは?

その謎の答えは中々にふるっておりますが、これ以上はネタバレですので、控えさせていただきますが、飯テロとはこうやるものなのだよ、と言うわんばかりな大槻の1日外出における一点突破の楽しみ方が分かる内容でした、とは書いておきます。

ということで『1日外出録ハンチョウ』のご紹介でした。いかがだったでしょうか。福本漫画エミュレートと聞いてピン、とくれば大変満足出来る読書体験が得られると思います。気になったら買っちゃいな!それでは。

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