実際にあった事件のその後を知ってほしい『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』上・下(10/8 新刊)

こんばんは、きんどうです。2004年に実際に起きた女子児童による女子児童殺害事件を基にした家族再生ドラマを描いた新刊「ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―」上下巻の紹介をコミカライズ担当・棚園正一先生から頂きましたのでご紹介します。

棚園先生は幼少時代に不登校を経験し、それらを克服した自身の経験を題材にした『学校へ行けない僕と9人の先生』など【心のケア】がテーマの作品で活躍をされていますね。

マンガの題材としては非常に重いのですが、突然理不尽に家族を喪ってどうしたらいいかわからないような、届くべき方のところに本作が届けば何よりです。あとは棚園先生が述べられてますが「本当のことを誰にも打ち明けられない」と悩んでる方へも。

それでは、以下頂いた作品案内をシェアします。(/きんどうここまで)

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はじめまして。漫画家の棚園正一と申します。

今回ご紹介させていただくのは、コミックバンチKaiで連載してきた『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』という漫画です。

原作は、川名壮志さんのノンフィクション『僕とぼく―佐世保事件で妹を奪われた兄と弟―』です。この原作が生まれた背景には、何よりも事件のあとを生きてこられた御手洗さんご家族の時間があり、そして当時、そのご家族のそばにいた川名さん自身の経験があります。

その原作があったからこそ、この漫画を描くことができました。
本作の主人公は、御手洗さんご家族の次男で、事件で妹を亡くしたお兄さんです。

漫画の中では、この次男のお兄さんを「純一」という仮名で描いています。
一方、妹の怜美さん(さっちゃん)やお父さんは実名で登場します。漫画の中で、純一と怜美はとても仲のいい兄妹です。

そして事件の少し前、怜美は兄にだけ、ある「ひみつ」を打ち明けていました。妹がいなくなったあと、その「ひみつ」は純一の心に残り続けます。

もっと話を聞いていれば。
あのとき何かしていれば。
自分にできることがあったのではないか。

けれど、同じように傷ついている父親や周囲の人たちを前に、純一は自分の気持ちをなかなか口にすることができません。

心配をかけたくない。これ以上、家族を苦しませたくない。

そうやって本当の気持ちをしまい込むうちに、いつしか自分自身にも、自分が何を感じているのかわからなくなっていきます。『ひみつ』は、そんな純一と家族が、事件のあとをどう生きてきたのかを描いた物語です。

原作を読んで惹かれたのは、「事件のその後」でした

「佐世保事件を題材にした漫画」と聞くと、

なぜ事件が起きたのか。
加害者はどんな人物だったのか。
そうした内容を想像される方もいるかもしれません。

でも、川名さんの原作に書かれていたのは、それだけではありませんでした。事件のあと、残された家族がどんな時間を過ごしてきたのか。とりわけ、次男のお兄さんの姿には、自分自身と重なる部分をいくつか感じました。

ある日突然、家族の一人がいなくなる。それでも、残された人たちの人生は、その先も何年、何十年と続いていきます。以前の生活に戻ろうとしたり、家族を気遣ったり、本当の気持ちを言えなかったり。

学校へ行けなくなる時期もあります。けれど、それも次男のお兄さんが歩いてきた長い時間の一部です。

特に印象深かったのは、大きな喪失を抱えた一人の少年と家族が、その後も日々を生きていく姿でした。

原作から受け取ったその時間を、漫画という形でどう描くことができるだろう。

そこから制作が始まりました。

原作から受け取ったものを、漫画として自分にも、小学校1年生から中学校3年生まで、学校へ行けない時期がありました。漫画の中の純一を描いていると、自分自身の記憶と重なる瞬間もありました。

周りに心配をかけたくないこと。
本当のことを言葉にできないこと。
自分でも自分の気持ちがわからなくなっていくこと。

そうした感覚には、自分の経験から想像できる部分もありました。ただ、自分には学校へ行けなかった経験はあっても、大切な妹を事件で突然亡くした経験はありません。だからこそ、原作に書かれた言葉や事実を大切にしながら、想像で補いすぎないことを意識しました。

原作から受け取った空気をなるべく損なわないようにしながら、漫画としてどう描けば自然に伝わるのか。

表情や間、風景の描き方も含めて、制作の中で何度も考えました。原作から受け取ったものが、漫画として読んだときにもきちんと残ること。そのうえで、漫画にしたからこそ見えてくるものも感じていただけたら嬉しいです。

原作に書かれた場所を、自分の目でも確かめるために

作品を漫画にするにあたり、実際に佐世保へ取材にも行きました。

佐世保駅から街を歩き、兄妹がよく訪れた場所や、家族が暮らしていた周辺、学校などを巡りました。原作の中に書かれている家族の日常を、自分の中でもう少し具体的に捉えたうえで描きたいと思ったからです。そこで強く感じたのは、

ここは「事件が起きた街」である前に、
兄妹が普通に暮らしていた街だった、
という当たり前のことでした。
事件が起きる前にも、一つの家族の暮らしがありました。

だから漫画の中でも、怜美さんを「事件の被害者」としてだけ描くのではなく、お兄ちゃんと話し、笑い、ときには困らせる。そんな一人の妹として、兄妹の日常が自然に伝わるように描きました。それもまた、川名さんの原作から受け取ったものの一つです。

重い題材ですが、悲しみだけの物語ではありません

もちろん、軽い内容の漫画ではありません。読む方によっては、つらく感じる場面もあると思います。

でも、原作を読み、漫画として描いていく中で感じたのは、これは「悲しい事件の話」だけではない、ということでした。

純一も家族も、事件のあとも生きていきます。その中で純一は何を考え、家族はどんな時間を過ごしていったのか。

『ひみつ』は、大きな出来事によって突然変わってしまった世界の中で、一人の少年と家族がその後を生きていく物語です。

大切な人を失った経験がある方だけに向けた作品ではありません。本当の気持ちをうまく言えなかったことや、身近な人の気持ちがわからず戸惑ったことがある方にも、どこか重なるものがあるかもしれません。

そして何より、突然変わってしまった世界の中で、一人の少年がこの先どう生きていくのか。一つの人間ドラマとして読んでいただけたら嬉しいです。

『ひみつ―佐世保事件で妹を喪ったぼくの話―』は、2026年10月8日、新潮社より上下巻同時発売です。

Kindle版も同日配信されます。コミックバンチKaiでは試し読みもできます。


純一と家族が、この先どんな時間を生きていくのか。その続きを見届けたいと思っていただけたら、上下巻を手に取っていただけると嬉しいです。

御手洗さんご家族が実際に過ごしてきた時間があり、そのそばにいた川名さんが書いた原作があり、その原作を受け取って、この漫画を描きました。必要としている方に、この作品が届いてくれたら嬉しいです。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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