読書の面白さを伝えたい!書店員・山田のフェイバリットな8冊

1612023
はじめまして。ジャケットのポケットにいつも文庫本を詰めている山田摩耶と申します。この度、きんどうさんにて、紹介の機会をいただきました。よろしくお願いいたします。

私の読書傾向は純文学にミステリ、SFやファンタジー、ライトノベルなど、小説であれば何でもござれという次第です。ばらつきはありますが、大体月に15冊ほど読んでおります。

今回は初回ということもあり自己紹介がてら、よく読むジャンル(ミステリ、SF、恋愛小説、ライトノベル)から2冊ずつ紹介させていただきます。何を読めばいいの? という方向けに、ここが面白いという点をピックアップさせていただきました。

書店員がオススメする注目本

どうやったの? どうしてやったの? 視点によってころころ変化する謎の印象が面白い!

ノッキンオン・ロックドドア

青崎有吾 (著)
価格:1,382円 20%OFF+20%ポイント還元
★★★*☆ 7件のレビュー

密室、容疑者全員アリバイ持ち、衆人環視の毒殺など「不可能(HOW)」を推理する御殿場倒理と、理解できないダイイングメッセージ、現場に残された不自然なもの、被害者の服がないなど「不可解(WHY)」を推理する片無氷雨。 相棒だけどライバル(!?)な探偵ふたりが、数々の奇妙な事件に挑む! 新時代の本格ミステリー作家が贈る、ダブル探偵物語。

不可能犯罪担当の御殿場倒理と不可解犯罪担当の片無氷雨、2人の探偵が協力していく連絡短編集です。2人で1人前の探偵たちは担当分野から謎を見つめ、解き明かしていきます。

同じ事件でありながら探偵が交代することで、謎の印象がころころと変わるのが本作の魅力です。どうやったのか(ハウダニット)、どうしてやったのか(ホワイダニット)。視点を変えることで、新たな謎が浮かび上がったり、難解な事件がするりとほどけたりと、2つの切り口による移り変わりが楽しく、真相には心地よく驚いてしまった作品でした。

2人の掛け合いも軽くコミカルですし、連作短編集なので、サクッと読めます。ぜひお手に取ってみてください。

徐々に規模を大きくする緊張感と、真相によって大きく変わる登場人物、町の印象が面白い!

災厄の町〔新訳版〕

エラリイ クイーン (著), 越前 敏弥 (翻訳)
価格:1,166円 10%OFF+21%ポイント還元
★★★★☆ 9件のレビュー

「ある時われわれは、これまで書いた中で最高と自負する作品を書きました。『災厄の町』という題名の本です」 著者エラリイ・クイーン(F・ダネイ)自らがこう公言する本書は、アメリカのクイーン・ファンが選んだ長篇ランキングでも第1位を占めている、文字通り「自他ともに認める」最高傑作です。日本でも高い評価と人気を誇り、1979年には映画化までされました(映画化名「配達されない三通の手紙」)。37年ぶりの新訳で、この名作をお楽しみいただきたい。

アメリカの田舎町、ライツヴィル。軍事特需に沸くその町にやってきたエラリイ・クイーンはライト家が所有する屋敷を借りました。そこにライト家の次女ノーラとの婚約後、失踪していたジムが戻ってきます。そしてノーラとジムは結婚式を挙げました。ジムの失踪に疑問を持ったエラリイはジムの筆跡による手紙を見つけます。それは妻殺しの予告ともとれる内容で、そして手紙通りに事件は起きていくのでした。

本作の魅力は徐々に大きくなる緊張感と、真相により人々や町の印象が反転することです。警戒するエラリイの目を搔い潜り、事件は次々と起きていきます。疑いの目はジムに向けられ、ライツヴィルの人々は怒り、ライト家はノイローゼ気味になってしまいましたそして不安は頂点に達し、ジムやライト家の人々を襲っていくのです。サスペンス的な盛り上がりと、爆発する暴力に、私はハラハラと読み進めてしまいました。

そしてエラリイが至る真相はノーラとジムの本心を浮かび上がらせます。それはライト家や町の人々の印象をがらりと変えました。その変化はずしんと響き、切なく想いテーマを感じてしまいます。広がっていく不穏な空気と、真相をぜひ楽しんでいただきたい傑作です。

時間と物語、それぞれを行き来する幻想的な文章とシチュエーションが面白い!

カムパネルラ

山田 正紀 (著)
価格:1,700円 22%ポイント還元

十六歳のぼくを置いて、母は逝った。研究者だった母は、現政権の思想教育の要となっている宮沢賢治作品――とりわけ『銀河鉄道の夜』を熱心に研究し、政府が否定する「第四次改稿版」の存在を主張していた(……)いまなら彼の死を阻止できるかも知れない――その一念で辿り着いた賢治の家でぼくを迎えたのは、早逝したはずの宮沢トシと、彼女の娘「さそり」だった……。永遠に改稿され続ける小説、花巻を闊歩する賢治作品の登場人物――時間と物語の枠を超えた傑作長編SF!

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』第三次改稿版を推奨作品とし、愛国心を育むために教育に使っている政府。作品の扱いに反発していた母は生前、政府が否定する第四次改稿版の存在を主張していました。そんな母の遺言を果たすため、主人公、“僕”は宮沢賢治の故郷、花巻へ母の散骨に向かいます。電車に乗っていると、外は突然土砂降りとなり、宮沢賢治の亡くなる2日前、昭和8年9月21日に辿り着くのでした。

本作は『銀河鉄道の夜』が何度も改稿され、未完の作品であるという話から作られています。その着眼点には驚き、期待しながら読み進めてしまいました。

また本作の魅力は時間や物語を飛び越える幻想的な情景と、ラストに表れる風景です。

管理社会的な政府と、反発する人々の対立に “僕”も巻き込まれていきます。抗争の中で彼は場所や時間を移動していきました。そして“僕”は母親の思い、政府の考えに触れ、疑問を1つ1つ解していくのです。

ラスト“僕”は母親の主張でもなく、政府の制度とも違う、本当の『銀河鉄道の夜』を思い描きます。そして彼が美しく、心地よい行動を起こすのでした。時間と物語の冒険譚と彼が至る結論とぜひ楽しんでみてください。

目に見えない死と隣り合わせの日常と捜索。不安定に揺れながらも輝く人々が面白い!

渚にて 人類最後の日

ネヴィル シュート (著), 佐藤 龍雄 (翻訳)
価格:864円 20%OFF+20%ポイント還元
★★★★* 25件のレビュー

第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった(……)合衆国のシアトルから途切れ途切れのモールス信号が届くのだ。生存者がいるのだろうか? 最後の望みを託され、〈スコーピオン〉は出航する……。読者に感動をもって迫る永遠の名作。

第三次世界大戦が勃発し、核兵器の放射能によって北半球の諸国が死滅した世界。生き残った人々はオーストラリアに避難し、生活していました。しかし放射能は消えることなく、南下しているというニュースが届きます。そんな中、アメリカから断片的なモールス信号が送られてきました。放射能の中でも生き残ることが可能なのか、生存者はいるのかと一縷の望みをかけて、捜索に繰り出すのです。

本作は避難した人々の生活と生存者の捜索の2つのストーリーが描かれた作品です。放射能という目に見えない恐怖が隣り合わせの生活、放射能に対抗する術を探す望みをかけた冒険譚。2つが絡み合い、寄り添いながら描かれていくのが本作の魅力です。特に死と隣り合わせの生活風景は冷たく残酷で、あまりにも美しいです。気丈に振る舞う人々もふとした瞬間、不安に襲われ自暴自棄になります。そんな不安定さがより彼らの生を強調し、輝かしく描かれていました。

2つのストーリーが絡み合う、生と死が同居する日常に胸を焦がしてみてください。

クリエイターたちのプライド、小さな謎、そして秘められた不器用な想いが面白い!

スロウハイツの神様(上)

辻村深月 (著)
価格:594円 40%ポイント還元
★★★★☆ 32件のレビュー

ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった(……)しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める…。

現代版の“トキワ荘”を作ろうと、期待の脚本家、赤羽環は自身のペンションにクリエイターを集めました。人気作家のチヨダコーキからまだ芽が出ない漫画家志望まで、お互いに刺激を与え合いながら共同生活を行っています。そんな中、空室であった201号室に、新たな住人がやってきてから、静かに、ゆっくりと平穏な日常は変わっていくのです。

本作は現代版の“トキワ荘“、スロウハイツを中心に、住民たちを描いた群像劇です。それぞれクリエイターであるからこそ抱く矜持やプライド、トラウマなどが描かれます。1人1人のエピソードが心に刺さる魅力的な短編集です。
中でも一番の売れっ子であるチヨダコーキのそれは大きな謎を孕み、各人のエピソードに関わってきます。かつて彼の作品をきっかけに大人数の殺人事件が起きました。バッシングを受け、作品を書けなくなった彼を立ち直らせたのは匿名の手紙です。事件から10年経った今、その匿名の少女は誰だったのかが解き明かされていくのでした。

クリエイターたちの矜持が色濃く表れたエピソード、そしてラストに向けてすべてが繋がる心地よさ、浮かび上がる不器用な想いには心が震えてしまいます。読後、1ページ1ページが愛おしくなる作品でした。ぜひお手に取ってみてください。

安くちゃちな人生が輝き始める選択の切なさと儚い幸福が面白い!

三日間の幸福

三秋 縋 (著)
価格:570円
★★★★* 62件のレビュー

どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。 未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る(……)俺の寿命は二か月を切っていた。 ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。 (原題:『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』)

主人公、クスノキは残りの人生のことを知ろうと寿命を査定に出します。その結果は1年、1万円というあまりにも安い金額。人生に絶望し、自暴自棄になった彼は寿命の大半を売り払い、余生を幸福に過ごそうとします。しかしやることなすこと、裏目に出てしまうのです。

本作は自身の境遇に不満を持ち、未来も救われないことが約束されたクスノキの話です。失敗を繰り返し、今後の人生も査定によって否定されました。唯一の拠り所であった、かつての約束も自身のせいで壊れます。どこまで行っても、何をしても絶望しかないクスノキは次第にやさぐれていきました。

そんな中、監査役のミヤギだけは自身を見捨てないことに気付きます。それが役目であっても良いと言う彼は彼女のために生き始めるのです。一方、ミヤギも献身的なクスノキに心を開いていきました。破滅しかないクスノキとミヤギはラスト、彼ららしい幸福を選びます。その儚いからこそ輝く3日間はあまりにも美しく、涙が止まりませんでした。

破滅的で深い絶望に陥っていくクスノキと、冷たい眼差しで見つめ続けるミヤギ。終わりがあるからこそ輝く2人の幸福をぜひその目でお確かめください。

消失を抱えた2人がお互いを知り、手を取り合っていくのが面白い!

さよならピアノソナタ

杉井 光 (著), 植田 亮 (イラスト)
価格:610円 35%ポイント還元
★★★★☆ 37件のレビュー

「六月になったら、わたしは消えるから」転校生にしてピアノの天才・真冬は言い放った。彼女は人を寄せ付けずピアノも弾かず、空き教室にこもってエレキギターの超速弾きばかりするようになる。そんな真冬に憤慨する男子が一人(……)ナオと真冬の関係は接近していくが、真冬には隠された秘密があって――。恋と革命と音楽が織りなすボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。

主人公、桧川ナオは音楽が好きな無気力高校生。ロックバンドからの勧誘を躱し、誰も使っていない教室で静かに音楽を聴いている毎日を過ごしていました。そんな彼の教室に、天才ピアニスト、蝦沢真冬が転校してきます。ピアノをやめ、音楽業界から消えていた彼女はなぜかギターを持ち、桧川の秘密基地を奪いました。居心地よく改造していた部屋をなんとか取り返そうと、彼はロックバンドの協力を得て、蛯沢にギター勝負をけしかけるのです。

本作は音楽を通してお互いを知っていく桧川と蛯沢の恋愛劇です。2人の対決を通して、桧川は音楽業界から身を引いていた蛯沢の大きな傷を知ります。そして2人は過去から、未来から逃げ出していくのです。高校生には重すぎる消失と真剣さと諦観を含んだ逃走劇は切なく、胸が引きちぎらそうでした。

高校生の弱さとしたたかさを描いた本シリーズは全6巻です。2人の関係やロックバンドの行く末も描かれました。音楽と恋と消失の物語をぜひ楽しんでみてください。

失われた魔術と異常な患者や刺客たちとの熱い闘いが面白い!

魔法医師の診療記録

手代木正太郎 (著), ニリツ (イラスト)
価格:637円 20%ポイント還元 Unlimited読み放題
★★★★☆ 4件のレビュー

「吸血鬼、狼男、食人鬼などの化け物は存在しないんです!!」それらは皆、魔術で癒せる“妖病”の罹患者だと魔法医師・クリミアは言う。彼女は己のせいで“妖病”を患った幼なじみ・ヴィクターの治療法を求め、共に旅を続けていた(……)教会と魔術医師の対立、異端尋問官との戦い。そして、吸血鬼の治療。ここに“妖病”へと立ち向かう二人の診療記録が記され始めた。魔法医学の最先端がいまここに!!

かつて医術と魔術は同一の存在でした。前者は教会によって体系化され、後者は異端として失われてしまいます。しかし魔術でしか治せない奇病、妖病は残り続けていました。身体能力が向上し、人あらざる能力に目覚める病気は隠され、患者は化け物として排除されています。

主人公、クリミアは失われた魔術を駆使し患者を治療しながら、旅を続けていました。妖病の友人ヴィクターを救うため、すべての病気を治すという魔石を探し求めて。

本作は異端とされている魔術を駆使するクリミアが患者や刺客と戦いながら魔石を探す旅物語です。熱いバトルもさることながら、本作の魅力は患者や刺客の個性的な能力です。

妖病に罹患すると、特殊な力に目覚めます。身体能力が向上したり、魔力に目覚めたりと化け物のような様相を成すのです。この能力は無意識で道具を投げつけたり、患部が変形しクリミアの首を絞めたりと多種多様です。またクリミアたちを追う刺客たちも個性的です。彼らは改造人間で、どこまでも伸びる舌を持つ者、フェロモンを操り、男女問わず嬲り殺す者などなど。ぶっ飛んでいる敵は凶悪で、戦術を組み立て挑む戦いは熱く、面白いです。

正義感の強く些細なことも見逃せないクリミアと、面倒くさがりで患者を殺して済まそうとするヴィクターとの掛け合いはコミカルです。2人の旅をいつまでも眺めていたい気分にさせる作品をぜひ楽しんでみてください。

おわりに

というわけで、8作を紹介させていただきました。本記事をきっかけに、幸せな読書時間を過ごしていただけましたら幸いです。また今後は新刊から既刊まで、読んだ本を紹介をさていただければと思っております。

今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人:山田摩耶

某チェーン店の書店に勤務する24歳。面白そうな本が来ると、レジ打ちの間にタイトルを控える日々を過ごしています。

また書店員の傍ら、ライターもしております。『このライトノベルがすごい!』(宝島社)や『本格ミステリ・ベスト10』(原書房)などの寄稿経験もあり、ホンシェルジュというサイトで本を紹介しております。随時お仕事を募集しておりますので、入用でしたら @m_y_mdまで何なりとお申し付けください。


この企画について:匿名書店員さんによるキュレーションをやろう

キッカケはこちらの記事『電子書籍をリアル書店への拡販と書店員の副業に活用する新メディアプロジェクトの協力者を募集します』で、電子書籍からリアル書店への誘導。もしくは書店員さんの副業として活用できないかなと。
現在、4名の書店員さんからお申し出をいただき、しばらくきんどうで記事掲載後新たなメディアを立ち上げる予定です。
思うにね、本のプロである書店員さんの専門知識はネットでもっと読みたいし、それはお金になる分野なんですよ。むしろ、わたしは参考にしたいからもっと出てきてほしい。
まだ、書店員さん(匿名)だけですがイベント案内やうちの気合のはいった本棚を見てくれ!なんて形でリアル書店さんとも組んで一緒にやっていきたいと考えてます。電子書籍に読者が流れるだけでなく、リアル書店・書店員も盛り上がるようなメディアを作っていきたいので興味のある方はぜひ、お問合わせからご連絡ください。ちゃんと売上に応じてお金もお支払します。

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