11月。祝日は何度かありますが、ライトノベル内の学校・学園におけるラブコメ的イベント行事が少ない印象がある月ですね。こんにちは、某マンガ専門店でライトノベル・文芸を担当しております大和（ 4styles）です。

今回2度目として「10月の新刊まとめ」という機会をいただきまして、私的テーマとして「こんなカタチの恋愛もあるよね」という切り口で紹介します。

オススメの作品を洗い出してみると意外と作品数があり、それなら何か絞れるような共通点のあるようなものでまとめてみようと思いこのテーマを思いつきました。あなたにとって「あるある」か「ないない」か是非ご一読をよろしくお願いします。

『こんなカタチの恋愛もあるよね』10月発売されたラノベ

超能力者と魔女と超能力者の三角形？『さよならサイキック』

もし超能力者を持つ少年が、魔女の少女のことを好きなったら、その少年は「魔女の少女」が好きなのでしょうか。それとも「少女」自身を好きなったのでしょうか。もし超能力者の少女が、別の超能力者の少年を好きなったとしたら、超能力者同士だから好きになったのでしょうか？ そうでなくても好きになったのでしょうか。

物語は超能力者をもつ主人公の獅堂 ログに、恋人がいる状態からはじまります。

その恋人 星降ロンドは由緒正しい血統をもつ魔女の少女なのですが、主人公は知らずに彼女と恋に落ちます。出会いの仕方はピーターパンとウェンディのようなロマンチックなものです。そして彼女のことを好きになり、話を聞いてみれば星降ロンドは実は魔女であったからさあ大変、そこには一筋縄ではいかない問題があるのです。

ログは星降ロンドとの出会いより少し後、物語冒頭では、クラス一の美人（スタイル良しで美形でも性格は……）な少女 木佐谷樹 軍乃と出会います。こちらはロマンチックとは縁遠く、無茶や命の危険やらパンツを見せる見せないやら、実にドタバタな出会い方をします。

軍乃ですが、主人公に比肩する強力な超能力者。出合い頭で互いに超能力者であると認知します。軍乃の性格はドSでひねくれ者、正直者のログとは考え方も行き方も対立してしまいます。でも両者の間で、超能力者だからこその話せること、価値観、悩みが存在し、それらをキッカケに次第に交友を深めていくのですが……。

特別な力を持って生まれ、ある程度成長したのちの少年少女たちが織りなす、青春サマーストーリーとなっています。青春だな、甘酸っぱいなと微笑ましく読める作品です。

そして今作は、清野静さんの約7年ぶりの新作。清野さんの文章は、言葉のチョイスに清涼感があり、内容はもちろんのこと、文章自体にも魅力があり、とても大好きです。

最近、清野さんデビュー作である「 時載りリンネ！」の合本版が配信されましたので、こちらもオススメです。元気な女の子の冒険活劇です。

『私が彼女を好きなのと同じくらい彼女が私を好きでいてくれていることは、判っていたのに』（作中より）

「私」と「彼女」が誰なのかは読んでみてからのお楽しみにしていただければと思いますが、「私」と「彼女」はどちらも女性であり、そのふたりのどちらかは主人公であるということはお伝えしたいところです。

親が過保護すぎる純粋な真淳と、親にネグレクトされる大人びた照乃。正反対の環境で育ったふたりは、幼少の頃に同じ団地内で出逢うことから話は始まります。ふたりの少女は何度も会い、大人たちには言えない秘密の遊びをして過ごします。しかしその幸せな時間はいつまでも続かず、大人たちによって少女たちは引き裂かれてしまいます。

物語の進行ともに、ふたりは物理的・精神的なすれ違いを繰り返します。多くのひとたちと出会い、言葉を交わすことで成長していく二人、果たしてどんな結末が待ち受けているのでしょうか。

この作品に登場する少女たちはそれぞれ環境、境遇、嗜好などで、辛く厳しい状況にいます。いっときの救いはありますが、根本的な問題が改善されることはなかなかありません。

ですので読んでいる途中は、辛かったり悲しかったりしますが、なんとか最後まで辿り着いてください。そこには希望が存在します。挫けずにここまで彼女たちについて来てよかった。最後まで読んでよかったと思える作品です。

2013年にYuri‐Hime Novel（百合作品レーベル）にて発売された作品の文庫化及び初の初電子書籍配信です。また、こちらの作品を読んで宮木あや子さんに興味を持った方は、『 官能と少女』もオススメです。タイトル通り官能あふれる少女たちの背徳的な短編集です。

偽恋（オタク）とか関係なく甘々（ラブラブ）なんですが『キミもまた、偽恋（オタク）だとしても。』

主人公の高校生 村上 政樹はクラスの美人学級委員の長島 薫子に、家族への建て前のための偽装彼氏になって欲しいと頼まれます。政樹は薫子への下心で、薫子のためにその頼みを引き受けます。しかし話は意外な方に展開し、家族公認の婚約者同士になってしまうのです。

中学生の頃からオタク趣味の政樹ですが、薫子の祖父はオタク嫌いのような様子があり、学校や薫子の前ではその趣味を隠すことにします。薫子はBLが好きな腐女子ですが、それを知ったときの周囲の反応が恐ろしく、政樹や友人にはそのことを隠しています。

そうして、オタクであることを隠しつつ仕方なく偽の恋人を演じることという、二重の嘘のもとで生活する二人ですが……全然偽物なんかじゃない！政樹は元から薫子に好意を抱いてるため胸がときめいていますし、薫子もまんざらでもないため、偽装恋人の建て前で行う恋人っぽいことにお互いドキドキ。もはやただの初なラブラブカップルです。

この作品は、甘々な雰囲気のふたりの初々しい不器用な恋愛模様が魅力です。10月に下巻が発売しており、ナンバリング巻とは違いまとめ読みをオススメしたい作品です。是非上下巻でお楽しみください。

あなたの理想のヒロイン、私に教えて？『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』3巻

まずは内容説明としてタイトルをお読みください。

さて、ただ「非オタの彼女」のヒロインが「エロゲに興味津々」なだけではありません！　エロゲが好きな主人公のために、主人公の好きなエロゲを一緒に遊んでくれて、それを参考に実際にコスプレやあんなことやそんなことをしてくれる。一般的にいう尽くす彼女とは何か違うような、合法的な（エロゲの）プレイ共有なわけです！

好きな主人公の好みに合わせるために恥じらいながらエロゲを参考にするヒロインと、実際に目の前で行われるエッチなことに免疫がない男子高校生のドギマギなラブコメ作品になっています。

エロゲの展開って、実際にやる方もやられる方も冷静に考えるとおかしくない？日常でこんなことなくない？と思うようなことが多いですよね。それを踏まえた上で、あえてやる・やられる面白さが作品の魅力です。

好きな子を守るために、その子を殺せ！『エクスタス・オンライン』

とある事故をきっかけに、主人公の堂巡 駆流とそのクラスメイトたちはVRMMOの世界に意識だけ閉じ込められてしまいます。なぜか駆流はゲーム内最強の魔王になっており、クラスメイトたちは冒険者として駆流を討伐する側としてゲームがスタートします。

ゲームは未完成であり、ゲームクリア＝魔王討伐及びエンディングになると、意識が消えてしまうという設定になっていました。魔王＝駆流は全力を持ってクラスメイトたちのクリアを阻止するのです。

SAOをはじめとして意識がVRMMOに取り残されるという流行りの設定ですが、主人公が使えスキルはエロに特化したものだけ、というのがこの作品のポイントです。

殴る蹴るといった通常攻撃は強いのですが、いざとなると主人公は憧れの女の子を含むクラスメイトに対してエロい攻撃を仕掛けます。そういうスキルしかないのだからしょうがないですよね！　なんて素敵なVRMMO生活、いいぞもっとやれ！と魔王を応援したくなる作品です。

電子書籍配信版では電子特別版として筆者書き下ろしSSがついておりますのでオススメです。

また今作品の筆者である久慈 マサムネさんの 魔装学園Ｈ×Ｈの最新刊も同時発売していますので、このエロさでは満足できないという方もう一歩二歩踏み込んだこちらの作品が合わせてオススメです。

知れず、大好きな人、守るため（五・七・五）

シリーズですので、できれば1作目の『 君と時計と嘘の塔』をこちらからどうぞ。

主人公の杵城綜士は、大好きな女の子が死んでしまう夢を見て目を覚まします。綜士にとって、誰よりも大事な存在である織原芹愛が死ぬという悪夢でした。実はそれは実際の体験。綜士は無自覚のうちにタイムリープ（意識だけ過去に戻ること）していたのです。彼は芹愛を救い、タイムリープの謎を解決することができるのでしょうか。

主人公の綜士はヒロインであるところの織原芹愛が大好きなのですが、彼女に負い目を感じており、直接話しかけたり接触することに臆病になっています。そのため序盤では登校から部活までこっそり後をつけたり、彼女をカメラで盗撮したりしています。作中冒頭の彼はストーカーそのもので、気持ち悪いと言及されてる部分もあります。

しかし読み進め、綜士の負い目の理由やそこに至る考えを理解できると、それもしょうがないかなと思えてくるので不思議です。弱い彼だからこそ、理解・共感できてしまうところが、この文章の魅力のひとつなのではないでしょうか。

最終巻、第四幕に至るころには、読者として、綜士の味方となり応援し共に苦しんでいる自分に気が付きました。なんと！いまなら発売を待たずに一気に最終巻まで駆け抜けることができます。さあ気持ち悪い綜士をあなたも応援しましょう！（気がつくと格好良くみえてきますよ）

おわりに

いかがだったでしょうか。10月に刊行・続刊が出たシリーズを一部紹介させていただきました。

恋愛の入り口やその後の成り行きカタチは色々ですよね。心理描写は小説の得意とする分野ですので、恋愛成分が取りたいなと思うときは小説を一冊、手にとっていただければと思います。願わくばその選択肢にライトノベルが入っていることを期待しています。

他にもアレやソレやと紹介したい作品があるのですが、次の続刊のタイミングではここで紹介するぞと心に決め、店頭での展開に留めておきます。店頭ではこうして言葉を尽くせない代わりに作品数をできるだけ多く見せていきたいなと思いやっています。こちらとの住み分けですね。

この記事を書いた人：大和（ @4styles）

某マンガ専門店の店員、ライトノベル・文芸は全般担当。読書の傾向はもっぱらエンターテイメント作品専門で男性女性向け・国内国外問わず、年間200冊弱くらいは読んでいる計算になるような気がします。

懐かしいライトノベル作品の合本セールに釣られて買いまくった挙句、Kindleの積み本容量が急に増えてしました。天地無用では魎呼派。

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この企画について：匿名書店員さんによるキュレーションをやろう

キッカケはこちらの記事『電子書籍をリアル書店への拡販と書店員の副業に活用する新メディアプロジェクトの協力者を募集します』で、電子書籍からリアル書店への誘導。もしくは書店員さんの副業として活用できないかなと。
現在、4名の書店員さんからお申し出をいただき、しばらくきんどうで記事掲載後新たなメディアを立ち上げる予定です。
思うにね、本のプロである書店員さんの専門知識はネットでもっと読みたいし、それはお金になる分野なんですよ。むしろ、わたしは参考にしたいからもっと出てきてほしい。
まだ、書店員さん（匿名）だけですがイベント案内やうちの気合のはいった本棚を見てくれ！なんて形でリアル書店さんとも組んで一緒にやっていきたいと考えてます。電子書籍に読者が流れるだけでなく、リアル書店・書店員も盛り上がるようなメディアを作っていきたいので興味のある方はぜひ、お問合わせからご連絡ください。ちゃんと売上に応じてお金もお支払します。