電子書籍を売るために必要な基本認識について

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こんにちは、きんどるどうでしょうです。『ブラックジャックによろしく』『海猿』など人気漫画家であり、自身でも電子出版ビジネスにチャレンジし続ける佐藤秀峰さんがFacebookで公開した「電子書籍を売るために必要な基本認識」についての私見の転載許諾を頂きましたのでご紹介。
マンガ家さんや出版関係者の目に止まればなぁなんて思いまして。漫画家という立場から見ての意見に「なるほどなぁ」と納得しつつ、他の漫画家さんで気になる事例もあるので更新終わったらわたしも私見をだしてみます。

電子書籍を売るために必要な基本認識について、私見

プロの作家さんが著作を電子書籍販売しようとした場合、陥りやすい落とし穴がいくつかある気がしています。

よく見かけるのが、紙書籍と値段をそろえてしまうケース

電子書籍はデータを所有することはできても、実際に「本」という物体を手にすることはできません。

個人的には紙の本の半額でいいのではないかと思いますが、値段を揃えてしまう作家さんは「安売りしては紙書籍を買った読者に申し訳ない」と言います。

心情的にはとても理解できるのですが、あまり合理的とは言えません。

基本的なことを言うと、紙書籍を購入する読者と電子書籍で読む読者では、ユーザー層が違います。

紙の本が欲しい読者は、値段が安かろうか電子書籍には手を出さないし、電子書籍ユーザーはよっぽどコレクションしたい本でない限り、そもそも紙の本を買いません。

紙書籍と電子書籍の両方を販売しているあるストアでは、「紙書籍の続きを電子で読める」「電子書籍の続きを紙で読める」というキャンペーンを行なったことがあるそうですが、紙と電子が連動して売れるという現象はほとんど起こらなかったそうです。

事実を言うと、紙書籍と同じ値段で電子書籍を販売しても、あまり売れません。

誰も得をしない結果が待っています。

また、「安売りしては紙書籍を買った読者に申し訳ない」というタイプの作家さんは、電子書籍ストアが展開する各種キャンペーンに参加したがらないことも多いです。半額キャンペーンや読み放題キャンペーンなど、やはり、「紙書籍を買った読者に申し訳ない」という心理が働いてしまうようで。

実経験で言うと、キャンペーンに参加するとストアのトップページに作品のバナーが掲載されたり、ストア側が積極的に広告を打ってくれるので、売り上げは2倍〜10倍くらいには跳ね上がります。(もっと跳ね上がることもありますし、逆にキャンペーンが必ず得をするというものでもないので、その性質をよく見極める必要はありますが。)

半額で読もうが無料で読もうが、紙で読もうが電子で読もうが、作品が面白ければ読者はファンになってくれるものです。ファンを増やせば将来的に収益を増やせる可能性も高まります。

僕はそうして読者を増やしてきました。

つまり、合理的に考えれば、電子書籍は安売りしてキャンペーンに積極的に参加することが、読者にとっても作家にとっても良いような気がしています。

だけど、人間は理屈だけで動けるものではありません。

感情を優先させるか、合理性を優先させるかは常に難しい問題です。

僕の会社は、電子書籍の取り次ぎサービスを行なっているのですが、作家さんに紙書籍と値段を揃えたいと言われれば、無理なご提案はしてきませんでした。

そうは言いつつも、作家さんに儲けてもらわないと電子書籍のメリットを感じてもらないので悩み所です…。

どのように説明すれば、感情的にも論理的にも受け入れてもらえるのでしょうか。

SNSが定着した現在、「単行本は初動が大事です!ファンの皆さんは発売日に買ってください!」という類の投稿を作家さんがしているのをよく見かけます。

作家が自身のコンテンツをどのように運用するかに知恵を絞るのではなく、出版社の商品を宣伝している時点で、そのビジネスモデルは崩壊しています。

出版社が自社商品の宣伝をできていないから、作家が自分で動くしかない状況が生まれてしまうのです。

「出版社任せではいけない。これからは作家が自ら動く時代だ」というのはその通りです。

だけど、ちょっと動く方向が違いませんか?

例え作家のフォロワーが何千人か何万人いたとしても、楽天会員は何百万人いるでしょうか? Amazon会員は? yahoo! ID保持者は?

楽天koboやKindleやYahoo! Bookストアのトップページにバナーを貼るのと、作家個人で出版社の商品を宣伝するのと、どちらが直接的な作家の収入につながるかは、少し考えればわかるはずです。

ストアのトップページにバナーサイズの純広告を出そうとしたら、1日何万円かかることか。

キャンペーンに乗る代わりに、広告をタダで展開してもらえると考えれば、それ程アンフェアな取引ではありません。

だけど、ここでも感情が優先してしまいます。

「自分の作品を自分で宣伝したい」「紙で読んでほしい」という感情に、作家は揺れてしまいます。

僕も一通りの自作の宣伝はします。

むしろ、積極的に宣伝をしてきた過去があるので、「僕が描いたんだよ!読んでよ!」と言いたくなる作家の気持ちはすごくわかるのです。

一方で、それが自己満足だということも理解しています。

マーケティングの大事な部分は、もう少し違うところにあると思うのですが、何ともし難くモヤモヤしています。

この記事を書いた人:佐藤秀峰

大学在学中より漫画家を志し、福本伸行、高橋ツトムのアシスタントを経て1998年『週刊ヤングサンデー』(小学館)に掲載の『おめでとォ!』でデビュー。『海猿』や『ブラックジャックによろしく』など、綿密な取材に基づいた人間ドラマを描く。

転載元Facebook

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