「鋼の記憶を抱いて」木本雅彦さんインタビュー

こんばんは、きんどるどうでしょうです。KindleDirectPublishing、いわゆる個人出版で活躍する著者へのインタビューをお送りする”KDP最前線”。第21回は、「鋼の記憶を抱いて」を執筆した”木本雅彦”さんのインタビューを掲載します。

「鋼の記憶を抱いて」木本雅彦

近未来の日本。科工技士と呼ばれるエリートが、科学技術を独占的に開発利用していた。高校生の古暮怜二は、友人である春日晃道とバイクでツーリングに出た。春日晃道は科工技士に合格したばかりであり、新しい門出を祝うツーリングだった。
その途中、パーティと呼ばれる政治団体による戦闘行為に巻き込まれる。パーティと、エイバースと呼ばれる人型戦闘躯体による争いであり、巻き込まれた晃道は死亡した。
理不尽な友人の死を前に、怜二は晃道の敵討を決意するが、戦うべき相手はパーティなのかエイバースなのか……。2010年、Amazon.comにて初のKindle用日本語オリジナル小説としてリリースされた、長編SFアクション小説である本作が、日本に進出したKindle上にも登場!

世界各国で第四世代サイココネクトーすべての人格と記憶を持ってネットワークに飛び出す能力ーの再現試験が始められた
本作はプロのライトノベル/SF作家である木本雅彦さんが投稿時代に書かれた作品を米AmazonKindleストアで販売していたものだ。Amazon著者ページで”IT技術系のネタを、呼吸をするかのように使うので、えてして読者がおいてけぼりになりがち”と漏らすことに「まさに」と言わざるを得ないほど細かく、綿密に作られた物語の舞台は圧巻だ。

物語は人の意思を機械に写すというサイココネクトにまつわる事件からはじまる。技術の恩恵を受けられる選ばれた人間と、そうでない人間の確執。そして、リアルからITへ、その先にある肉体からの精神の解放について深く考えさせてくれる一冊だ。

そして何より販路が拡大するごとに増える「あとがき」が非常に面白かった。木本さんのこれまでの苦労が本当にスゴイ!「Kindle(日本語未対応)」「Smashwords」「DLsite」「Kobo」そして「日本版Kindle」。あとがきの歴史を見るだけで、まさに電子書籍のフロンティアを切り開く作家さんだと思わせてくれる。

木本雅彦さんには、本作のセールスポイントや特にお気に入りのシーンなどを語っていただいた。

インタビュー with 木本雅彦さん

――この作品を書いたキッカケを教えてください

「鋼の記憶を抱いて」は、投稿時代に書いていたうちの一本です。ライトノベルとしてはこの類いのSFっぽいのは最近うけないし、最近のSFとしては軽過ぎるので、どうにも扱いに困っていたところ、2010年当時のAmazonDTPの海外開放とKindleの日本からの購入可能化に伴ってKindle向けの販売を開始しました。

――そうですね。オープニングからかなり深い設定が伺えました。そんな本作の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

SFではあるのですが、どちらかというと「SFアニメ」的なSFです。ですので、SFが苦手な人にも読んで頂きたいですし、SFアニメ的な作品が少ないと嘆いているライトノベル読者にも読んで頂きたいです。

――戦闘シーンには燃えたっす!では、本作を書くうえで悩んだところは?

あまり悩んだ記憶はないのですが、主人公が大局に流されがちなので、どうやって主人公に意志のある行動をとらせるかという点は意識したように思います。

――誰と、何と戦うかという意志を強く感じました。執筆にかかった期間はどれくらいですか?

書いては直しを繰り返していますから、正確な期間は難しいのですが、ファイルの更新履歴を見ると、一番古いのが2003年で、2007年に一応今の形になっていますね。その間で、キャラの配置の大きな変更を一度行った記憶があります。

――Kindleで出すにあたって困ったことはありますか?

最初にこの本をKindleで出した時は、2010年でした。この当時の状況をおさらいしておくと、日本からKindle2の通販ができるようになったのが前年の秋で、2010年の1月に当時のAmazonDTPが海外からの登録も可能になりました。AmazonDTPが利用可能になったことを聞いた私は、これは日本語のコンテンツも出すと面白いのではないかと思い、Kindle2を輸入し、「鋼の記憶を抱いて」をKindle2で読めるように全部画像データに変換して公開しました。
その後、Kindle3になり日本語フォントを搭載するようになったので、対応版を公開したり、他のプラットフォーム(koboなど)への対応も行いました。
そういった経験があったので、今回日本のKDPで出すにあたっては、困ったことはほぼありませんでした。特に原稿のデータはkobo版を作る時に問題の発生しないEPUB 3のデータを作成済みだったので、そのままアップロードして終わりです。

――あとがきを見てビックリしました。ものすごい作り込みですね。では木本さんが小説を書こうと思ったキッカケはなんですか?

大学院生時代に研究に行き詰まり、このままでは自分は何も生み出せなくなるんじゃないかと思って、全然違うことを始めてみようと思ったのが切っ掛けです。その時に、学部時代に友人たちと作り書けたRPGのシナリオを小説として書き直してみたら、意外と書けてしまい、それを新人賞に送ったら一次選考を突破して面白くなったというのが始まりですね。

――なるほど。では影響を受けた、もしくは好きな作家さんを5人教えてください

古橋秀之
秋山瑞人
JPホーガン
富野由悠季
永野護
絞ることはできませんが、自分の話作りが影響を受けているのはこの5人だと思います。

――みなさんSFといえば、という方々ですね。ではオススメのKindle本を3冊教えてください

一宿一飯 めぐきち (著)
アダルト作品なので注意してください。
日本語版のKindle端末を購入してしばらくして気がついたのは、これでこっそりアダルトコンテンツを購入できるじゃん、ということでした。ならば安いのを探してみようと思って探したら、この作品に巡り合いました。
まず表紙からして同人誌っぽい。そして内容はといえばケータイ小説なんです。なるほど、プラットフォームさえできれば、こうなるのかと驚きました。この裾野の広がりのスピード感は、なかなかすごいなと。
ということで、オススメかというと難しいのですが、この一冊をインパクトを受けた一冊として挙げさせて頂きます。

――めぐきちさんは、Kindleストア開始当初に一気にリリースされていますね。いやあ、たしかにこのサイトでも紹介したアダルト作品がよくクリックされています。では、今後の予定について簡単に教えてください

1/7に発売されるNOVA9 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)に、短編が掲載されます。世界初の夕張メロン熊SFです。その他の仕事については、情報が公開できるようになりしだい、ブログやtwitterなどで告知していきたいと思います。

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします

SFは苦手という方でも、カッコよさとノリのよさだけで読んで頂ければと思います。逆にハードなSFファンの人は、あまり突っ込まないで下さいね。
KDPについては、誰かが書いた原稿の入手性を高めるという点では、確実にブレイクスルーだとは思います。しかし同時に、自分が求めるコンテンツにいかに到達できるかというキュレーター的役割が必要になります。
従来は筋のよい書店員さんがその役割だったのかもしれませんが、amazonの場合そこが自動化されているので、外部のサイトがムーブメントの原動力となる可能性は十分にあると思います。
同時に、読者の声を確実にfeedbackさせる仕組みも必要なのではないかと考えています。

著者プロフィール

木本雅彦(きもとまさひこ)
(Twitter:@masahiko_kimoto
1972年生。博士(理学)。第8回ファミ通えんため大賞佳作受賞。2007年に受賞作「声で魅せてよベイビー」にてデビュー。近著に「くあっどぴゅあ」(ファミ通文庫)、「星の舞台からみてる」(ハヤカワ文庫JA)、「メロンを掘る熊は宇宙で生きろ」(書き下ろし日本SFコレクション NOVA9に収録)などがある。
EARTHLIGHT TECHNOLOGY
http://www.earthlight.jp/

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