早川書房編集部の奥村 @kokumurak です。本日は『ハヤカワ新人賞2015試し読み冊子』のご紹介をいたします。冒頭のクエスチョンは、試し読み冊子に収録されている『ユートロニカのこちら側』(第三回SFコンテスト大賞受賞作品)の作品のテーマです。
同作は、GoogleやAppleを思わせるような巨大企業が、個人情報の売却および永続的な監視と引き換えに、ちょっとリッチな衣食住全般を保証してくれる「アガスティア・リゾート」という街が舞台。試し読みパートの「第一章 リップ・ヴァン・ウィンクル」では、そんな夢のような街(?)に入居できることになった、ある夫婦が描かれます。
さて、働かなくてもいい代わりに、ずーっと誰かに見られているかもしれない環境で生活することは、幸福でしょうか? それとも不幸でしょうか? 第一章はまるごと冊子に収録してますので、夫婦の結末はご自身でお確かめください。
電子書籍ストアで無料配信:ハヤカワ新人賞2015試し読み冊子
『ハヤカワ新人賞2015試し読み冊子』は、本年度の早川書房新人賞の冒頭(約50ページ)を、電子書籍でお手軽に、無料でお試し読みができるブックレットです。収録作品は、『ユートロニカのこちら側』の他に、第五回アガサ・クリスティ賞受賞作『うそつき、うそつき』、第三回SFコンテスト佳作受賞作『世界の涯ての夏』の3作品。
奇しくも今年は、新人賞の3作ともにある種の「ディストピア」が作中に織り込まれています。『うそつき、うそつき』では首輪型嘘発見器の装着を強制=うそをつけない世界が、『世界の涯ての夏』では可視化された世界の終わりである<涯て>が出現した近未来が、それぞれ描かれます。何十年か先の少し未来、あるいはちょっとした変化があれば実現してしまうかもしれない、あなたの隣にありうる終末世界。ディストピア好き(!?)の方には絶対に読んで頂きたい3作品です。
また、この3作品は本編のkindle版もそれぞれ配信中となります。試し読みで興味を持たれた方は、本編も是非お楽しみください!
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今年で第3回を迎えたハヤカワSFコンテスト、大賞を受賞したのは86年生まれの東大院生・小川哲氏による『ユートロニカのこちら側』。理想的な生活が約束される代わりに個人情報が売り渡されてしまう未来の都市で、人間らしさと自由を求めて彷徨する人々の物語を活写した俊才に迫ります。
第3回SFコンテスト受賞者インタビュウ Cakes
ハヤカワSFコンテストについて
日本SFの振興を図る「ハヤカワSF Project」の一環として始めた新人賞です。中篇から長篇までを対象とし、長さに関わらずもっとも優れた作品に大賞を与えます。
受賞者には正賞として賞牌、副賞100万円が贈られ、受賞作は日本国内では小社より単行本及び電子書籍で刊行するとともに、英語、中国語に翻訳し、世界へ向けた電子配信をいたします。
さらに、趣旨に賛同する企業の協力を得て、映画、ゲーム、アニメーションなど多角的なメディアミックス展開を目指します。