たった20分で物語を創れるんダァーッ!!キャラを強引に動かす猪木算が不可能を可能にする!

1305182こんにちは。こくぼしんじです。
今回は「その場の勢い」や「口から出任せ」でもストーリーを作れるようになる極意中の極意猪木算”について説明します。
「まーた怪しい大見得を切ってやがる……」
「炎上狙いみたいな記事はやめた方がいいよ?」
そう思うなかれ。実は今回の極意、この「怪しい大見得を切る」ことから始まるんです。キャラを強引に動かし、何も無いところにドラマを生み出す創作の技。執筆中のスランプをきっと打破してくれるでしょう。
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とりあえず、何も考えずに行ってみましょう!
これまでのそれいけ!ライターズはこちら

猪木算を使えば誰でも物語を生み出せる

プロレスファン、なかでも猪木の生き様に惚れ込んでいる人なら、すでにご存知かも知れないんですけど。猪木って、基本的には「ホラ吹きさん」なワケです。
古くはモハメド・アリやウィリー・ウィリアムスに挑むとか、巌流島決戦とか、イラクに飛んでって人質解放しちゃうとか、北朝鮮でプロレスやっちゃうとか、イノキ・ボンバイエとか。
まあ、冷静に考えて、どの興行もパフォーマンスも面白いけど儲からないというか。別に猪木をDISるコトが今回の目的ではないですけど、こんなコト繰り返してる以上、おそらく実情は借金で首が回らないぐらいのスゴいコトになっていると思います。
とはいえ、そんな台所事情などお構いなしに、猪木はやっぱり「カリスマ」だし、何かブチ上げればマスコミもファンも食いついて、何やかやで当初の構想が実現してしまう。不可能が可能になるワケです。
意味不明な魅力と勢いで確率や打算を超越するための"常軌を逸した算数"……それが「猪木算」なんだと思ってください。

猪木の「道」には、キャラを極める極意がある!

猪木の引退宣言で「道」っていうのがありましたよね。

この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる
迷わず行けよ 行けばわかるさ
(1998年4月4日、東京ドームで行われた引退試合後のマイクパフォーマンスより。詩の出典は清沢哲夫著『無常断章』1966に記載された『道』を一部改変したもの)

この短い言葉の中に、いくつか、物語の主人公がとるべき指針があるワケです。

(1)危ぶまないこと

脇役や読者に応援される主人公、物語を引っ張れる主人公というのは、基本的に「決然としている」ことが重要です。
例を挙げると単純で、たとえば友人や恋人とドライブに行く際にですよ。
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運転するヤツがそんなコト言ってたら、乗りたくなりますか? 乗りたくないですよね、当然。人は迷ってる他者に安心してついて行くことなどできませんから。だから(作者の)内心にそういった不安があっても、見せないことが肝心。
作劇の方法論として言いかえれば……
一度何か目的を立てたら、もうできるか否かレベルでは迷わない。
とりあえず、目標のために何かやれるコトを定めて、成否は考えずにブチ当たる。

これが重要です。

(2)踏み出せば、その一足が道となる

この概念が、「猪木算」を理解する上でもっとも重要な部分です。なぜ「踏み出せば、その一足が道となる」のか? ここが分からないと「猪木算」は成立しません。
答えを言うと……
成否はともかく、踏み出しさえすれば新たに協力者や敵が現れるからです
主人公のやってるコトを面白そうだと思ったヤツは、協力者になるでしょう。痛々しくて見ていられないと思った人は、そっとアドバイスをくれるかも知れません。あるいは主人公の行動を生意気だと思ったら、ライバルとして立ちはだかることでしょう。
要するに、何はなくとも主人公が何か目的を定めて、かつ成否を構わず動くと、物語も一緒に動いてくれるんです。

(3)「行けばわかるさ」――デカい夢を掲げる者に、人は惹きつけられる

コレはさすがに上の『道』では書かれていませんけど、「猪木算」を知るための極意なので、あえて紹介しましょう。
ここで例を出します。
2人の高校生――どっちも偏差値30台のおバカさんだと思ってください。その2人が、目標を立てました。
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成否はともかくとして……いろいろな意味で気になるのは、東大を目指すと宣言したBちゃんじゃないですか?
「アホか!」「身の程をわきまえろ!」
「どんだけ無茶言ってんのか分かってる??」
「口だけなら誰だって言えるだろ」

まあ、常識的に考えても、最初はこんな冷たい反応かも知れません。ただブチ上げただけなら、きっと冷たい反応だけで終わるでしょうね。
しかし……ここに「行動」が伴ってくると、周囲の反応は変わります。次の日から必死に英単語を覚え始めたり、山川日本史と睨めっこし始めたら……?
「コイツ……マジなのか?」
「おいおい、もっと効果的な学習法を考えろよ」
「アタシの塾にいい先生いるよ。夏期講習だけでも参加してみたら?」

こういった理解者が現れ始めて、Bちゃんは少しずつ「応援されるキャラ」になっちゃうんです。
AちゃんとBちゃんの夢は、何が違うか。
実は、身近な夢や手堅い目標って、あんまり応援されないんです。理由はカンタンで、応援するまでもないから。でも、身の丈に合わないような「大きな夢」ほど、逆に応援されるんです。特に、当人がその「大きな夢」を全力で叶えようとしている場合には。
なぜなら。
まず、大きな夢を掲げると、まず夢自体が持つインパクトによって、大きく目立てるから。次に、目立ったコトによって、すでに夢を叶えている人達や、夢が叶った際の分前にあずかりたい人達の目にも留まってしまう。ひいては、思わぬ大抜擢まで生まれたりするんです……。

大きな夢の効果を計算する

猪木は、大きな夢を掲げれば間違いなく協力者が現われるコトを分かっています。だからこそ、毎回毎回、懲りずに行き当たりばったりの「大きな夢」を掲げるのです(笑)。
大きな夢を掲げることから始まる「物語」のプロセスを、知った上で逆利用する。狂気に見えて、実はしたたかな計算であり、確信犯。それが「猪木算」の本質です。
まさに「行けば(そういった狂気のバランス感覚も)分かるさ」……ですよね!この「猪木算」や「猪木システム」を、作劇に応用しない手はアリマセン。

デケえ"声"で言ってみろ! テメエの"夢"を!! あぁ!?

では、作劇に「猪木算」を応用するとどうなるか。今度は「猪木算」に基づいたストーリー例を、起承転結にはめ込んでみましょう。

起:大ボラを吹いてみんなにバカにされる

まずは、猪木ばりに大ボラを吹きます。
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ホラの内容はとりあえず大きければ何でもいいんですけど、大事なのは、後始末の面倒を一切考えないコト
あとで物語にどうまとめよう? とか、出来るか否かといった、小市民的なコトを考えたら「猪木算」は成立しません。そこを考えるから、話が盛り上がらない。「危ぶむなかれ」をキモに命じてください。
主人公にこういうホラを吹いた場合、周囲の反応は容易に予想できると思います。「できるワケねえだろ」「ウソつくな」と。それに対して主人公「うるせえ! オレはやる! やってみせる!(証明してみせる!)」と決意表明。
ここでは、「オレはこの世界を征服してみせる! 暴力で!」としておきますか。
以上が序章です。この時点で、なんか頭がおかしく……もとい、カッコよく見えませんか?

承:やれるかやれないかじゃねえ。やるんだ!

さて主人公は、身近なところから世界征服への一歩を踏み出します。
とりあえず……ちょっと大胆に、選挙カーを襲って「首相襲撃」とか計画しましょう。(完全にフィクションなんで、通報とかしないでくださいよ!)
こう言い出したら、主人公、もう迷いません。1人でも、さっそく行動開始しようとします。でも、冷静に考えて無茶ですよね? 特に首相が乗ってる選挙カーなんて、SPが何重にも守ってますし。
ちなみに、こういう冷静な「諭し」は脇役が行います。この辺りで、主人公のバカぶりに手をやく幼馴染を登場させてもいいですよね。
「アンタはどうしてそんなに極端なの! バカ!」とか
「へ、変な野望さえ持ってなければ、お嫁に行ったって……な、何でもないわよ!」とか。
話はズレましたが、とにかく、いきなり首相を倒すことは出来ないと知った主人公。ではどうすれば? まずは「武力」を得る必要がありますよね。
主人公、ここで思いつきます。ホントにただの思いつきですけど、「わらしべ理論」と名付けたその方法は……
まずは番長グループ、次は格闘家の道場、次はヤクザの事務所、次は警察、自衛隊、最後にアメリカ国防総省といった感じで、段階的に強い武力集団を支配下に置いたらどうだろうかと。そうすれば、いつかは世界を暴力で制圧できるんじゃないかと。
……まあ、あとは順繰りに、番長と戦う話や、格闘家と戦う話を考えればいいんです。
これだけで、とりあえずは「バトル物」としてエピソード数を稼げます。後のことは、物語を進めながら考えればよし!
たとえば、番長には何とか勝ったけど、格闘家には勝てなかったというなら、そこで本格的な武道の師匠のような人物を登場させたり、できるワケです。
これは以前の講義の繰り返しですが……主人公が世界征服を諦めていないなら、周囲はいくらでも協力できます。協力しても、ご都合主義になりませんから。
話を大きく進めたいなら、次のようなやり方も。
「特殊能力を持った協力者を登場させる」というやり方です。
たとえば、戦い続ける主人公を慕って、元イジメられっ子の子分が登場、とか。で、彼はケンカこそからきしだけど、実は外国語の達人で、語学力を駆使して北朝鮮と交渉――自動小銃や手榴弾まで調達してしまう……とかね。
圧倒的武力! これで世界征服に一歩近づいた!が、しかし……

転:努力の結果、思わぬ強力な敵が立ちふさがる

主人公の行動のスケールが大きくなればなるほど、敵もバランスを取るように強くできますので、物語はもっと盛り上がります。
それこそ、主人公が自動小銃まで手に入れたなら、自衛隊や在日米軍の特殊部隊までが敵として立ちふさがっても不思議ではありませんよね。
そんなワケで、主人公たちは一点、反政府軍として目を付けられます(笑)。野望の達成を誓った仲間が次々と死んでいくことも確実でしょう。

結:その一足が道となる

大風呂敷を広げすぎて、キレイに畳めなくなるのがこの方式の弱点なのですが!!まあ、終わりなんて、どうにでもなります。
世界の支配者をでっち上げて、ゲリラ的にそれを倒してハッピーエンドでもいいですし、いざとなったら、敵の中心にみんなで突撃して……
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こういう終わり方があります。
あとは主人公をお空に浮かべて、脇役みんなで「忘れないぜ……○○(主人公)!」ってのも、王道的なエンディングです。
過去には、話の脈絡も無視して突然すべてをブッ壊す大爆発が起こって、みんな死んで終わりという名作アニメもありましたので、気にせずいきましょう。
いずれにせよ、「キレイな終わり方についてはスッパリ諦める!」というのが、猪木算で物語を創る際の大事なポイント。もちろん、「世界征服」みたいに破滅的な目標でなく、みんなが幸せになる夢や野望を掲げていれば、もっとキレイに終わりやすいんですけどね。

さいごに

以上、いささかいい加減な「猪木算」による作劇例でしたが、この方式の強みは、圧倒的に「早く創れる」というトコ。ちなみに言うと、上のいい加減な出任せストーリーは、およそ20分で作成しました。
とりあえずは大ボラを吹いてしまって、それを何とかしようとするだけで――いわば「無理を通して道理を引っ込める」その過程だけで、ストーリーは創れるというお話でした。
今回はここまで。
次回は「猪木算」をさらに発展させ、おみこし理論も組み込んだ本格(?)作劇理論「本宮算」を紹介します。

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)
1974.10.12.うまれ。
東京都台東区の山谷地区出身。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、専門学校や声優養成所の事務員として働きながら漫画原作者に師事し、シナリオライターに。コンビニ向けのペーパーバック漫画やゲームのシナリオライターとして活動する。現在は通常のライター業も請けつつ、KDPでオリジナル作品を発表中。他に、自分と同じKDP作家を支援する活動も行なっています。→『きんぷれ!』(http://kin-pre.com
Kindle本「DISTANCE (がんばれ!アクターズ戯曲シリーズ)」好評発売中

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