俺達の戦いはここからだ「日の丸電子書籍はなぜ敗れたか -21st century eBook Story-」を執筆した鈴木秀生さんにインタビュー

1303281こんばんわ、きんどるどうでしょうです。
いま話題、もしくはこれから話題になるであろうKindle作家にインタビューするKDP最前線。今夜はその第89回。
叩き上げの電子書籍プロフェッショナルによる回顧録「日の丸電子書籍はなぜ敗れたか -21st century eBook Story-」を執筆した鈴木秀生さんです。
鈴木秀生さんには本作執筆のキッカケやオススメのポイントをなどを語っていただきました。さぁ、いったいどんなお話が聞けるのでしょうか。もちろん、本作はAmazonKindleで無料で試読が可能です。

日の丸電子書籍はなぜ敗れたか -21st century eBook Story-

2004年の「電子コミック」元年から、KindleStoreが上陸した「ダイレクト出版元年」の2012年まで。数々の電子書店プロジェクトに立ち上げから関わってきた当事者が、国内電子書籍業界のエポックメイキングな出来事を内側からの視点で語る。
電子書籍ビジネスの歴史と未来がまるごとわかる、電子書籍界の入門書。これを読まずして、もう電子書籍は語れない――
価格:248円
評価:★★★☆☆,6件のレビュー
Amazon.co.jpで詳細を見る

インタビュー with 鈴木秀生さん

――この作品を書いたキッカケを教えてください

一つ目は、時代の変わり目を機に、この10年の歴史を若い世代に語り継ぎたいなと思ったから。昨秋のKindleストア上陸で、ついに電子出版元年がスタートしたと思います。新しい時代が始まるにあたって、過去の電子書籍ビジネスにおける成功や失敗要因、課題や可能性を改めて考察することで、今後の良い教訓にしたいなと考えました
本書をこのタイミングで安価で刊行したのは、4月から出版や電子書籍に関する新しい仕事や会社で働き始める人に読んで欲しかったからです。過去の短い歴史を知ってもらって仕事に生かしてもらいたいなと。そうした人たちへのメッセージもあとがきで添えました。
二つ目は、Kindleダイレクトパブリッシングに早くトライしてみたかったこと。フォロワーが多いわけでもアルファーブロガーでもない無名の素人作家がコスト0円で書いた作品が、Kindleという新たなチャネルでどれだけ多くの読者に届くのか試してみたかったから。
現在はすでに誰でも作家の時代なので、ただ書いて発表することがゴールではありません。自らの処女作を通して、どうやって書き、どう販促すれば赤字にならずに続けられるのか、多くの読者に届けられるのかを実証実験してみたくて、初めて物語を書きました。

――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

作品の特徴は、電子書籍ビジネスの歴史と現在について、ライターやジャーナリストが書かれる外側からの批評ではなく、電子書籍関連会社の新規プロジェクト責任者としての実体験から綴っている点です。当然、個人の体験に基づく主観が入ってくるので偏りがあると思いますが、多少偏りがある方が読み物としては面白いんじゃないかと思ったわけです。
セールスポイントは、本に関する様々な事業を経験しているので、わりと俯瞰的な視野で見れている点かなと。
コミック、書籍、雑誌それぞれの新規プロジェクト立ち上げを経験したため、一ジャンルだけに偏らず、できるだけ多くのジャンルについて考察することを心がけました。
様々な電子書籍プロジェクトの事業計画作りからクロージングまで。著者や出版社との電子化交渉から始まって、電子書店や電子書籍端末事業立ち上げからサイト運営まで。オリジナルコンテンツの企画編集から販促まで。電子書籍事業については川上から川下までほとんど経験してきたので、書店経験者ではない人が読んでも入っていきやすいかと。

――作品を書くうえで悩んだところは?

各プロジェクトの守秘義務があるので当然、細部は書けません。とはいえ、具体的なエピソードがない概念論ばかりだと従来の批評本と同じになってしまう。なので、できるだけリアリティを出すために、自分自身が企画して自ら推進したプロジェクトに対する考えや経緯にフォーカスして書きました
もっとも、成功だけではなく失敗や挫折もかなり経験しているので、自分の恥部をさらけ出すような恥ずかしさはありました。とはいえ、有名人でもない素人の著者が過去のサクセスストーリーだけ語っても嘘くさいだけ(笑)。著者も含めた日の丸電子書籍事業者たちの成功と失敗をフラットに綴ることで、次に続く人たちの参考になればいいんじゃないかと

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

校正と配信登録作業を含めて約100時間です。1エピソードあたり2時間前後でしょうか。今回は実証実験を兼ねているので、かかった総コストを回収できるかどうかが肝心です。100時間のコンテンツ制作時間を人件費に直すと30万円前後。かかったコストを長い年月をかけてコンテンツ実売で回収できれば、初トライアルとしては上々だと思います

――本作の執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?

iBookstore日本版オープンと出版取次の電子書籍事業参入のニュースですね。ブログ連載を書いているうちに次から次へと電子書籍業界のニュースが飛んでくるので、重要なニュースの背景をわかりやすく伝えるエピソード選びが大変でした。

――Kindleで出すにあたって困ったことはありますか?

amazon批判と誤解されそうなフレーズがあったので、もしKindleストア側から配信NGを出されたらどうしようかと(笑)。
途中で配信NGを出されても慌てないように、独占配信扱いになるKindleセレクト(ロイヤリティ70%)を選択しなかったので、採算分岐点が上がってしまったことです。

――どうしてこのタイトルにしたのですか?

国内電子書籍史を語った本であることがわかることとインパクトを考えてつけました
20世紀末、「日の丸電子書籍」と呼ばれた国家プロジェクト、電子書籍コンソーシアムで見た「本のエコシステム」の夢は、21世紀に入りいかに変容していったのか。
このテーマを、私自身の10年間のプロジェクト経験から考察して綴った物語が『日の丸電子書籍はなぜ敗れたか』です。そうした意味では、本書の正式タイトルは『日の丸電子書籍の夢はなぜ破れたか』でもよかったかもしれません。
21世紀に入ってから出版や電子書籍の仕事に就いた若者の多くは、電子書籍コンソーシアムが存在した事実さえ知りません。歴史は繰り返すというので、ごく最近の歴史さえ知らないと、また同じ誤ちを繰り返しがちです。
実際、電子書籍に関わる多くの人たちが、前世紀に起きた同じ過ちをここ10年間で繰り返すさまを見てきました。Kindleが出た今、もう過去の過ちを繰り返す必要はないだろうと思って、あえてこのタイトルにしました。それと、電子書店運営経験から、ネットユーザーはわりと「日の丸」というワードに食いつく傾向を感じていたので、このタイトルで若い読者にも広く届けばいいなと思いました。

――読者からの感想はありましたか?

最初は、ブログのリピーターの方からTwitterやメールでありました。Yahooニュースなどに取り上げてもらった後、ブログ書評に加えて専用スレがあがっていました(笑)
電子書籍については立ち位置次第でいろんな意見があるので、賛否両論だと思います。人によって受け止め方が違う方が正常なんじゃないでしょうか。コスト0円で編集者を入れずに、ブログからのEPub自動書き出しで配信したので、「素人が作った本は、面白くても読みづらい」という意見もありました。2作目(編集者をつけた紙の本になるかもしれませんが)で改善したいと思います。
作品だけではなく新規事業やサービスについても同じ考えですが、反応がないよりも良くも悪くも反響がある方がトライした甲斐があります。リアクションが大きい方が次のやる気につながるタイプなので。意外だった点は、いっしょに仕事をしている出版社の方や著者、電子書店の人たちから好評だったこと。業種を問わず、古くからデジタル化や著作権問題、プロモーション方法等で苦労してきた方々は共感してくれたようです。

――1番読者に伝えたいテーマはなんですか?

全てのプロジェクトの成否を決めるのは、会社ではなく個人の想像力がもたらす決断と行動の早さだということです。
書きながら過去の成功要因を思い出してそう結論づけました。そして、自分自身にもまだ足りない部分だと思っています。

――表紙を新しくするなら、どんなイラストレーターさんにお願いしたいですか?

コスト0円で出すため表紙もパワーポイントで作ったので、正直不満があります。どなたでもいいのでカッコイイ表紙を安くデザインいただけないでしょうか?(笑)

――Kindleで個人出版を目指す方にアドバイスをお願いします

私がひとつの例ですが、全くの素人であれば電子化方法やレイアウトやデザインに凝って時間とコストをかけるより、
無料ブログサービスのEPub自動書き出し機能を使って、編集者なし&制作コストなしで出版できるブログパブリッシングをオススメします。本の体裁にこだわるより、本文内容のオリジナリティにこだわったほうがよいんじゃないかと
内容が面白ければ、出版社の編集者から声がかかって、プロのデザイナーと校正者が時間とコストをかけて素敵な書物にしてくれるかもしれないので。

――個人著者が電子出版をするときに書店を絞った方が良いでしょうか?マルチに展開したほうが良いでしょうか?

最初はマルチに展開しつつ、慣れてきたら書店を絞ったほうがいいと思います。
Kindleもまだ期待ほど圧倒的に売れるストアではありません。実用書とか自己啓発、恋愛Howto本ジャンルに関して言えばapplestoreで85円で出した方が売れると思います。
また、今後は国内の電子書店も生き残りのため、現在の総合書店から強い特定ジャンルを持った専門書店に脱皮するべく特色を打ち出していくはずです。そうしたお店に販促協力を依頼して作品を露出してもらった方が、Kindleストアにただ登録するだけに比べて長期的に売れると思うので。
Kindleストアに絞って出した方がいいのは、専門ジャンルブログの過去連載をまとめた100円本とか、ITリテラシーの高い30代〜40代男性向けの読み物なんじゃないでしょうか

――プロモーションの秘訣を教えてください

まず、ブログ連載を始めることです。私を含めた普通の人はアルファブロガーではないですし、1万人もフォローワーがいません。まずは2ヶ月から3ヶ月かけてブログ連載してみて千人以上のリピーターがつけば、ブログ未公開部分を大幅に加筆すれば単行本も買ってくれるんじゃないかと思います。

――値段はどうやって決めましたか?

編集やデザイン人件費や電子化コストをかけず、同じ文字数を紙で出した場合の1/3〜1/5ぐらいになる価格づけを最優先にしました。

――日の丸電子書店復活のために書店員の存在が欠かせないとのことですが現在のリアル店舗の書店員は電子書籍に関わっていけるでしょうか?

本や雑誌、漫画の知識に関していうと、質も量もリアル書店員の方が高いと思います。
実際、リアル書店出身者が電子書店で働いていますから。インターネット固有の知識は、個人差はあっても仕事をやっていれば覚えるものなので、書店員、編集者に関わらず情報発信欲や情報編集欲が強いひとはぜひ。これからはリアル書店や電子書店、紙メディアやデジタルメディア問わず読者コミュニティを運営していく時代なのかなと。

――今後の予定について簡単に教えてください

次はどこかで小説に初チャレンジするかもしれません。
素人がどのように小説を書けば広く読者に届くのか興味があります。

――今後、どういった作品を発表していきたいですか?

山崎豊子さんの小説や佐野眞一さんのノンフィクションのように、実社会に影響を与え何かを変えうる作品です。私は作家志望ではないので、そんなテーマをお持ちの作家さんの電子出版をプロデュースしていきたいと願っています。

――はじめて執筆してみた感想は?

書く前と後では大違い。長く書き続けている作家さんを改めてレスペクトしました。

――この本を紙で出したいという出版社が来たらどうしますか?

セルフパブリッシング時代だからこそプロの編集者が必要だと思うので、ぜひ素敵な書物にして書店でも読めるようにしていただければ嬉しいです。電子書籍版の10倍ぐらいは読まれると思います

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします

本書や私のブログを読んでくださった人は、出版社やプロ作家の方を含めて出版や電子書籍に高い関心を抱いている方だと思います。自分自身では、プリント&デジタル出版流通のどまん中でいろんな経験を積んできたと思っていますが、私が綴った物語はあくまでも私個人の体験を通じた一つの物語でしかありません。
正解がどこかにあるわけではなく、電子出版や電子書籍はひとそれぞれで異なる自由なものだと思います。本書を読んでみて、異論や別のメッセージ、アイデアがある方はぜひ、電子出版にチャレンジしてご自身のメッセージを綴ってみてください。物語が多ければ多いほど読者の選択肢が増えて、本の世界がもっと豊かで、もっと面白いものになると思います。
次の21st century eBook Storyの当事者は、ひょっとするとあなたかもしれません。

著者プロフィール

鈴木秀生(すずきひでお) Twitter @hidedy
本と映画好きなeBookProducer
東京都調布市生まれ。
1996年、出版取次会社トーハン入社後、書店複合化推進プロジェクトや事業開発等を担当。
2004年、電子書籍配信ベンチャーのイーブックイニシアティブジャパンに転職。プロデューサーとしてeBookJapanサイト運営と新規事業開発を担当。電子書籍元年の2010年からは、Fujisan.co.jp等ネット書店にて、オリジナル電子出版事業や雑誌記事配信メディア、電子書籍専用端末内書店等を立ち上げる。
現在、電子書店及び出版社の新規事業に参画中。
●著書
日の丸電子書籍はなぜ敗れたか— 21st century eBook Story —』(Kindlestore)
●プロデュース電子書籍
『まんが王国の興亡』(中野晴行著/eBookJapan)
『少年マガジン伝説』(伊藤和弘著/applestore)
『極モテ!』(尾谷幸憲著/applestore)
『本命カノジョ研究所』(ヨダエリ著/applestore)
●著者サイト名:本とeBookの公園 — 21st century Book Story —
http://blog.livedoor.jp/hideorin/

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