こんばんわ、Kindleどうでしょうです。KindleDirectPublishing、いわゆる個人出版で活躍する著者へのインタビューをお送りする”KDP最前線”。君の心にストライク!第11回は、心くすぐる青春ミステリー「彼女のための幽霊(藤本杏シリーズ)」を執筆した”吉野茉莉”さんのインタビューを掲載します。
「藤本杏シリーズ」
「下らないのも、たまにはいいものだよ」
藤本杏シリーズは、北海道の地方都市に住む高校一年生「藤元杏(あんず)」に起こる、ちょっとだけミステリの青春物語。東京から引っ越ししてきた彼女は、クラスメイトである「ポチ」を強引につれて生徒会執行部に入部をするが、最初に与えられたのは学内で起こった「幽霊騒ぎ」の調査だった!から始まる青春群像劇だ。
1作、2作は藤本杏が主人公。そして最新作の「欠陥だらけの多面体と永久なる人形姫」は少しばかり時間を遡り前世代の生徒会執行部メンバーが活躍する。どちらの作品も印象的なセリフ回しやら意味深な発言など言葉選びがヒジョーに面白い。そしてハッキリと言えることは、人形姫こと若菜さん(^ω^)ペロペロ
吉野茉莉さんには、本作のセールスポイントや特にお気に入りのシーンなどを語っていただいた
インタビュー with 吉野茉莉さん
――この作品を書いたキッカケを教えてください
元々たまに趣味で小説を書いていたのですがしばらくお休みしていたところ、何となく暇ができたので昔作ったプロットを引っ張り出して何か長編でも一つ書いてみようか、と2010年1月に思い立ったのがきっかけです。
いくつかあるなかでこのプロットにしようと決めたのは、私の地元が出てくること、誰も死なないミステリが書いてみたい、という気持ちによるものでした。
結局書いたはいいもののどこにも公開するあても予定もなかったのですが、2010年6月にブクログのパブーが始まり、電子書籍というのもあるのかと気がつき、twitterで知り合った方に表紙や扉絵を頼んで描いていただき、web上での公開になりました。当初無料で公開していたのですが、思いの外感想などをいただけたので、きちんと改稿し、有料に切り替え、おまけに続編まで書いてしまいました。これらの行為は完全に舞い上がった結果です。
――いやいや、素晴らしい舞いっぷりですよ。キャラクターに良い味がでています。では、作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
ミステリのようでミステリに特化しているわけでもない結局青春小説、でしょうか。ですので「謎解き」がメインではなく、作品中も謎解きがメインでないことには何度も登場人物が触れています。主人公は「探偵」というよりも「探偵のそばにいる人」をイメージして書きました。
あの頃の年齢特有の曖昧な不安感や孤独感などが表現できていたらよいと思います。
――そうですね。キャラ同士の掛け合いが非常に上手くかかれていました。立ち位置や人間関係も面白いです。では、作品を書く上で悩んだところはありますか?
主人公の藤元杏が、それほど読書家ではない高校一年生という設定の一人称小説なので、難しすぎる語彙や言い回しは極力避け、なるべく等身大に描こうとしたところです。
プロローグとエピローグは主人公ではない人物が語り部になるのですが、微妙に言葉使いを変えている、つもりです。どこまで書いていいのか、地の文に勘違いや理解不足などがあってもよいのか、など一人称につきものの部分は色々試行錯誤しました。
――なるほど。おかげでサクサク読めましたよ。執筆にかかった期間はどれくらいですか?
プロットなどはすでにありましたが実際に書いたのは2010年1月頃の約一ヶ月間です。初稿では13万文字だったものをその後、何度か大改稿をして現在の10万文字までに削りました。書き物をするときはだいたい一日3,000文字程度をめどにしています。それ以上書こうとすると何時間あっても私の脳みそはダウンしてしまうようです。安定したポンコツですね。
――定量的に吐き出せるうちは良いマシンですよ(笑)Kindleで出すにあたって困ったことはありますか?
あくまで小説の話ですが、縦書きの形式で出したかったので縦書きePub 3.0で作成する方法に悩みました。ちょうどそのとき「一太郎2012 承」が縦書きePub 3.0の書き出しに対応していることを知り、仕事と頭を切り換えるためmicrosoft wordと決別し、ついでにATOKも使いたい、ということで一太郎の導入に踏み切りました。
それ以外については非常にスムーズで、登録作業なども簡単だったと思います。反映が即時じゃないのが若干辛いところですね。
それから登録すると自動的にカテゴリー分けされてしまうのですが、自分の思うカテゴリになっていなかったときには、申請時のカテゴリーを「分類不可」にしたうえで、サポートに変更の依頼をすると変更を受け付けてくれるようです。「藤元杏シリーズ」は最初「絵本・児童書」になっていたのですが「ライトノベル」にしていただきたかったのでその手続きを取りました。ただカテゴリー「ライトノベル」は既存のレーベルがどんどん参入してきて激戦区となっているので個人がランキング上位を取るのはかなり難しいと思います。
――どのカテゴリーで勝負するか、というのもこれからの電子出版の成否を決めそうですね。参考になります。ところで、色々と苦労をされたようですが電子書籍についてどう思われますか?
小説を買う側としては、
・実空間のスペースの都合でこれ以上蔵書を増やせないため
・二度以上読みそうもないが処分する手間も面倒なため
の二つの理由で普及していくと思います。
編集が介在する電子書籍専門のレーベル、文学賞も増えてくると思います。また紙の書籍になりにくい短編、中編が低価格で買えるようになることも期待しています。
――某ライトノベルレーベルは未単行本の作品を安価にだしてきていますので、これからますます激戦化しそうですね。ところで小説を書くときのこだわりってありますか
書きながらあまりお菓子を食べないことです。太ります。
――それはたしかな問題ですな(笑)もし、この本を紙で出したいという出版社が来たらどうしますか?
発表する媒体にこだわりはありませんし今はまだ紙の書籍を望む方が多いと思いますので、より多くの方の手に取っていただけるのであれば(「手に取る」という言い回しもいつか使わなくなるのでしょうか)、そしてこの稚拙な作品を編集さんと徹底的に手直したうえで電子書籍版と平行して出版できるのであれば喜んでお受けいたします。
――なるほど。文量もキャラ作りも申し分ないので、ちゃんとした編集さんと出会えれば良い線いく気がします。では、オススメのKindle本を3冊教えてください
紙媒体の積読が100冊近くになっていて、これを消化してからkindleに手をつけようと思っているので、ご紹介できるものがありません。その代わりといってはなんですが、現段階でkindleで購入できるものの中で、作品に影響を受けた、あるいはオススメの本を3冊上げておきます。
スカイ・クロラ / 森博嗣
氷菓 / 米澤穂信
四畳半神話大系 / 森見登美彦
――影響を受けた、もしくは好きな作家さんを5人教えてください
好きな作家さんは数多いですが、先に挙げた作家さん以外で挙げるとすると
上遠野浩平氏(ブギーポップシリーズが私のライトノベルへの入り口だったと言っても過言ではありません)
伊坂幸太郎氏(毎回伏線の張り方と回収方法に唸ってしまいます)
内田百間氏(幻想的で奇妙な世界を描写する小説と、洒落の利いたエッセイの対比がすばらしいです)
尾崎翠氏(寡作ですがふわふわとした中にも確固たる芯があって、しかも今でも読みやすい作品ばかりです)
羽海野チカ氏(唯一漫画家さんで挙げましたが、モノローグの扱い方が上手く心に響きます)
となります。
――では、今後の予定について簡単に教えてください
「藤元杏シリーズ」については三作目が2013年夏頃、四作目が2014年春頃の公開を予定しています。
三作目は初稿をすでに脱稿済みで、現在プロットを作成中の四作目が最終話となります。物語は独立しているのでどこから読み始めてもある程度は問題ないように心がけたいです。
それ以外にも過去に書いたもので公開できるものがあれば改稿をし、合間を縫って公開するかもしれません。
――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします
このインタビューで初めて私を知った方、twitter等でやりとりをされている方、すでに購入されている方、実は購入しようかとマウスのクリックを押すべく指をぷらんぷらんさせている方、ココロに響く小説はいかがでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
著者プロフィール
吉野茉莉(Twitter:@stalemate)
北海道出身、東京都在住。胸キュン小説を好んで書いています。
ブログ http://quarterquasilovers.blogspot.jp/
「藤元杏シリーズ第一弾」
北海道の地方都市に住む高校一年生「藤元杏」に起こる、ちょっとだけミステリの青春物語。
東京から引っ越ししてきた彼女は、クラスメイトである「ポチ」を強引につれて生徒会執行部に入部をするが、最初に与えられたのは学内で起こった「幽霊騒ぎ」の調査だった。期限は一週間、彼女は真相に辿りつけるのか……
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