「Gene Mapper」 藤井太洋 さんインタビュー

こんばんわ、Kindleどうでしょうです。KindleDirectPublishing、いわゆる個人出版で活躍する著者へのインタビューをお送りする”KDP最前線”。本日お送りする第九回は、個人出版ながら2012年のAmazonKindle小説・文芸でトップに選ばれるなど高い注目を集めている「Gene Mapper」を執筆した”藤井太洋”さんのインタビューを掲載します。

Gene Mapper (ジーン・マッパー)

「Gene Mapper」とは

「Does is better than Perfect/完璧を求めんな、動くほうがいい」
Gene Mapperは、『遺伝子』が軸となった近未来のSF小説だ。農作物の多くがメーカー製の「蒸留作物」に置き換えられつつある2037年。作物の遺伝子をマークアップし、外観を設計するスタイルシート・デザイナーである主人公・林田のもとへ「ジャパニーズ・サラリーマン」を演じる黒川から調査依頼が入った。フルスクラッチで作物を作れるほどの遺伝子工学、現実と見分けられないほどの拡張現実が当然のものとなった2037年。たゆまなく前進する科学技術は人類の繁栄を約束するのか? 本作を通して、今一度「食の安全」について考えて欲しい。

藤井太洋さんには、本作のセールスポイントや特にお気に入りのシーンなどを語っていただいた。

インタビュー with 藤井太洋さん

――この作品を書いたキッカケを教えてください

東日本大震災と、それに続いた福島第一原子力発電所の事故に関する報道で、根拠のない数字や、何を研究しているのか明かされない「専門家」がメディアで恐怖をばらまく姿に、ひどい嫌悪感を感じました。それは、マイケル・クライトンが「恐怖の存在」で描いた状況と全く同じものです。
いつまでも正されない恐怖のレポート滅入っていた私に、力をくれたのはKEKのセミナーや、のちに編集を手伝ってくれた友人の書いた「0.02%の嘘*」というエッセイでした。真摯に、事象と科学と私たちの関係を説明しようと試みていました。
サイエンティストでも、サイエンスライターでもない私にできること、フィクションの力で、私は訴えていこう。これが、私が筆をとった理由です。
*lizard-tail studio:0.02%の嘘
http://www.lizard-tail.com/isana/archives/text/thought_about_radiation.html

――震災は個人が社会にできることとは何なのかを非常に考えさせられる出来事でした。藤井さんの作品からは社会に対する警鐘と真摯な想いが感じられます。では、作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?

ディストピアではない、リアルな未来像を感じていただければ、嬉しく思います。
また、iPhoneでも十分に読めるように調整していますので、専用のリーダーでなくてもお楽しみいただけます。

――確かに読みやすさは抜群でした。特にルビが綺麗に揃っていて非常に読みやすかったです。作品を書くうえで悩んだところは?

初めて書いた小説ですので、すべてが悩ましいものでした。結果的にFPSのような一人称で描くことにしたのですが、見開きのない電子書籍では逆にいい効果があったように思います。

――おっしゃるとおり、電子書籍では伝えられる情報に限りがありますからね。読者には一度に多くの情報を与えないような書き方が向いているように感じます。では、執筆にかかった期間はどれくらいですか?

2011年の11月に書き始め、5月に書き終えていますから約半年かかっています。

――はじめての小説、しかもあれだけの文量とこれほどのクオリティを半年ですか…スゴイですね。それではKindleで出すにあたって困ったことはありますか?

Kindleからの出版自体はなにも難しいところは感じていません。
特殊スペースの文字化けが原因で配信停止になったときは焦りました。

――いきなりの配信停止とは厳しい処断ですね。しかし、何も難しいことはないとはさすがのリテラシーです。このたびAmazonのBest of 2012に選ばれたりと話題になり続けていますが、読者からの感想はありましたか?

たくさん頂いています。Kindleではお褒めいただいているレビューが多いのですが、読書メーターでは率直に「品質が足りていない」という感想も多くいただいています。
実際にプロの編集者と共に作品を作り上げる機会をいただいたので痛感したのですが、普通に売られている「本」として読もうとすると品質が及んでいない部分がまだまだあります。
もちろん、嬉しい感想もたくさんいただいています。どちらの方向の感想も、次回作を執筆する原動力になっています。

――読書メーターは本当によく本を読まれていらっしゃる方が多いですからね。でも、両方の意見をしっかりと取り入れられて次に向かおうという意思が素晴らしいですね。では、今後の予定について簡単に教えてください

既に発売している中国語版の販路を広げていき、続けて英語版、韓国語版の発売を急ぎたいですね。また、コミカライズも始めようか、と台湾のエージェントとは話しています。
年度末までには電子書籍で予定している長編も書き下ろしてKindleその他で自己出版します。また、12月に商業誌に書き下ろしの短編を掲載していただくことになりました。店頭で見かけたら是非ご覧ください。
早川書房「SFマガジン 2013年 02月号 [雑誌]」
朝日新聞出版「小説トリッパー 2012年冬号」

――アメリカ等の個人著者が早速日本語化した本をKindleに流してきていますからね。日本ももっと海外ストアで販売するような体制をつくる必要があります。そうした先駆者として藤井さんの活動は大いに感心させられます。では、Kindleで個人出版を目指す方にアドバイスをお願いします

一人でやることに拘らないことです。作品未満の状態で相談ができる友人がいるだけで、作品の品質はぐっと高まります。
マーケティングをする上では、公式の、できれば固有ドメインのWebサイトを持つことをお勧めします。AdWordsなどで有利ですよ。

――そうですね。これからの個人出版にはプロモーション方法を確立しておかないと無料キャンペーンをやっても埋もれるだけとなる恐れもあります。今後はそういったノウハウが広がれば良いのですが。それでは藤井さんのオススメのKindle本を3冊教えてください

代々木犬助:「残念な聖戦」
関根元和:「わたしの物語」
山田佳江:「未来少女ミウ」

――それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします

初めて書いた小説「Gene Mapper」へたいへんな支持をいただきました。
次回作も鋭意執筆しています。これからもよろしくお願いします。

著者プロフィール

藤井太洋
1971年 奄美大島生まれ
国際基督教大学を舞台美術にハマり中退。DTPオペレーターとして就職した後、フリーランスのグラフィックデザイナー、イラストレーターとして活動。現在はソフトハウスにて3Dアプリケーションの開発や海外ソフトウェアの国内販売に携わる。
処女作「Gene Mapper」はKindle本 Best of 2012の小説・文芸部門でセルフ・パブリッシングながらトップを獲得した。

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