もう迷わない!「」『』()【】の“使いどころ”/テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術

こんにちは、もう覚えていただけましたでしょうか、晴海まどかです。「テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術」第3回。

今回は、記号の使い方で文章の見た目をよくできないか考えます。記号の中でもちょっと迷うかもしれない、括弧のお話を中心に。ちなみに、今回の話に関して言えば“縦書き”・“横書き”の区別はあまりありません。

前回の記事はこちら:テクニカルライターが教える、文章の見た目を良くする技術「あなたの縦書き文書を美しくする数字の書き分け方」

*この記事はKindle作家の”晴海まどか”さんからゲストポストいただきました

「括弧」を極めて美しい文章を作る技術

まずは例文をば!

今回は先に例文を一つ見てみましょう。
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なーんとなく、読みにくくないですか? 以降、記号の使い方によって見栄えがどう変わるか、考えてみます!

記号の代表格、括弧の使い方

括弧と一言で言っても、「かぎ括弧」(丸括弧)【隅つき括弧】などなど、色んな括弧がありますよね。ここでは、それぞれの括弧を使うときの注意事項や、こんな風に使うといいよという一例をご紹介!

括弧は“日本語文中では全角を使う"

小説ですので基本的に使い方のルールってあんまりないと思うんですが、個人的には全角を使うのがオススメ。

半角・全角で特に注意したいのは、「かぎ括弧」と(丸括弧)。半角の「かぎ括弧」は*環境依存文字扱い縦書時の利用では90度回転する場合があるので電子書籍には向きません。

半角の(丸括弧)についてはNGではないですが、急に文字間隔が詰まって見えるので見栄え的にはちょっとオススメできません。例文中では(失礼な奴だ!)という部分で半角を使ってるんですが、ここだけ急にきゅっとしちゃってますよね。

*環境依存文字扱いというわけではありません

「かぎ括弧」

小説では最も登場頻度が高いと思われる括弧の代表格。この括弧に関して言えば、冒頭で1字下げしない、という基本的な注意事項しかありません。

そんな当たり前のこと、と思われるかもしれませんが、実際問題たまに1字下げしている電子書籍を見かけます。小説作法的にも避けたいところですね。

『二重かぎ括弧』

「かぎ括弧」の仲間で『二重かぎ括弧』というのがあります。これは「かぎ括弧」中で誰かの会話を引用したりしたいときに使う括弧ですね。とはいえ、小説ではそこまで厳密に使う必要もない気がするので、会話の「かぎ括弧」の外で使ってもかまわないとは思います。私はメールや手紙の引用文などでよく使っています。

(丸括弧)

おそらく「かぎ括弧」の次によく使われているのがこの(丸括弧)。小括弧、パーレンなんて呼び方もあるそうです。
この(丸括弧)が意外と曲者。半角全角が混在している作品をよく見かけます(慣れてないと無意識に混在させている可能性も)。ここはいっちょ、前述のとおり意識して半角全角を使い分けて見た目をすっきりさせたいところ。
なお、次の場合は半角括弧を使うのをオススメします。
・「open()」など、プログラミング言語中などで半角で書かないと意味が異なってしまう場合
・"半角アルファベットを使っている英文中"で使用する場合

ただし、アルファベットや数字と違って、丸括弧は縦書き文中で半角を使ってもくるっと90度回転してしまうことはありません。なので、(丸括弧)の使い分けはアルファベットや数字ほど重要ではない(見た目への影響は少ない)、というのは先に断っておきます。

(丸括弧)の見栄えの話

また、本文中ではないのですが、本のタイトルで(丸括弧)を使う場合の見栄えのお話をご参考までに少々。

本のタイトルで例えば1巻、2巻を区別するため、「楽しいKindle(1)」などのように書く場合があると思います。この場合、半角でも全角でもどちらでもよいのですが、必ず“シリーズを通して全角半角を統一”しましょう。以前見かけたKDP本で、シリーズ中でそれがばらばらになっているものがありました。見た目が不揃い、という問題もあるのですが、一番の問題は表示順。
記号やアルファベットは半角→全角の順に並ぶ(ソートされる)ことが多いので、例えば1巻と3巻だけ(丸括弧)が半角だった場合

「楽しいKindle本(1)」
「楽しいKindle本(3)」
「楽しいKindle本(2)」

と正しくない順番で並べられてしまうおそれがあるんですね。これは数字でも同じことが言えます。実害はないかもしれませんが、ちょっと美しくないですよね。

【隅つき括弧】

【隅つき括弧】と呼ばれる括弧がありますが、これは使い方というよりもこういうときに使うといいよというワンポイント。

【隅つき括弧】はほかの括弧に比べて黒い部分の面積が広いので、“アイキャッチ効果が高くなります”。なので、これが出てくると非常に目立つんですね。

この特性を活かして、【隅つき括弧】は

・物語中で特に目立たせたいところ (果たし状とか、大事なメールの引用文個所に使うとか。)
・タイトル
・小見出し
・用語説明や登場人物説明の小見出し

など、使う場所を限定すると非常に効果的です。多用しすぎるとページが黒くなってうるさくなるので要注意!

その他の括弧〈山括弧〉《二重山括弧》[大括弧]〔亀甲括弧〕……

その他の括弧については好きに使ってください!ただし、意味を持たせてね、とだけコメントしておきます(本当は正しい使い方があるのかもしれませんが、少なくとも小説ではこれらの括弧に関してはそういうものをあまり意識する必要はないように思われます)。

よくファンタジー小説などで、必殺技やキーワードとなる単語に〈 〉や《》が使われていることがあります。これはこれでOKなのですが、“複数種類の括弧を使いすぎていて意味がわからない”場合があります。

【例】 彼は〈月の牙城〉に向かって《ムーン・ソード》を振り上げ、〔天使の涙〕を破壊した。

……すみません、ファンタジーあまり書かないんでセンスがない例文でごめんなさい。

ともかく、括弧がいっぱいあるとごちゃごちゃして読みにくくなるよ、という例でした。使用する括弧の種類は限定した方が無難です。「異世界の用語には〈 〉を使う」とか、何らかの“理由づけをした上で”使うとすっきりしていいですね。

あ、しつこいようですが半角全角は統一です、もちろん。日本語の文章中であれば、全角で使うのをおすすめします。

括弧以外の記号の使い方

さて、次は括弧以外での記号の話。小説で頻出するものについていくつか。

……三点リーダー……

小説を書いてる方にはなじみ深い三点リーダー「…」。沈黙を表したい場合などに使う点々ですね。これは一般的な小説作法で、「……」と二つセットで使うのがことになっています。
半角カンマ「.」や中点「・」で「...」「・・・」といった具合に代用している作品をたまに見かけますが、小説ならば三点リーダーを使いたいところ。小説の作法ができてない、と思われてしまいます。

——ダッシュ——

三点リーダーと同じく小説でおなじみのダッシュ「——」。本来は会話を表すときに使われるものですが、余韻を表したいときなど、結構色んな使われ方をしています。これも三点リーダーと同様、二つセットで使うのが慣例ですね。作品によっては、会話に一切「かぎ括弧」を使わず、このダッシュを使用していることもあります。
ちなみに私は、回想シーン中の会話文で「かぎ括弧」代わりに使用しています。こうすることで、見た目的にも回想シーンだと読者に意識させる効果があります。

感嘆符!と疑問符?

これの使い方はアルファベットや数字と同じ、日本語ならば全角でいきたいところ。縦書きの場合は半角にするとくるっと回転してしまうので読みにくくなります。半角にこだわるなら縦中横にするなど工夫したいところ。

ただし、英文の末尾の場合だけは半角の方が見栄えがいいと思います。

ちなみに、ライトノベルだと「!!!!!!!!!!!!!!」とか、いくつびっくりマークあるんだよ、的なのをよく見ます。これはどうすべきか?も考えたんですが、個人的にはそんなに「!」を並べなくてもいいんじゃないか、という感想しか抱けなかったんで結論は出しません。感嘆符を並べまくらなくてもよいように地の文章でうまいこと処理した方がいいんじゃないかと思いました。

その他

+、−、×、÷、*、¥、などなど、記号の種類は数えだしたらきりがないのですが、基本的には日本語文中だったら全角、半角英数字と組み合わせて使うときは場合によっては半角の基準で使い分けるのををお勧めします。(丸括弧)と同様、半角だと部分的に字詰めしたように見えてしまいます。状況によってうまく使い分ける意識が必要ですね。

ということで、例文その2

これらの話を踏まえ、冒頭の例文を改善。
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中にはどっちでもいいんじゃね?という記号もあるかもしれませんが、そこは自分が読みやすいと思うものをチョイスしていただければよいかなーと思います。

おわりに

3回にわたってお送りした文字種や半角全角の使い分けの話もここでいったん終了です。しつこくてすみませんでした。でも、文章の見た目には文字種や半角全角の使い分けが重要なファクターだっていうのはおわかりいただけたんじゃないでしょうか? ちょっとした工夫一つでリーダビリティは変わるもの、ご自身の文章を見直すきっかけになれば幸いです。

さて、ここまで来ると、半角全角、の後ろに別のキーワードが見えてきませんか? そう、“統一”です。結局、半角全角の使い分けっていうのは、“統一”という観点に帰結するのであります。統一されているものは美しい、この一言に限ります。

次回は「用語の統一」について考えてみましょう。

この記事を書いた人

晴海まどか Twitter @harumima

1983年生まれの乙女座のA型。千葉県育ち東京都在住の文章クリエイター。

7年強、テクニカルライターとして会社勤めをし、2013年8月からフリーに。三度の飯より書くのが好きな書く方の活字中毒。ミステリーでも青春ものでもホラーでも、書きたいものはなんでも書く雑食系。どちらかといえばYAよりの作風多め。小説を書くのはライフワークである。

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